株式会社T S Iホールディングス 代表取締役社長 上田谷 真一

先のことは分からない、だからこそ今できる経験に全力を

株式会社T S Iホールディングス 代表取締役社長
上田谷 真一(うえただに しんいち)

プロフィール

上田谷 真一(うえただに しんいち)
1992年東京大学卒業後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンへ入社。経営コンサルタントとして従事し、1995年大前・アンド・アソシエーツの設立に参画。2004年には黒田電気へ転じ、取締役に就任。その後、リテイルネットワークス(ディズニーストア)、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン、バーニーズ ジャパンの代表取締役社長などを経て、2017年5月TSIホールディングス社外取締役に就任。2020年5月より現職。

TSIホールディングスの社長に就任する以前から、多岐に渡る経歴を持つ上田谷社長。これには多くの学生が驚くだろう。しかしこの経歴は、学生時代から多くのことを経験し、考え、時には苦労した結果なのである。そんな社長が今目指す、海外でも通じるブランドビジネスとは。会社への思い、そして大学生へのメッセージまで熱く語ってもらった。


私は1988年に大学へ入学し、1992年に卒業したのですが、当時はまだバブルで今と比較すると世の中も私個人も気楽な学生生活だったと思います。私はというと、テニスサークルや国際交流団体、家庭教師のアルバイトなど、勉強以外で活発に活動していたほうだと思います。たまたま大学3年生になる春休みに、私は友人に誘われ、とあるコンサルティング会社の学生インターンプログラムに参加しました。当時はコンサルタントという職種がメジャーではない時代で、インターンでも興味深いことばかりでした。仕事上で一番楽しかったのが、論理的な思考を養うという点です。今ではロジカルシンキングもPowerPointも当たり前ですが、「物事を事実ベースで分析し、簡潔に伝える」という工程がとても刺激的だったのです。それだけでなく、大学の同級生の多くが官僚や銀行マンとして就職していく中、コンサル企業を選ぶ人っていうのは大体変わった人が多かったので、そのような仲間に出会えたのも楽しかったですね。このインターンでは大学受験勉以来、最大に頭を酷使した大変思い出深い経験です。インターン後、4年生の間もそのままバイトとして働き続け、翌年入社しました。その会社がブーズ・アレン・ハミルトンです。

■多くの経営者との出会い、ご縁


入社後もさまざまな経験をしましたが、社会人3年目での大前研一さんとの出会いは人生の転機でした。大前さんは、当時マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本のヘッドで、コンサルティング業界の頂点にいた方でしたが、独立して新しい事業を立ち上げるとのことで、なぜか競合他社の人間であった僕に声をかけてくれました。そして大前さんを中心に当時立ち上げたのが、今の㈱ビジネス・ブレークスルーの前身となる会社でした。新規事業の立ち上げやVC(ベンチャーキャピタル)の運営など色々経験させてもらいましたが、30代前半で黒田電気へ転職することになります。理由としては、今まで生産、販売などの実業を経験したことがなかったため、事業会社で一度経験を積みたいと考えたのです。その後はディズニーストア、クリスピー・クリーム・ドーナツ、バーニーズニューヨークなど、主にB2C企業で経験を重ねました。そして約2年前から弊社の社長に就任しております。色んな会社で働いていますが、私自身はどこへ行っても現場のたたき上げではないため、それぞれの分野で専門能力を持った社員の人たちに対し、「すごいな!」と純粋に思えますし敬意を持っています。これは、雇われ経営者としてのある意味で自分の強みだと考えています。自分より仕事ができる人と競わなくて済むからです。

■セールのための服を作らない

経営者としてのやりがいを感じる時というのは、勿論(数字などの)目標を達成した時ですが、その手前で「操縦桿が効くようになった!」と気付く時にも感じます。コツコツとコミュニケーションを重ねる中で、自分が出した戦略や施策が社員のみんなに通じたな、と思う瞬間があるのです。共感を得られるとやはり嬉しいです。逆に、思うように数字が伸びないなど、苦しい時も勿論あります。まあ、業績やステークホルダーとの関係で苦労するのは全ての経営者に共通することだと思いますよ。ちなみに今の会社で手応えを感じたのは、ブランディングとビジネスモデルを、セールに頼らない「プロパービジネス」型に振り切ったと時ですかね。世の中には低価格で質の良い商品を展開し、セールも含めて価格訴求をするというビジネスも勿論あります。しかし、私たちの商品は比較的ニッチで趣味性の高いものが中心なので、ブランドの個性というものを大切にしていて、「好きな人がずっと好きでいてくれる」というのを重要視しています。いつ、どこで買っても同じ値段。そうすることで、販売側もずっと価値の変わらない商品に対し誇りが持て、お客様にもいつでも安心して買って頂けます。裏を返すと、好きでいてくれる人を裏切らない。そんなビジネスを今後も展開していきます。また今後は、さらに海外市場を開拓したいと思っています。日本はミドルクラスが安定している国家ですが、他国を見るとそのような国は少ない。だから、ファッション業界といえばファストファッションかラグジュアリーと極端に分かれてしまう。だからこそ、ミドルクラス向けのブランドというのを世界にもっと展開していきたいです。

■裏表なく常識に囚われず

共に頑張っていく仲間としては裏表がなく、嘘をつかない学生さんを採用したいです。具体的には、しっかり反省できる人、上司や目上の人に対してでも、違うなと思ったら意見を言える人。それから、常識や規範に対して疑いを持てる人。社内での決まり事、ルールも全てが正しいかは分からないし、間違っていることもあると思います。それに気づける人がいいですね。何事もゼロベースでモノを考えられる力が、どの企業に行っても今後重宝されると思います。

■大学生へのメッセージ

将来を確実に当てる事はできません。ただ、私は世の中がこれ以上悪くなるとも思いません。少なくとも、何があっても生きていける切り口はあると思います。なので、日本の未来に関してはある程度楽観的に捉え、自分の根拠のない自信を大切にして欲しいです。チャンスがあったら貪欲に挑戦し、最後までやり切る。もしそこで上手くいかなかったり、自分には合わなかったりしても、次の機会をしっかり探す。自分を信じて、全てに全力を尽くしてください。社会に出たら、その繰り返しです。

学生新聞WEB2020年12月1日取材

  慶應義塾大学1年 伊東美優








日本大学3年 辻内海成 / 共立女子大学 北之原真奈 / 慶應義塾大学1年 伊東美優

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。