日本ピザハット株式会社 代表取締役社長 中村 昭一

出会いをいかに大切にするか。 それが人生を、変えていく

日本ピザハット株式会社 代表取締役社長
中村 昭一 (なかむら しょういち)

プロフィール

中村 昭一(なかむら しょういち)
1989年4月、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社入社。
94年8月デリバリーサービス事業部PH部に異動、ピザハット関西地区の新規立ち上げに携わる。
同部スーパーバイザー、PH営業ユニット直営チームのシニアエリアマネージャー、同マーケットマネージャー、ゼネラルマネージャーなどを経て、2017年4月日本ピザハット代表取締役に就任。
※2017年6月  日本ピザハット株式会社 独立

日本に435店舗(12/2時点)展開する「ピザハット」。有名ピザチェーン店はほかにもある。ではピザハットは何が違うのか。現場の売り上げスタッフから社長になったからこそわかる、お客様の気持ち、ピザハットに求められているもの。顧客の「楽しい」を常に追い求める中村社長の想いに迫ります。

■どんな学生時代を過ごしていましたか?

大学には行っていません。家の事情で、高校時代は学費を払うために毎日アルバイトをしていました。最低賃金が時給500円ほどだった当時、コンビニや焼き鳥店、スーパーなどで様々なバイトに日々明け暮れていましたね。
辛い毎日でしたが、土砂降りのある日、親の見舞いのために一人で傘を差して歩いていると、突然車から呼び止められました。見ると、アルバイト先の焼き鳥店でいつも話を聞いている常連さんでした。「にいちゃん、乗っけてってやるわ!」と。あぁ、お客様を大事にして、きちんとコミュニケーションを取っているとこんなこともあるんだなと思いました。小さな出来事だと思うかもしれませんが、苦学生だった私にとって、強烈な思い出です。 それはピザハットの仕事にも繋がっています。今でも食べることが一番好きなのは、そこに「人との関わり」があるからです。
また高校時代に、何よりの楽しみだったのは友達と食事に行って話すことでした。当然お金がないので、行くのはファストフードなどです。ある日、ケンタッキーに行くと、カウンターに可愛い女の子がいて、ここで働いたら楽しいだろうなと思いました。自分の好きな「食」の仕事でもあり 、日本KFCホールディング(株)〈日本KFC〉への入社を決めました。 安易な考えですよね(笑)。でも仕事を決める上では、自分が「楽しく」働いている姿をイメージできるということがとても大事だと思います。

■なぜ、 日本KFCから、ピザハットの社長に?

働き始めて5年が経った頃、違うこともしてみたいと退職願を出しました。当時上司に可愛がってもらっていたこともあり、強く引き留められました。その時に「別業態である宅配ピザチェーンのピザハットを始めるのでやってくれないか」と打診され、引き受けたのがきっかけです。(ピザハットは 日本KFCの事業の1つとして日本で営業を開始)。
現在日本ピザハットの本部には、私と同じような現場上がりのマネージメントが複数人います。私は関西地区を担当し、エリアマネージャー、地区長と昇進していき、ピザハットの業績が落ち込んでいた2011年ごろに東京の本社へ異動をしました。業績回復のために先頭に立って取り組んでいるうちに、気づけば社長を任されていました。現場のことを一番に考え社員一丸となって取り組んだ結果、10年ほぼ変わらなかった店舗数は3桁近く増加し、仲間や会社の成長に繋がったと思います。
日本KFCを辞めようとしたとき、引き留めてくれたあの上司がいなかったら、今の私はないでしょうね。出会いの大切さを痛感します。

■なぜ、そんなに活き活きと仕事をされているんですか?

 ピザハットで初めて店長を任された直後、阪神淡路大震災がありました。幸い店舗のライフラインは一週間ほどで復旧しましたが、当然ピザを頼むような人はいなくて、余った食材をどうしようかと思い、ピザを配ることに。その時はボランティア精神ではなく、ただ食材ロスを無くそうというくらいの気持ちでした。しかし配りに行ったアルバイトの子が戻ってくると、「店長、大変です!おばあさんが泣きながら喜んでくれています」と。自分もその場に行ってみると、「寒くてひもじい中、無償で温かいものをありがとう」と、そのおばあさんが泣きながら手を握って喜んでくれました。
 少しずつ生活が復興していくと、おばあさんはピザを注文してくれました。ピザの頼み方も知らないのに、わざわざ注文の仕方を聞いてまでして、ご注文くださいました。「人に喜んでもらうってこういうことなんだな」と、すごく心を打たれました。この仕事に対する想いが変わった「人との関わり」です。
 ピザを届けることで、人を笑顔にすることができる。そして自分がその笑顔に関わることができる。こんな良い仕事はないと思っています。

■どんな人と一緒に仕事をしたいと思いますか?

突然ですが、前回注文したピザ屋がどのブランドであったか覚えていますか?大半の人はブランドのロゴやキャンペーン内容など、曖昧な記憶しかないでしょう。しかも、人が1年間で宅配ピザを頼むのは、平均2.5回くらい。少ないですよね。そんなピザ業界の中でどうやってお客様から選んでもらえるか。それはとても難しいところです。ピザの耳にチーズを入れてみても、すぐに他社からマネされてしまいますしね。
そこで今、私が思っているのは、「楽しい」「ワクワク」が全てじゃないか、ということです。他業種を見ても、成長している会社は他ができないことを実現しています。ピザハットにしかできない「楽しい」「ワクワク」がないか、四六時中ピザのことを考えています。 今考えているのは、高層階へのドローン配達です。高層マンション50階に住んでいる人に、ベランダからピザをお届けする。ほら、ワクワクして、頼みたくなったでしょう(笑)? 働く上でも同じです。“こんなことができたら楽しいだろうな”という柔軟なアイデアがどんどん出てきて、“実現するにはどうしたらいいんだろう?”と考える事ができる人に、ピザハットに入社してほしいと思っています。できない理由を考えるのは、簡単なんですよね。でも、あきらめずに「できる可能性」を模索してくれる人が、会社を発展させてくれると思っています。
これらに加えて、当然ピザが大好きな人じゃないと、うちでの仕事は厳しいかな(笑)。

■大学生に向けてメッセージをお願いします

私の人生を見てもわかってもらえると 思いますが、大切なのは人との出会いです。人脈を作っていくには、コミュニケーション能力が不可欠です。社会に出たら、上司も部下も選べません。そんななかで、どうやって仕事を進めていくのか。
これって実は、普段皆さんが友人同士とやり取りしている会話の応用なんですよ。SNSが発達して、文章でのコミュニケーションが増えてきていますが、自分の伝えたいことが本当に届いているかわかりませんよね。SNS全盛の世の中だからこそ、直接会ってコミュニケーションをとることを大切にしてほしいです。友だちの目を見て、自分の想いを伝えられるようになること。
どれだけ時代が変わっても、雨が降れば変わらず傘を差すように、コミュニケーションが無くなることはありません。人と関われば絶対に悩む瞬間は訪れますが、その時にはっきりと自分の意見を相手に届けることができるかどうか。ちょっとした意識から変えていけるはずです。

学生新聞WEB2020年11月2日取材

  慶應義塾大学 1年 宮田峻輔

日本大学 3年 大橋星南/慶應義塾大学1年 宮田峻輔/明治学院大学 3年 菅井七海 明治大学 2年 山本真人/文教大学2年 早乙女太一/中京大学2年 安田竜也

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