松井証券株式会社 代表取締役社長 和里田 聰

新しい顧客体験価値をつくるインターネット証券

松井証券株式会社 代表取締役社長
和里田 聰(わりた あきら)

プロフィール

和里田 聰(わりた あきら)
一橋大学商学部を卒業後、1994年にプロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イーストに入社。退職後、リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券を経て、2006年に松井証券に入社。2020年6月より現職。

国内初の本格的な株式のインターネット取引を開始し、業界をリードしてきた松井証券。新型コロナウイルスにより、ますますオンライン化が進む現在において、証券会社はどうなっていくのか。和里田社長に今後の展望や次世代の若者に求めることについてお話を伺った。


 大学時代は、NPO法人アイセック・ジャパンの活動に力を入れていました。この団体の大学委員会で、海外からの学生研修生の受け入れ、海外スタディーツアーの企画、企業からの活動資金の調達などの活動をしていました。国内ではバブル崩壊、世界では冷戦終結、ソ連崩壊といった大きな時代の変化があり、活動を通してこうした情勢に触れたことも刺激的でした。
 就職活動では、プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト(現:P&G)のファイナンス部門のインターンを経験したことをきっかけに、将来的にCFOを目指すキャリア設計を提案するこの部門に興味を持ち、入社することを決めました。しかし数年もすると、自身のキャリアとしてCFOを目指すのではなく、むしろCFO相手にビジネスをする事業の最前線で活躍したいと考えるようになり、投資銀行のリーマン・ブラザーズ証券に転職しました。数年後、上司と一緒にUBS証券に移籍し、そこで松井証券の上場の主幹事を務めた縁もあって、当時の社長に誘われて松井証券に入社しました。

■金融機関の中で独自性を押し出す

 証券会社の主な業務の一つは金融商品の販売ですが、取り扱う金融商品自体に各証券会社で大きな違いはないため、「いかにサービスの独自性を出すか」が重要になります。また、誰もがそうですが、自分の知らない金融機関に大事な資産を預けようとは思いませんので、信頼感、信用力の裏付けとなるブランドは極めて重要です。松井証券は1998年に本格的な株のオンライン取引を始めましたが、他社に先駆けて開始したこともあり、主に当時40~50代のお客様に支持されました。そのお客様は現在60~70代になっていますが、その世代は日本の個人金融資産の70%を占めるコアな個人投資家層です。この年代における当社の認知度は依然高いままですが、一方で、現代の若年層への認知度向上が今の課題です。そこで松井証券は、ライフイベント(就職、転職、結婚、出産など)をきっかけに資産形成を促すプロモーションを継続的に実施しています。これを通じて、生涯にわたって長く寄り添える証券会社であることを若年層に伝えています。

 松井証券がネット取引を開始してから20年が経ち、個人投資家の取引環境は大きく向上しました。しかし、どの銘柄に投資するかといった面は未だにお客様にお任せという状況にあります。私は、個人投資家にとって最大の顧客体験は、投資において利益が出ることだと思っています。そこで、「投資での成功体験を提供する」という原点に立ち戻り、それに資する情報やアイデアを提供することが重要なテーマになると考えています。その際には、投資そのものを楽しむという体験も重要なものですから、松井証券では投資に関する学びとワクワク感の両方を提供するサービスを作ろうとしています。その一つとして、投資情報動画サイトを新たに設立し、リアルタイムのマーケット情報・解説を提供するのはもちろん、投資初心者のためのサポートや投資のアイデア提供も充実させます。今後はこういったコンテンツ等を通じて当社のファンを増やし、ブランドの独自性につなげていきます。

■チームでビジネスをするために大事なことは

 やる気やモチベーションの高い人と一緒に仕事がしたいと思っていますし、そのような方が志望する会社でありたいと思います。また、松井証券は、オンライン取引システムの構築のように、組織横断的にチームで取り組む仕事が多いため、チームワークやコミュニケーション能力をとても重視しています。 なお、ビジネスとは問題の発見とその解決の繰り返しであり、大切なのは問題発見力とそれを解決する思考力だと考えます。大学生までは、問題は与えられ、その問題に対する一つの正解を答えることで評価されました。しかし、社会人になると、問題を誰よりも早く見つけ、そして誰も考えないような画期的な答えを導き出すことが高く評価されます。

■大学生に向けてメッセージをお願いします

 学生の方には、採用面接の場では、ありのままの自分を出して欲しいと思います。私は、学生の方が、どのような考えを持っているのか、どんな人と出会い、どのような人生を歩んできたかを確認しながら、当社にフィットする人物かどうかを判断します。素の自分を伝えられるように、自分研究をじっくりと行うのが良いと思います。
 これからは、一世代前とは異なり、周囲と同じことをしていても、皆が一緒に豊かになれるわけではありません。そこで、学生の皆さんには、自分の価値を高める投資をしてもらいたいです。自分自身がステップアップするための自分への投資は、そのリターンを考えれば金融資産へのリターンよりもはるかに大きいかもしれません。皆さん一人ひとりの成長が、将来の日本を作り上げていくのです。

学生新聞WEB2020年12月7日取材

  文教大学2年 早乙女太一

左 松井証券社員2名 / 慶應義塾大学 1年 伊東美優 / 文教大学 2年 早乙女太一

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