株式会社ファインデックス 代表取締役社長 相原輝夫

「仕方がない」の一歩先へ、問題解決を通して社会をより豊かに

株式会社ファインデックス 代表取締役社長 相原輝夫(あいばらてるお)

■プロフィール

1966年生まれ。1990年に愛媛大学を卒業後、国内IT企業を経て1993年に起業。翌年に代表取締役社長に就任、現在に至る。2011年3月ジャスダックに上場、2014年11月から東証第一部。ビジネス領域は医療システムとヘルステック。

幼少期からモノ創りが大好きだったという相原社長。大学卒業後は一度企業に就職したものの、起業への道を諦めきれなかった。今回の取材では、相原社長の中にずっとあり続けるモノ創りへの想い、そして医療システム業界でリードし続けるファインデックスの強みについて、熱く語って頂いた。

 モノ創りが大好きで、幼少期の将来の夢は大工でした。大学時代はサークル活動が生活の中心でした。所属していた映像研究会で映画の鑑賞や制作に勤しみ、卒業後はクリエイティブな仕事がしたいと漠然と考えていました。当時はバブル絶頂期で、超売り手市場。今では考えられませんが、ちゃんとした就職活動という事もせず、1990年に四国日本電気ソフトウェア(現NECソリューションイノベータ)へ入社しました。学生の頃に卒業論文でデータ圧縮の研究をしていて、プログラミングやコンピューターの世界に魅力を感じていた事が大きかったと思います。

■起業への想いから現在へ

 働き始めた頃は、仕事自体は非常に面白かったです。しかし、学生時代から心のどこかで燻っていた「起業したい」という想いが次第に強くなったと記憶しています。私の場合、何か目的があって事業を起こしたという訳ではなく、起業への準備期間を作るべく、1993年にNECを退職し新たな道へ進みました。
 時を同じくして、とある病院長との出会いがあり、これが医療システムの世界へ足を踏み入れるきっかけとなりました。院内のシステムを見て欲しいとの依頼を受け現地へ赴くと、そこには驚くほど大きな汎用コンピューターが置かれていましたが、その用途はレセプト(会計)のみに留まるとのこと。高性能のコンピューターが単純な四則計算にしか利用されていないことを、非常に勿体ないと感じました。他方、コンピューターの得意分野は簡単なことの繰り返しです。人間が行う際に途中で飽きてしまったり、ミスが出たりするところを、コンピューターは絶えず難なく繰り返すことができますが、当時その病院ではまだこのような作業を人間が担っていました。院内の業務効率化を図るべく、院内業務のシステム化をスタートしました。当初は小規模なアプリケーションでしたが、我々の柔軟な業務改善提案が次々と評判を呼び、1998年には本格的に医療システムの開発とコンサルティング業務を開始。現在では、主力である医療システムに加え、マーケットの拡大が著しいヘルステック、そしてオフィスシステムの3事業を柱に、ビジネスを展開しています。当社は日本中にお客様を持つ医療システム会社へと順調に成長を遂げ、全国の国立大学病院における当社製品シェアは約8割にのぼります。最も多くご採用頂いているのは、各診療科の患者検査データの一元管理を可能にした「Claio」というシステムです。また、従来の視野検査の常識を覆すウェラブルデバイス「GAP」は、今最も力を入れている製品のひとつで、一から自社開発し国際特許を取得しました。当機器の導入により、これまで必須だった暗所の確保・検査員による実施が不要となり、検査時間の短縮も実現するだけでなく、自覚症状に乏しい網膜疾患の早期発見率を大幅に改善。本格的な市場投入はこれからですが、社会貢献の面においても、大きな役割を果たすと見込んでいます。

■誰かの後追いをしても、ビジネスにはならない

 私は仕事が大好きです。新しいシステムの構想を考えている時やそれを部下と共有している時は、心の底から楽しいと感じます。困っていることを解決する、誰も手を付けていない領域にチャレンジする。それが我々のビジネスであり、モノ創りを通して達成感を味わえるこの仕事は非常にやりがいがあります。また、組織づくりも仕事の醍醐味のひとつです。上場後の10年間は私の仕事の中心を経営にシフトし、「上場企業としてあるべき組織づくり」に注力してきました。一方で、製品開発に取り組みたい気持ちも捨てきれず、上場後5年ほど経つ頃に直轄の研究開発チームを作り、現在も自ら新製品の開発や企画に携わっています。

■上場企業のあるべき姿

 会社とは、社会に何かを提供する代わりに対価を頂く組織です。価値あるものを提供できなければ対価は頂けませんし、企業の成長も望めないでしょう。その中でも、上場企業は外部への価値提供だけでなく、株主や従業員を大切にするための組織づくりを徹底しなければならず、また、リスクを管理しながら永続的に成長することが求められます。私自身も、上場企業のあるべき姿を常に意識して経営を行なっています。

■モノ創りへのこだわり

 当社の最大の強みは、製品を全て自社開発している点です。もちろん製品を売ることも大切ですが、販売はパートナーである代理店へお任せし注力する範囲を開発に絞ることで、本当にモノ創りや問題解決に熱心なメンバーが集まっています。我々は部署ごと、縦割りという概念は全く持たず、ベンチャー企業のようなクロスファンクショナルな素質がある組織です。このような、社員数は多くなくとも密度の濃い筋肉質な会社として、今後も事業を発展させていきたいと考えています。
 また、当社には採用の面でもこだわりがあります。インターネットでの簡単なエントリー方式は採択せず、応募者の方にはまず当社について研究して頂き、手書きの作文を書いて頂きます。ここまで応募のハードルを上げることで、本当に能力とやる気があり当社の仕事を楽しめる人が集まります。今後も、この世の中で改善できることを考え続け、一緒に解決しようという意欲のある方に入って頂きたいですね。

■message

 やはり、「何がやりたいか」を学生時代に見つけられた人は、社会に出てからも力を発揮しやすいです。私自身はこれが就職前に見つからなかったため、起業を経てここに至るまで少し時間がかかってしまいました。昔に比べ、今はどんなことにもチャレンジする環境が整っています。だからこそ、自分のやりたいことを学生時代に明確にしておくことをお勧めします。そして、どんなことにおいても「仕方がない」で済ませるのではなく、「どうすれば改善できるだろうか」という問題解決のマインドを、是非持って頂きたいと思います。

学生新聞オンライン2021年3月31日取材 慶應義塾大学 1年 伊東美優

慶應義塾大学1年 伊東美優 / 文教大学1年 早乙女太一

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