本田技研工業株式会社(Honda)
社員一人ひとりが生み出す、「Hondaらしさ」の源泉とは
電動化や自動化など、近年マーケットの変化が激しい自動車業界。そんな自動車業界内にあって、創業75年を迎えて今後さらなる成長が期待される本田技研工業。Hondaが現在力を入れているのが人事部門による組織文化の掘り起こしだ。創業以来どのような組織文化が醸成され、Hondaの強みや魅力につながっているのか。人事担当者お二人にお話を伺った。
従来、自動車業界は車をつくって、売って終わりという、いわゆる売り切りビジネスでした。販売後、お客様に新たな価値提供をすることは少なかったのです。しかし、近年は車の製造・販売のみならず、車を介した顧客体験へのアプローチが求められています。
たとえば、移動中に映画や音楽を楽しみたいユーザーもいれば、道中でのおすすめのレストラン情報を知りたいユーザーもいるでしょう。いかに顧客の多様なニーズに応えられるかが今後の自動車業界の課題なのです。
電気自動車や水素自動車など、年々技術は進歩しています。しかし、技術の進歩だけでは変化するユーザーのニーズを満たすことはできません。
今後は技術の発展と顧客体験の追求という2点を掛け合わせていくことで、広くモビリティカンパニーとして価値提供していかなければならないのです。そして現在は、たとえるならば、移動手段が馬車から自動車へと変化していった時代と同じくらいの変化の局面にあります。我々は変わっていかなければならないのですが、これは大きなチャンスでもあります。このチャンスを活かして、新たな価値創造により力を入れていきたいです。
「Hondaらしさ」実現のために
この状況下で必要なのが、過去の成功体験からの脱却です。過去に縛られることなく、ゼロベースで新たなチャレンジをしていかなければなりません。ある意味、真っさらなキャンバスを持つ若い方の感性は、自動車業界において大変重要になると思います。そして若い人材の活躍には風通しの良さなど、組織文化も大いに関わってくると思います。
当社は創業以来、「松明は自分の手で」、「ノープレー・ノーエラーを排せ」などの言葉が語り継がれています。つまり、自分が成し遂げたいことのために働こうという信念が、伝統的に組織風土として醸成されてきたのです。人事の役割は、このHondaらしさをさらに掘り起こしていくこと。この想いで、採用・育成・異動など多岐にわたって改革を進めています。たとえば、研修に関して、これまでは昇格のタイミングで決まった研修を受けるなど、研修の受け方がルール化されていました。
しかし、これではいくら主体性のある社員が多くても、能動的に学べる機会が減ります。
そのため、能力や意欲があれば研修を受けることのできる仕組みに変えて、社員がどんどん学べる環境にしました。
当社が伝統的に持っている組織文化を一つひとつ新たに制度化していくことで、内にも外にもHondaらしさを発信していて、これが人事として最大の役割だと考えています。
「人」が作り出す企業の魅力
「Me and Honda,Career」という当社が運営するオウンドメディアは、実は社外に向けたブランディングというよりも、インナーブランディングが目的なのです。現在は週に1回、毎回異なる社員の記事をアップしていて、メディアに取り上げられることで、自身の仕事に誇りを持ってほしいという想いがあります。家族や友人など、記事を通して社員の関係者にも彼らの仕事ぶりが伝わると嬉しいですね。もちろん、当社には幅広いプロダクト、そしてグローバルに活躍できる環境、挑戦できる組織文化があります。しかし、これらだけでは企業が成長し続けることはできません。紛れもなく、当社の社員こそがこれまでの、そしてこれからのHondaを作っていくのです。Hondaらしさを最前線で体現する社員一人ひとりにフォーカスすることで当社の魅力が伝わると良いなと思っています。
採用においても、当社の「人」や「組織文化」に共感して入社を希望する人がどんどん増えると嬉しいです。採用では表面上の知識やスキルではなく、その人の根底にある想いや原動力を見ています。
たとえば、失敗した経験をどのように言語化して語るかなど、過去の経験から人間性を判断することがあります。その人の奥底にある人間性が、Hondaらしさとシンクロする部分があれば、ぜひ採用したいと思いますね。
*message*
誰のためでもなく、自分のためにいい就活をしてほしいです。そしてそのような就活をするには、まず己を知ることが必要。喜びや悲しみを感じる瞬間、自分の価値観が揺さぶられるタイミングなど、自分の説明書を作るくらいに、自分と向き合ってみてください。この過程の先に、自分の琴線に触れる会社との出逢いがあるはずです。
学生新聞2023年4月1日発刊号 慶應義塾大学3年 伊東美優
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