株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
無駄な時間を使ってたくさん迷うことが可能性を広げる
株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟(おかむら しんご)
■プロフィール
東京大学大学院修了。1995年、郵政省(現総務省)入省。2015年、総務省情報流通行政局 郵政行政部企画課企画官に就任。2016年4月、株式会社ディー・エヌ・エーに入社、横浜スタジアム代表取締役社長等を務める。2016年10月、横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長に就任。2019年4月、横浜スタジアム取締役会長(現任)、2021年4月、株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役社長兼CEO(現任)。
大学時代は文学青年でした。中学生の頃から文学をやろうと決めていたのですが、実際に文学部に入り、文学青年を気取って友人と競い合うように本を読んだり、音楽や映画を嗜んでは知的な刺激を楽しんでいました。
大学院に入ると同時に天安門事件が起きました。それがきっかけとなって中国の移民が作る王朝について研究しました。いま考えると学者というのはすごい人たちの集まりだなと思います。自分が正しいと思う道をただひたすらに信じて掘り下げていくのです。当時の私も学者の道を歩もうと考えていました。しかし、同時に学者の世界に埋もれていく怖さも感じるようになりました。そのため卒業後は方向転換をし、郵便局でのバイト経験から郵政事業に興味を持っていたこともあり、郵政省に入ることにしました。
■郵政省に入省し、公共の磁場を創る
郵政省ではITを利用した沖縄振興を行い、その後の総務省では企画部長として福祉や教育、街の開発や議会での答弁まで行いました。各地域の情報化に伴い、遠隔医療の基盤を作り、第一次安倍内閣では首相補佐官室参事官補佐も務めました。全てに共通しているのは「公共の磁場をつくる」ことです。特にインターネットが情報を取りに行く手段から、人と人とがつながる手段になるという過渡期には、青少年インターネット法の発足に携わりました。ネットの登場は未成年と成人をつなぐきっかけとなり、犯罪に結びつく可能性があることからネット規制の声が大きくなったのです。しかし、これでは国内の文化や産業網を断つことになります。それならばむしろリテラシーをつけていき、正当なやり方で子どもを守ることの方が大切なのではないかと考えたのです。公共の磁場をコーディネートする中で私が果たした役割は、小さくなかったと考えております。
■DeNAで公共の磁場を作る
その後、総務省を経てDeNAに転職します。DeNAは現会長の南場さんに誘われての入社でした。入社して感じたことは、民間でも公共の磁場をつくることができるのだなということでした。入社後はまず横浜スタジアムの社長になり、横浜スタジアムという「場」づくりやスポーツというエンタメを中心とした街づくりを行いました。街づくりに活かせるのは横浜スタジアムが横浜にあるという構造的な強みです。横浜のような政令指定都市で、地域の盛り上げ役であるスタジアムという拠点を活かせるところはそうはありません。
また、DeNAはさまざまな分野で事業展開をしていますが、その中の一つにゲームがあります。ゲームは文化でありテクノロジーの発達とともに複雑化してきます。しかし人は意外に単純なものを好んだりするので扱いが難しいものです。またゲームはインターネットの中で一番ビジネスが大きい世界であり、それをどうユーザーに使ってもらえるかは試行錯誤の連続です。PDCAを回していかにユーザーの反応に寄り添ってサービスを広げて行くかが鍵になります。特にモバイルゲームは隙間時間に行うことや、コミュニケーションの手段となるといった特性を考慮して制作しています。
■DeNAらしさは人が作るもの
DeNAはエンタメから社会課題領域までを行っていますが、特に「DeNAらしさ」を作っているのは人だと考えます。優秀なだけでなく、多様な考えを持ち、画一化されず誠実な人が多いのです。個性豊かな社員と共に日本の素晴らしさを追求し、神奈川や横浜というリアルな地域を大切に世界を見据えていきたいと思います。そして社員には一人ひとりが輝く星になって欲しいなと思います。どんなときも一等星や二等星だけでは成り立ちません。それぞれが素晴らしい個性を放ちながら自分らしい成長を遂げてもらいたいと思っております。また、DeNAで成長し、DeNAを通じて「世の中に想像を超える喜びであるDelightを届けたい」という健全な野心を持っていることも重要です。技術と情熱をもって挑戦と変化を楽しみ、世界そして未来につながるDelightを届ける。これこそがDeNAのミッションなのです。「DeNA」のロゴであるDの字もDが笑顔で横になっているように描かれています。
■message
現代の困難な状況の中で何かを変えられるのは皆さんだと思います。世の中の仕組みに捉われすぎずに自分を見つめることが大切です。自分の可能性を探るために、無駄な時間を使ってたくさん迷ってください。学生時代に迷ったことは、きっと将来の糧になるはずです。そして能動的に体験してください。私自身、能動的な体験を通じて自分の価値を高めることができました。皆さん一人ひとりが学んで欲しいなと思います。
学生新聞2023年4月1日発刊号 津田塾大学4年 宮田紋子
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