テリー伊藤 コラムVol.23 生成AIラブレターは成功するのか
教育関係者と、生成AI(人工知能)と、生徒や学生はどう付き合えば良いか、理解すれば良いのか。日本中で議論、騒動が巻き起こっている。読売新聞によると、都内の私立中高一貫校の英語科教員が中学1年生の生徒に「英語で日記を書く」宿題を昨年の冬休みに出したところ「ミスのない素晴らしい英文」の日記が何人もの生徒から提出されたそうだ。生成AIを使われたことは疑いもないと。宿題は英語を使う習慣を身につけ文法を学んで欲しいから出していて、間違いは指摘されて学ぶものであり、生成AIが示す「正解の丸写し」から得るものではないと。生成AIに頼り過ぎると思考力や想像力の育成が阻害され、学力格差が広がる恐れがあると警鐘を鳴らす。
学生に聞くと「興味のない必修科目のリポートは基本生成AIに丸投げ。」「不必要な時間を取られたり、不完全なリポート出して単位を落としたくない。」と悪びれる様子もなく答える。由々しき問題ではあるが、一般社会を見てもこれって日常にある出来事ではないか。冠婚葬祭の案内状、お世話になった恩師や上司へのお手紙。取引先へ新商品発表のお知らせ。挙げたらきりがない。パソコン使用者の4割は利用したとも言われている。
一番厄介なのは失敗が許されない片思いの人へのラブレター。人生の勝負どころ、ここで生成AIに頼り過ぎると危険だ。最悪は、憧れの女性に他の男性から同時期に2通の同文の生成AIラブレターが届いた時だ。彼女の反応を想像するだけで怖い。更に恋敵がこちらの存在を知って偽情報のAIレターを彼女に送ることもあるかも知れない。
私の大学の恩師でもある慶応大学認知心理学者の今井むつみ教授の「子供の頃からやり過ぎると、自分で考えなくても生成AIを使えば答えを効率的に探してくれると思いかねない。生成AIはどんな質問にも回答するが間違いも少なくない。人間と違い経験を通して単語の意味を理解している訳では無い。大事なのは経験から判断力を身に付ける事です。」と述べている。これって大人も一緒ですね。インターネットの情報ばかりを信じて根拠もなく社会を憎んだり、罪を犯したり。そんなニュース見るとガッカリします。
先ずは、ラブレターは自分の実力で書くことから始めましょう。下手でもいいんです。長い文章もいりません。好きなポイントを箇条書きでもOKです。やってみては。そう言えば、私の知り合いのミュージシャンが作詞制作に行き詰まったのでAIにお願いしようかなって言っていた。反体制ソングのはずなのに。世の中どうなっているのか!生成AIに聞いてみようっと!
テリー伊藤(演出家)
1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ」
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry
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