文部科学大臣 衆議院議員 盛山正仁

課題解決のために――
こどもの未来をつなぐ教育改革

文部科学大臣 衆議院議員 盛山正仁(もりやままさひと)

■プロフィール
1953年生まれ。東京大学法学部卒業。神戸大学大学院法学研究科修了。同大学院経営学研究科修了。博士(法学)、博士(商学)。
1977年旧運輸省入省。2005年に第44回衆議院議員総選挙初当選(現在5期目)。教育における情報通信(ICT)の利活用促進を目指す議員連盟・幹事長も務める。2023年9月に第23代文部科学大臣に就任。座右の銘は一期一会。

文部科学大臣として教育、科学、スポーツ、文化・芸術という広範囲にわたる職務に全力で取り組む盛山大臣。大臣の目指す改革とは何か。教員現場が抱える課題に真摯に向き合い、解決策を探る。教育改革から働き方改革、ロケット開発まで、幅広い課題について大臣にお話を伺った。

私は幼い頃から公的な仕事に憧れを抱いていました。小学生や中学生のときは医者になりたいと思っていたのですが、高校生になると政治家や公務員になりたいと思うようになりました。医学よりも政治学のほうが自分に合っているのではないかと考えたのです。ただ、将来は「人の役に立つ仕事」をしたいという根本的なところは、医者になりたいと思っていた小学生のころからとあまり変わっていないように思います。
実際に政治や法律について学んでみると、自分が想像していたものとの差異を感じ、苦労することはもちろんありました。そのような状況の中でも公務員や政治家になりたいという思いは変わらず、大学卒業後は公務員となり、役所に入りました。そして28年5ヵ月もの間、役人として運輸省や国土交通省などで業務をこなしていたのですが、51歳になったころに、学生時代からの夢であった政治家になるためにはそろそろ行動に移す時がきたのではないかと考え、役所を退職しました。これを機に政治家への道を歩き始めたのです。

■教育について考える

文部科学省が所轄する分野としては、大きく分けて教育、科学、スポーツ、文化・芸術の4つの分野があります。これまで環境省や厚生労働委員長などを務めていた私は、教育の分野に大きく携わった経験がありませんでした。唯一、文部科学大臣に就任する以前に携わったことがあると言えば、学校教育のICT化の推進だったと思います。これは小学校1年生から6年生までのすべての児童にタブレットを支給するというものです。
これによって、教員が児童に一方的に教える授業スタイルから、タブレットを用いて児童一人ひとりに寄り添った授業を行うスタイルに変化し、より質の高い教育が提供されるようになったと考えています。しかし、教育に関しては他にもいくつか課題が残っています。

■教育現場が抱える課題

1つ目の課題は、教員の働き方に関してです。彼らの業務は、授業をするだけではなく、授業の準備や事務作業、そして部活動の顧問など多岐にわたります。このことからわかるように、教員の拘束時間は一般企業に比べてとても長いものになっています。また、これだけでなく、学校組織のあり方やモンスターペアレントによる教員の心的被害の増加など、教員の働く環境には多くの課題があり、働き方改革が求められています。
2つ目の課題は、子どもたちに関するものです。テクノロジーの発展によって、幼いころからICTを利用することが当たり前になり、彼らの周りにはたくさんの情報が溢れています。簡単に利用できるデバイスが近くにあることは学びの自由を与える一方で、SNSでの批判や非難、不登校のきっかけになるなど多くの問題が発生する原因になっています。この現状に対して文部科学省も看過できないと考えていて、どうアプローチしていくのか議論することが求められています。
また、タブレットでの教育を推進していく一方で、子どもたちが実体験を積んで学んでいくことも大切だと考えています。子どもたちからその機会を奪わない仕組みづくりを考えるのも我々の仕事だと思っています。私自身は、学びのベースとしては現実世界にあると思っています。そして、リアルな学びはタブレット学習だけでは補うことができません。実際に、鉛筆やはさみを持ち、手を動かして学び、考えることでやっと補うことができるのだと思います。
子どもが健全に育つために、さまざまなことを体験できる環境を創ることは、文部科学省だけではなく、両親や教員をはじめとする子どもと関わるすべての人たちに求められていることだと思います。

■やりがいと展望について

文部科学省では、教育をはじめとしてパラリンピックからロケット開発まで、幅広い分野の業務を行っています。この広範囲にわたる業務に携わっていくためにはたくさんのことを学ばなくてはならず、大変な面もあります。しかし、たくさんの人が関わり、いろいろなことが求められる仕事だからこそ面白くもあり、私は文部科学大臣という仕事に誇りとやりがいを感じながら業務を推進しています。
来年度、私は主に3つのことに注力して取り組んでいきたいと考えています。1つ目は教員の働き方改革です。前述したように、教員の置かれている現状を改善し、職場環境を整えることは、教育の質を高めることにもつながると思います。
2つ目は、博士を増やすことです。研究を充実させるためには、研究分野の裾野が広がらないといけません。裾野が広くないと山が大きくならないのと同じことです。博士の数が増えなければ研究成果も上がっていきません。そのためには多くの人が博士になれるような仕組みを整えていきたいと考えています。
3つ目は、ロケット開発で
す。宇宙は遠い存在のように思いますが、実は身近な存在であります。私たちが普段何気なく使っているGPS機能も宇宙衛星によるものです。
私たちの生活は、宇宙とは切っても切れない関係にあり、強いつながりがあります。だからこそ日本も自分たちの手でロケットを打ち上げることが必要なのだと思っています。

■小学生へのメッセージ

“好奇心”を大切にしてほしいです。「なぜ、このようなことになるのだろうか」ということを日常生活の中で考えてみたり、不思議に思ったりすることがあたりまえになるような生活をしてみてください。また、何事においても自分の頭でしっかりと考え、目標をたてること。そして目標を達成するために、実際に取り組んでみることが大切です。
自分の頭で考えて行動し、自分の未来を勝ち取ってほしいと思います。

小学生新聞2024年9月15日発刊号 国際基督教大学2年 渡邊和花

法政大学4年 鈴木悠介/国際基督教大学2年 渡邊和花/東洋大学2年 越山凛乃/中央大学3年 前田蓮峰

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