クリエイティブディレクター 佐藤可士和
自分を俯瞰的に見ることが必要
クリエイティブディレクター 佐藤可士和(さとうかしわ)
■プロフィール
日本を代表するクリエイター。物流の新しいあり方を提示した「ALFALINK相模原」は、INDUSTRIAL DESIGNERSSOCIETY OF AMERICA 2024 Environments部門 GOLD、ドイツの建築賞 ICONIC AWARDS 2023 BEST OF BEST 受賞など国内外で注目を集めている。
日本を代表するクリエイターでありデザイナーの佐藤可士和さん。企業ブランディング、ロゴデザイン、空間デザインなど多岐にわたるプロジェクトを手掛けている。
その独創的なアプローチとデザイン力は、どのような発想から生まれてくるのか。仕事に取り組む姿勢などを伺った。
■クリエイターになろうと思った理由を教えてください
あらゆる物を絵を描くように表現する。これは大学時代での大きな学びです。学生のときはバンド活動に力を入れており、1年生からパンクバンドを組んでいました。自ら作曲してバンドをプロデュースし、学園祭やライブハウスで演奏するなど音楽を楽しんでいました。もちろん作品制作では絵を描いたりもしていましたが、音楽に一番力を入れていたと思います。
当初、音楽は好きだというだけで始めましたが、すぐにオリジナルの創作に挑戦したいという気持ちが強くなりました。また、大学2年のときに、音楽の作曲プロセスが絵画の制作と似ていることに気がつきました。テーマを設定し、ビジュアルを作っていくのと同じように、音楽もストーリーをデザインしながら作り上げていく。このとき、「僕は何でも作れる」という感覚が突然訪れ、自己表現の無限の可能性を感じました。そして、空間デザインや映像など、さまざまな分野において根底にあるのは絵を描くように考えるということだと気付いたのです。
■独立するきっかけを教えてください
大学卒業後、広告業界に興味を持つようになり、博報堂に入社します。入社後、すぐに自分の視野の狭さに気付きました。今まで見ていたのはクリエイティブ領域だけで、広告のビジネス的な側面や経営面での位置付けなどの認識が足りなかったのです。僕はこれまで見てきた世界の狭さを感じたことにより、広告制作におけるマーケティングや経営について学ぶことが面白くなりました。今でも「自分の見ている世界は狭い」という感覚は忘れずに大切にしています。
また、一方では仕事を続けていく中で、会社や広告業界では、自分が独自に考えている時代に沿った形の新しい取り組みができずにいました。それは世の中が広告からデザインへと動くと感じていた僕は、「これからはデザインが社会を動かす原動力となる」と確信し、独立を決意しました。
■クリエイティブさを磨く方法を教えてください
博報堂の若手時代は、自分の中からアイディアやデザインを生み出していくものだと思い、ずっと悩んでいました。しかし、自分のやりたいもののアイディアを出すのではなく、相手からアイディアを引き出すことの大切さに気が付きます。
クリエイティブディレクターとして最も大切にしているのは、クライアントとのコミュニケーションです。クライアントの要望を引き出し、それを具体的にデザインすることが重要です。クライアントのいいところを引き出して社会に紹介する、とてもポジティブな仕事です。クリエイティブなプロセスを通じて、クライアントやユーザーが喜んでくれることが何よりも嬉しいですね。
また、僕は日常生活の中でも周りの出来事や社会の動きに対して敏感に反応するように心がけています。その気づきを得るために、自分を俯瞰的に見ることが大切です。たとえば、話題となっているニュースを見て、なぜ自分はそう思うのか、なぜ人々がそのように反応しているのかを客観的に分析します。これによって時代の流れや社会の価値観をキャッチし、クリエイティブに活かすように心掛けています。
学生新聞2024年10月1日号 法政大学4年 島田大輝/日本大学4年 鈴木準希
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