東日本高速道路株式会社 取締役 兼 常務執行役員 サービスエリア・新事業本部長 吉見秀夫
協調と挑戦の姿勢で、より身近で快適な高速道路に
東日本高速道路株式会社 取締役 兼 常務執行役員 サービスエリア・新事業本部長
吉見秀夫 (よしみひでお)
■プロフィール
1964年生まれ、大阪府出身。1987年に日本道路公団 入社。東日本高速道路㈱ 管理事業本部 営業部長、総務・経理本部 経理財務部長などを経て、2022年に常務執行役員 サービスエリア・新事業本部長に就任。2024年6月から現職。また、同年6月から、SA・PA商業施設の管理運営を行う ㈱ネクスコ東日本エリアトラクト 代表取締役社長も兼任している。
日本の社会インフラを支えているNEXCO東日本。同社のサービスエリアは、単なる高速道路利用者の休憩所にとどまらない。地域を活性化する拠点であり、新規事業の実験場であり、さらには空飛ぶ車の発着拠点としての可能性も秘めている。そんな革新の先頭に立つ吉見秀夫取締役が語る、NEXCO東日本のビジョンと戦略に迫る。
■競技ダンスに魅せられて
学生時代、私は競技ダンス部に所属し、4年間活動に打ち込みました。競技ダンスとは、男女がペアで背番号を付けて競技会に出場するスポーツです。華やかな競技ですが、実際は厳しい練習と多くの課題を乗り越えなければなりませんでした。特に、団体戦ではメンバー全員が目標に向かって心を一つにする必要があり、個人プレーが目立つとチーム全体が機能しません。そのため、私は部の代表として、後輩たちと向き合いながら、やめたいと悩むメンバーの心をほぐす役割を担うようになりました。
その一方で、部活動の費用を補うため、塾のアルバイトをしていました。学生競技ダンス連盟の理事もやりながら、部活の練習に全力を注ぐという多忙な日々を過ごしましたが、この経験を通じて、時間管理やタスクの優先順位を考える力を磨くことができたと思います。また、競技ダンスで培った忍耐力と人間関係を円滑にするスキルは、今の仕事にも大変役に立っています。
■原点は家族旅行
私がネクスコ東日本に入社を決めた背景には、幼少期の体験が強く影響しています。父はドライブが好きで、休日には家族で車に乗り、いろんな場所へ旅行に連れていってくれました。その中で特に印象に残っているのは、高速道路を走る快適さと、サービスエリアの楽しさでした。父が車を停めるたびに、私はワクワクしながらサービスエリアに降り立ち、売店でお菓子を買ったり、食事を楽しんだりしていました。一方で、当時の高速道路網は未完成で、途中で一般道に降りる必要がありました。くねくねした山道や信号の多い一般道と比べて、高速道路のスムーズさと快適さが際立って感じられ、「もっと高速道路が広がればいいのに」と子ども心に思ったものです。その感動が大学卒業時にふと思い出され、自分が感動した経験を提供する仕事がしたいと強く思い、ネクスコ東日本を志望しました。
■サービスエリアを再定義する
ネクスコ東日本の魅力は、高速道路という社会インフラを支えながら、自由な発想で新たな価値を創造している点にあります。例えば、サービスエリアを休憩のための場所から目的地として進化させる取り組みもそのひとつです。その一環として展開されたドラマチックエリアでは、地元の特産品や文化をテーマにした商品が並び、訪れるだけでその地域を満喫できるよう工夫されています。また、パサールと呼ばれる多店舗型サービスエリアでは、有名ラーメン店やカフェが並び、一つのショッピングモールのような魅力を提供しています。さらに、地域住民も利用できるウォークインゲートの整備は、地元の人々とのつながりを強化する画期的な試みです。このゲートは地域にお住まいの方が高速道路を使わずに一般道側からアクセスできるように設計されています。これにより、サービスエリアはただの通過点ではなく、地域の核として機能するようになりつつあります。
私の夢はサービスエリアを単なる休憩施設から、地域の核となる存在に進化させることです。例えば、空飛ぶ車が普及する未来を見据え、サービスエリアをそのポートとして活用する構想もその一つです。東北道の長者原サービスエリアでは、観光用ヘリの運用実績があり、これをモデルにさらなる発展を目指しています。また、災害時の物資輸送や物流拠点としての役割も視野に入れています。
公共インフラ事業を担う企業として環境への配慮も重要な課題です。カーボンニュートラルを実現するため、電気自動車(EV)の普及を支援する急速充電器の設置や、高速道路整備による渋滞緩和に取り組んでいます。これからも、地域経済と社会の持続可能性に貢献する仕組みづくりを進め、未来の高速道路のあり方を追求していきます。
■一緒に働きたいのは「協調性×アイデア」を持っている人
私たちが採用したいと思うのは、協調性があり、多様な価値観を尊重できる学生です。高速道路事業は、多くの部門や関係者との連携が不可欠であり、相手の立場を理解しながら自分の意見を伝える能力が求められます。さらに、当社では新しい挑戦を重視しているため、柔軟な発想で物事を考えられる人材を特に歓迎しています。例えば、私たちがスタートアップ企業と進めている「ドラぷらイノベーションラボ」でも、斬新なアイデアを積極的に採用しています。学生の皆さんにも、自分のアイデアや価値観を大切にしながら、周囲の人々と協力して新しい可能性を生み出してほしいと思います。わたしたちは、そんな方々と出会い、共に新たな価値を創造していくことを楽しみにしています。
■Message
大学生の皆さんには、「競争より共創」をキーワードに行動してほしいと思います。これからの時代は、業界や世代の壁を越え、さまざまな人々と協力することで新しい価値が生まれる時代です。固定観念にとらわれず、多くの人とつながりながら、柔軟な発想で行動してください。また、現代日本は失われた30年と言われることがありますが、私は次の30年を明るい時代にできると信じています。今の経営者世代も自ら変革を求める人が増えていますので、世代を超えてイノベーションを進めていけると感じています。その実現には、若い世代の挑戦が不可欠です。これからの日本を引っ張る皆さんとともに、新しい未来を創り出せることを心から楽しみにしています。
学生新聞オンライン2024年8月19日 明治大学大学院2年 酒井躍
京都芸術大学1年 猪本玲菜/大妻中野高等学校3年 加藤眞優花/城西国際大学1年 渡部優理絵/明治大学大学院2年 酒井躍
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