ビットバンク株式会社 代表取締役社長 廣末紀之

暗号資産とは、“マネーのインターネット”だ

ビットバンク株式会社 代表取締役社長 廣末紀之(ひろすえ のりゆき)

■プロフィール
野村證券にてキャリアをスタートし、その後インターネットに魅了されIT系スタートアップの立上げ、経営に長年携わる。GMOインターネット株式会社常務取締役、株式会社ガーラ代表取締役社長、コミューカ株式会社代表取締役社長などを歴任。2012年暗号資産技術はマネーのインターネットになると確信し、2014年ビットバンク株式会社を創業。2022年デジタルアセット信託事業への参入に向けて、日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社を設立し、同社代表取締役を兼任。

暗号資産(仮想通貨)という新しい産業で暗号資産取引所「bitbank」を運営するビットバンク株式会社は、安心安全な暗号資産取引所として多くの人から絶大な信頼を得ている。創業者である廣末紀之氏は、暗号資産の可能性を信じ続け、事業を推進してきた。そんな廣末氏が“ビットコイン”に出会うまでの道のりや多くのお客様に愛される取引所の秘訣、今後の目標について伺った。

大学生時代は、勉強よりもサークル活動など遊び中心の生活でした。そんな生活を送る中で、ビジネスマンへの憧れを持つようになりました。そして、社会人になったら、誰よりも真面目に働こうと考えるようになりましたね。

■常に将来を見据えて…

ビジネスマンへの憧れを持つとともに、将来、自分で起業したいという気持ちも持っていました。起業するにあたり、金融の知識は不可欠であることや様々なビジネスに触れる機会があることが決め手となり、金融の世界を選びました。そして、当時、金融業界でも一番厳しいとされる野村證券に就職しました。入社した当初は、やはり厳しい洗礼を受けましたね。そんな中でも、仕事に直向きに取り組み、同期500人の内、営業成績一位を収めることができました。しかし、インターネットの登場をきっかけに野村證券を退職することにしました。証券会社にいて、身についたことは、「未来に社会や企業がどのように変化していくか」を考えることです。社会全体が工業社会から情報社会へ移行すると言われる中で、未来がどうなるのかを考えていた頃、インターネットに出会いました。この時、インターネットの普及が情報化社会の中心になり、産業の構造も激変するはずだと考えました。そこで、インターネット業界のど真ん中に行かないとダメだと感じて、GMOインターネット(現 GMOインターネットグループ株式会社 )にジョインしました。GMOでは、会社の経営に携わりましたし、東証一部上場まで果たしました。その後、カーシェアリングの事業を始めるのですが、リーマンショックの影響もあり、事業の売却をしました。私は、常に社会がどうなっていくのか、将来がどのように変化していくのかを考えているのですが、「次のビジネスは何をしようか」と模索していた時に出会ったのが、ビットコインだったのです。

■ビットコインへの確信

最初は、私も暗号資産には良いイメージをもっていなかったですね。しかし、一つ一つの技術を自分で消化して、この技術にどのような意味があり、どのような可能性があるのかを、自分自身できちっと理解しないと、事業の打ち手を間違えるので、ビットコインはどういうものなのかを色々と研究しました。調べていくうちに、ビットコインとは「マネーのインターネット」だと思ったんです。インターネットは情報の流通ができますが、本質的にはデータの盗聴や改ざんが可能であり、ビットコイン誕生前は、二重支払いが許されないマネーとしてのデータの流通は不可能と考えられていました。ビットコインのすごいところは、複数の技術を組み合わせ、最大の課題であった二重支払い問題を解消し、その取引が改ざんされていない正常なデータであるということを、信頼できる仲介者を必要とせずに証明できるところです。これを理解した時、この技術を持っていれば、現在の信頼できる仲介者を必要とする金融構造を大きく変えることができると確信し、2014年に創業しました。現在、私たちがおこなっている事業を簡単にいうと、取引所はビットコインを売りたい人、買いたい人をマッチングさせるなどといったサービスです。

■アマチュアからプロへ

この変化の極めて激しい暗号資産業界で生き残るポイントは、致命的なミスをしないことです。新しい産業は、みんなアマチュアでスキルが低いところからのスタートです。そのため、ミスを起こしやすい。我々の場合のミスといえば、ハッキングによる流出事故やシステムダウンなどですね。そうすると、ミスをした会社が次々と落ちていく。その結果、ミスをしていない会社が勝つのです。つまり、勝ちにいって勝つのではなく、相対的に勝つという感じですね。 これは、敗者のゲームです。だからこそ、私たちは絶対に流出事故などを起こさないようにシステム準備をおこなっています。これを成し遂げるには、技術やノウハウがある人材採用と資金を集める必要があります。致命的なミスを防ぐことを心掛けてきた結果、多くのお客様から信頼を勝ち得ることができ、支持され続けているのだと思います。しかし、市場が成熟してくると、みんながプロになってきます。今度は、自ら勝ちに行かなければいけません。これは勝者のゲームです。私たちは、最近、テレビCMなどのマーケティング活動も強化しています。商売は、品質だけが良くても、お客様は集まらないですからね。やはり、品質とマーケティングの二つが重要であると実感しています。

■これからのビットバンク

今後10年間で起こる最も大きな変化は、AI社会への転換です。これによって、産業のあり方、人々の働き方が大きく変わると思います。人間の能力を超えるものがデジタル上で存在することで、これからの仕事は全て機械にやらせるような社会になるかもしれません。暗号資産の視点から考えると、暗号資産は全てデジタルで完結できるので、AIが使うには最適なのです。私は、AIによる機械化経済が起こった時、暗号資産はAI同士の支払いに適していると考えています。そのため、これからはAIエージェントに特化した事業も考えていきたいです。現在は、人や会社に向けた商売をおこなっていますが、AI向けの商売をしたいですね。これからもビットバンクが成長し続けるために、私が一緒に働きたいと思う人は、やはり素直で行動力がある人です。正しい倫理観、正しいモノの見方ができるかが重要です。そして、プラスアルファでこの業界に関する技術や興味をもっている人ならば、なお良いですね。

■大学生へのメッセージ

常に今取り組んでいる領域で1番を目指すという姿勢が大切です。1番を目指して物事に真剣に取り組むことで、次のステージが切り開けてくると信じています。この「1番」を目指したプロセスが最終的に繋がって、人生という一連のストーリーを作り上げることになると考えています。ぜひ、自分の信じた道を突き進んでください。

学生新聞オンライン2024年12月4日取材 国際基督教大学2年 丸山実友

国際基督教大学2年 丸山実友 / 東洋大学 2年 越山凛乃

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