陸上自衛隊 木更津駐屯地 第1ヘリコプター団パイロット
自衛隊訪問 ─ 陸上自衛隊
「見る・撃つ・運ぶ」を担う、現場を"空"から支える操縦士
陸上自衛隊 木更津駐屯地 第1ヘリコプター団パイロット

陸上自衛隊 木更津駐屯地
第1ヘリコプター団パイロット
左: 森正平(もりしょうへい)
右: 榎本壽迪(えのもととしふみ)
任務遂行の際に、安全に素早く現地に送り届ける責任を負うパイロット。どのような使命感を抱いてコックピットに座るのか、榎本さんと森さんのお二人にお話を伺った。
■パイロットになった経緯を教えてください
榎本 中学3年生のときに自衛隊のサイトを見つけたのがきっかけです。実家のある北海道で農家を継ぐ未来を想像できず、違う進路を探していたときに陸上自衛隊の高校である高等工科学校の存在を知りました。身体を動かすことや乗り物に興味があったので、不安というより半ば勢いで入学を決めました。数ある職種の中でもパイロットは特にかっこいいイメージがあり、「陸上自衛隊の中でパイロットになれるのはどの部隊かな」と探して就きました。
森 子どものころから飛行機が好きで、中学生のときに航空機を見に行っていた基地で勧誘を受けたのがきっかけです。当時はオフィスで働く仕事のイメージがわかず、自衛隊ならおおよそ想像がついたのです。将来の自分の姿も想像できるし、好きな飛行機に少しでも近づけるのではないかと思ってパイロットを目指しました。海上自衛隊や航空自衛隊でもパイロットの募集はあるのですが、募集人数が少なく、結果的に陸上自衛隊のパイロットになることに決めました。
■どのようなお仕事をされているのですか
森 陸上自衛隊の航空機は主に「見る・撃つ・運ぶ」の三要素を担っています。災害現場の様子や敵情偵察をする「偵察(見る)」、有事の際に攻撃をする「攻撃(撃つ)」、現場に人や物を運ぶ「輸送(運ぶ)」です。私は主に輸送を担っていて、山火事の際は大きなバケツを運んで空から消火したり、パラシュート部隊を現地に運んだりしています。使用するヘリコプターは、一度に約30人を運べたり機体の腹の部分に荷物をぶらさげたりできるので、出動の要請を受ければ人員や物資を積んで現場の応援に行くイメージですね。
榎本 私は主に偵察を担当しています。この部隊で使われる機種は固定翼であり、他の機体より速く長く飛べるのが特徴。そのため、何か起こったときにいち早くかけつけて現場の様子を本部に伝えたり、現場に指揮官を送り届けたり、「部隊の目になる役割」を担います。このように、各部隊は機種の特徴に合わせてそれぞれの能力を発揮できるように動いています。また、飛行の際は、飛行計画や機体の整備、任務後の成果の分析までを行い、常に非常時に最大の力を発揮できるように訓練しています。
■仕事で意識していることはありますか
森 安全管理ですね。私たちは上空の仕事ですが、任務をやり遂げるためには現場の地上部隊と協力しなければなりません。そのため、彼らとスムーズに連携を取るためにも機体について知ってもらうようにしています。たとえば、ヘリコプターには上だけでなく下にもプロペラがあることを伝えて、すぐに近寄らず安全な距離を取ってもらっています。専門が違う隊員たちと意思疎通を図ることは今後も注力していきたいですね。
榎本 決断力も重要だと思います。機体は多くの隊員や物資を乗せて速い速度で動いているので、パイロットとして操縦しながら素早く状況を判断しなければならないからです。現場の様子や気象情報など、全ての情報を含めて判断する難しさもありますが、その分、任務を終えて地上に降り立ったときは大きなやりがいを感じます。
■中高生へのメッセージ
榎本 外に出て友達と遊ぶことを大事にしてほしいです。人と話すとコミュニケーション力も付きますし、集まってくる情報を整理し、自分の頭で考えて判断できるようにもなります。周りと協力しながらタスクをこなすときに役立つと思います。
森 自衛隊には、実はいろいろなキャリアがあります。航空機の操縦や現場の指揮、国際的な仕事のための英語の教官といった仕事もあります。陸上自衛隊でもパイロットになれることなどもわかりますので、ぜひ一度自衛隊に来てみてください。きっと多くの将来が見えると思います。
中高生新聞2025年4月号 上智大学3年 吉川みなみ



武蔵野大学4年 西山流生/津田塾大学1年 石松果林/東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 吉川みなみ
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