テリー伊藤 コラムVol.59 プロ野球から隠し玉が消えた
元読売ジャイアンツのヘッドコーチだった元木大介さんが自分のYouTubeで「最近のプロ野球は”隠し玉”が減った」と語っている。隠し玉とは、例えばランナーがセカンドに居て、今まさにピッチャーが投げようとしている時、セカンドランナーがサードベースを狙うべくベースを離れリードをした瞬間、走者の背後から二塁手が隠し玉でタッチするプレー。言われてみると、最近のプロ野球では殆ど見た事がない。プロ野球ニュースの珍プレー好プレーでもお目にかかれない。
元木さんは隠し玉が減った訳を解説している。近年は選手が防具をいっぱい付けていて、その防具をボールボーイが取りに来るためにタイムがかかる。今まではタイムがかからなかったので隠し玉がやりやすかったが、タイムがかかった時点でボールデットになり、ボールはピッチャーに戻されてしまう。更には、ボールがチョットでも地面につくと直ぐに交換しニューボールになる。一度グランドに着いたボールをピッチャーに戻すことはまずない。今のピッチャーは、投げたボールがフライになってアウトになると、審判にニューボールを貰う事になり、ここでも隠し玉はますます難しくなる。プレーがかかって野手がボールを貰いに行くのは、あの大観衆の中では相当難しい。そんな訳もあって隠し玉が減ったのではと。納得。
確かに隠し玉プレーはカッコイイものでは無いかも知れないが、見てみたい。以前こんなプレーを見た覚えが。二塁ランナーが塁から離れ、ピッチャーが牽制球を投げ、ヘッドスライディングで戻りセーフ。ランナーが土の着いたユニフォームを払っている時、ピッチャーが返球したように見せかけ、プレーは再開。しかしランナーが再び塁から離れた所をタッチしてアウト。このプレーに場内騒然となった。情けない表情でベンチに戻る選手が印象的だった。これはベンチにも責任はある。しっかり野手の動きを見てアドバイス出来たはず。 それにしても今の時代、姑息なプレーと思われる隠し玉は、成功してもネットで叩かれ、相手チームのファンからも文句を言われる。5万人もの大観衆を騙すプレーになるわけだから覚悟もいる。実は元木さん1999年4月3日の対阪神タイガース戦で隠し玉を試みたが、桑田真澄投手がボークをとられた苦い経験がある。桑田投手は左足が投手板をまたいでいるように見えたと審判員から通告されたと語っている。草野球では時々見ることが出来る珍プレー、今こそプロ野球で見てみたい。ジャイアンツ吉川、門脇辺りがやってくれると、面白いのだが。失敗しても阿部監督怒らないでください。

テリー伊藤(演出家)
1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ」
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry
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