「学生新聞」とは、学生の、学生による、学生のための新聞です。

テリー伊藤 コラムVol.61 上越新幹線で遭遇した謎の親父軍団

ご存知LALALAの発行は1週間に1度のペース、有難い事に長年連載を務めさせて貰っているのだが、週イチで題材を見つけるのは時には大変な事も。テレビの連続ドラマなら脚本家がいてストーリーを考えてもらえるが、コラムはそうはいかない。毎日劇的な出来事がある訳も無く、平凡な日々が続く。ではどうしているのかというと、ネタ探しのために世間を観察モードで見てしまう。街を歩いていても、レストランに入ってもその癖は長いこと変わっていない。かつて車で青山通りを走行中、信号待ちで隣に止まった赤いフェラーリに乗った20代の女性を見て「若いのに何の仕事をしているのだろう。何処で稼いでいるのか。謎だ。」をヒントに、テレビの深夜番組『給料明細』(テレビ東京)を作った事があった。

先日、テレビ番組『テリー土屋のクルマの話』(MXテレビ)で、群馬県にあるサイクルセンターにカーレースの収録に出かけた。早朝の上越新幹線に乗るため東京駅に行くと、ホームの売店で50代位の親父軍団10名ほどがビールとおつまみを大量に買い込んでいた。その様子を横目で見ながら「朝から酒か、厄介な連中かも」と考えながらファンション観察をすると、チョイ悪親父の定番、ジャージの上下に派手なスニーカーの出で立ち。もしかしたら「その筋の方々」と不安が頭によぎった。私、新幹線に乗る時にはいつも列車の中頃の席を選ぶ。今回もスタッフの計らいでグリーン車の8列D席を取ってもらった。どうか彼らと離れた席でと祈っていたのだが…何と10名軍団が同じ車両に乗ってきて、よりによって私を囲む様に着席したのだ。他に空いている席は沢山あるのに…チケット販売員は座席表をコンピューターで見ているはずなのにどうなっているんだ。しかし着座した状況で係員に席替えを頼む勇気も無く、緊張のまま列車は無情にも走り出した。

上野駅を過ぎた辺りから宴が始まった。私はテリー伊藤だと気付かれるのも嫌で窓に顔を向け本を読む事に。しかし一向に騒ぎは大きくならない。皆それぞれ静かに飲んでいるのだ。まさかの拍子抜け。静か過ぎる。逆にこちらに気を遣ってくれている様子。あまりの静寂さのなか会釈すると「テリーさんどちらまで?」と笑顔で声をかけてきた。最初から顔バレしていたのだ。話を聞くと明日新潟で開催されるダーツの大会に出場するとの事、まさかの選手たちだった。リラックス時間は今しかないそうで、それから話が弾むこと弾むこと、下車前には車内で記念撮影まですることに。

完全に人間観察失敗、いい人達でした。そんな訳でLALALA原稿出来上がりました!明日は誰の人間観察しようかな。

テリー伊藤(演出家)

1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。