株式会社SHIFTグロース・キャピタル 代表取締役 / SHIFT USA Inc. 取締役CEO 小島秀毅
キャリアとは、自作自演のドラマのようなもの

株式会社SHIFTグロース・キャピタル 代表取締役 / SHIFT USA Inc. 取締役CEO 小島秀毅 (こじまひでたか)
■プロフィール
2003年東京外国語大学外国語学部卒業。2009年一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程(MBA)修了。2019年ハーバード・ビジネス・スクールPLD修了(PLDA)。大和証券、GCA、三菱商事を経て2020年からSHIFTにてM&A/PMIを一貫して行える体制を組成し責任者を務める。2022年3月にSHIFTグロース・キャピタルを設立し取締役として参画、2024年11月に代表取締役に就任。2025年2月にSHIFT USAを設立し取締役CEOに就任。近年はVCのアドバイザーやスタートアップの顧問、エンジェル投資家として日本のスタートアップエコシステムの構築にも取り組む。
麻布台ヒルズ・森JPタワーに本社を構える株式会社SHIFT。M&Aを含めた多様な強みを武器に、お客様の売れるサービスづくり、IT課題の解決を通じて、各産業の成長と価値向上に向けた事業を展開している。株式会社SHIFTグロース・キャピタル代表取締役の小島秀毅さんは、学生時代にアメリカンフットボールを経験し「組織で勝つ力」を培ってきたという。その学びを活かした仕事との向き合い方や今後の展望について、お話を伺った。
株式会社SHIFTは、ソフトウェアの品質保証・テスト事業を軸に成長してきた会社です。今では、ソフトウェア開発全領域を担い、企業のDXを支援するまでに領域拡大、売上高1,000億円超、社員約1万4,000人、グループ会社40社以上の規模にまで成長しました。私が代表を務めるSHIFTグロース・キャピタルは、その成長を支えるM&A戦略を推進するグループ会社です。
SHIFTグループが行ってきたM&Aはすでに40社近くにのぼり、体制・スピード・対象領域などすべてをスケールさせてきました。ただ買収するだけでなく、その後の営業支援・採用支援・経営支援を通じて再現性のある成長モデルを確立していくのが特長です。
■部活で学んだ「組織で勝つ」経験
学生時代の私は、今の仕事とはまったく異なる世界にいました。大学ではアメリカンフットボール部に所属しており、週6日練習に明け暮れる生活を送っていました。アメフトは個人では勝てない競技です。それぞれがチームの中で自分の役割を果たすことで成果が出る。その経験が、今の「組織で成果を出す」という考え方の基盤になっています。
正直なところ、当時はビジネスや起業にはあまり関心がありませんでした。しかし振り返ってみると、あの時期に学んだ仲間と共に成長する力や勝つための考え方は、今の仕事に非常に活きています。
■大切なのは選んだ道を正解にする努力
私のキャリアは、大和証券での社会人生活から始まりました。同社で金融を学んだ後、M&AアドバイザリーファームのGCAを経て、三菱商事に移りました。三菱商事ではライフサイエンス本部の立ち上げに関わり、アメリカでの駐在や経営にも携わりました。10年間で多様な経験を積むことができたのは、非常にありがたいことでした。
そして2020年、SHIFT創業者の丹下大さんと出会い、面談のその場で「行きます」と即答しました。周囲からは驚かれましたが、私の信念は「どちらが正解か」ではなく「選んだ道を正解にする努力」をすること。だからこそ、自分で決めた道を進むことに迷いはありませんでした。
私がGCAに在籍していた際、創業者の佐山展生さんから「キャリアとは、自作自演のドラマのようなもの」と言われました。この言葉がキャリアを考えるベースとなっています。自分が主人公であり、脚本家でもある。他人の期待に応えるよりも、自分が何をしたいのかを問い続けることが大切だと考えるようになりました。
■「遠心力・求心力」で企業の可能性を広げる
直近M&Aをした企業は主に3つのパターンに分かれます。事業承継の課題を抱える会社、成長に限界を感じている会社、そしてIPOを目指していたが方向転換した会社です。SHIFTではそれぞれのパターン・状況に応じた最適な支援を提供することで、共に成長していく関係性を築いています。
また、SHIFTグループにジョインしてくれた会社に対して、社名変更や制度変更などを一律に求めることはしません。あくまで自主性を尊重し、それぞれの企業が自らの意思で成長できるような支援を心がけています。遠心力と求心力という考えのもと、グループ全体で強い組織を目指すことが私たちのポリシーです。
■魅力的だと思う人材の3つの要素
私が一緒に働きたいと考えるのは、次の3つの資質を持った人です。
まずは「軸を持って行動している人」です。報酬や肩書ではなく、自分がやりたいことを明確に持ちそれに向かって動いている人に惹かれます。
次に「限界を自分で決めない人」です。他人に無理だと言われたときに素直に諦めるのではなく、どうしたらできるかを考え続ける人にこそ、大きな可能性があると思っています。
最後は「謙虚な人」です。天狗にならず常に学ぼうとする姿勢を持つ人は、チームの中で信頼され成長していくと感じています。
もちろん、学生の段階では多少自信過剰だったり、生意気だったりすることもあるでしょう。しかし、社会に出て広い世界を知ることで自然と謙虚になり、ギャップを埋めていけるものです。ですから、今の段階で完璧である必要はありません。
■海外進出と未来のSHIFT
現在、私たちは売上高3,000億円、時価総額1兆円という目標を掲げて、事業を進めています。その一環としてSHIFT USAを設立し海外展開をスタートさせました。日本発の企業が世界で活躍する、その目標に向かって私たちは挑戦を続けています。
日本には優秀な人材が多くいますが、世界で活躍するスタートアップはまだ少ないと感じています。それは、日本人の能力が劣っているのではなく、挑戦の場が限られているだけ。だからこそ、私たちの取り組みがそうした挑戦の機会を広げる一助になればと思っています。
■大学生へのメッセージ
今の自分に満足していなくても大丈夫です。大切なのは「もっとできる」と信じること。他人に限界を決められるのではなく、自分で可能性を広げていってください。そして、自分の人生の主役は自分です。他人の期待に応えるのではなく、自分が心から納得できる道を選んでください。自作自演のドラマを、ぜひ最高の脚本で演じてほしいと思います。
学生新聞オンライン2025年7月31日取材 情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥

情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥 / 学習院女子大学3年 岩井美穂
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