女優 浅川梨奈
カメレオンのように色を変え、役を生きる

女優 浅川梨奈 (あさかわなな)
プロフィール
1999年4月3日生まれ、埼玉県出身。代表作に映画「人狼ゲーム マッドランド」(長編映画初主演)、映画「かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~」、CX「親愛なる僕へ殺意をこめて」、NTV「大病院占拠」、映画「おとななじみ」、ytv「帰ってきたらいっぱいして。」など。24年7月期NTV「どうか私より不幸でいて下さい」ではW主演を務め、本年3月に公演された舞台『きたやじ オン・ザ・ロード〜いざ、出立!!篇〜』ではヒロインを務める。
また、6月に公開となった映画「フェイクアウト!」ではヒロインを務め、主演映画「49日の真実」が本年7月に公開された。
中学時代に芸能界に入り、ドラマ、映画など幅広く活躍してきた浅川梨奈さん。主演作『49日の真実』では、長回しの演技やワンシチュエーションでの表現に挑んだ。「応援される仕事だからこそ頑張れる」と語る浅川さんに、仕事への向き合い方や今後の展望、大学生へのメッセージを伺った。
中学生の頃、私はAKB48が大好きで、何度かオーディションに応募していたのですが、すべて書類で落ちていました。そんな時にSUPER☆GiRLSに夢中になり、今の事務所のオーディションに応募したのが、芸能界入りのきっかけです。まさか本当に受かるとは思っていなかったので、二次審査の際も、母と原宿でクレープを食べたりアクセサリーを見たり、幼かったこともあり完全に旅行気分のままで臨みました。
いざ合格したときは、「どうしよう」という戸惑いの方が大きかったです。もともと芸能界に強い憧れがあったわけではありませんし、明確にやりたいことも決まっていませんでした。合格発表の後に母へ「受かっちゃった」とメールした時も、親子そろって「これからどうする?」という雰囲気でした。
本格的に「仕事」として意識し始めたのは、初めてドラマのヒロインとして出演させていただいた現場からです。それまではグループ活動やグラビアなど、知っているスタッフの方が多い環境での仕事が中心でしたが、初めて会う人ばかりの現場にひとりで入ったとき、右も左もわからない感覚に陥りました。特に男性の多い現場に緊張してしまって、「これが社会に出るということなのか」と強く感じました。
主演映画の現場では、同世代の俳優たちが真剣に芝居に向き合う姿に衝撃を受けました。「このままの気持ちで現場にいては失礼だ」と感じ、自分の意識も大きく変わったのを覚えています。
■「応援」の力に支えられて
私にとって、この仕事の一番のやりがいは「応援されること」だと感じています。普通に生活していたら、誰かから応援されることなんて、なかなかないですよね。でも、イベントに出ると、「初めて来ました」「ずっと応援しています」と涙ながらに伝えてくださる方がいて、そのたびに「この仕事をしていて良かった」と心から思います。
長年応援してくださっている方が結婚してお子さんを連れてきてくれたり、コロナ禍でのオンラインイベントではペットや自宅の様子を見せてくださったり。ファンの方と一緒に、人生の時間を共有できることが本当に嬉しいです。
つらいことや大変なことももちろんありますが、私は寝たら忘れてしまう性格なので、基本的には前向きにいられます。マネージャーさんや業界で出会ったスタッフの方々、友人たちにもたくさん支えられてきました。私の仕事をよく理解してくれている存在に話を聞いてもらえることが、大きな支えになっています。
■映画『49日の真実』がくれた緊張と一体感
主演を務めた映画『49日の真実』は、ワンシチュエーションで展開されるヒューマンサスペンスで、長回しのシーンに挑戦しました。27ページにもおよぶ台本を通しで演じる場面では、セリフだけでなく、動きや物音、タイミング、照明の変化まで全員が完璧に合わせなければなりません。
現場は少人数でしたが、その分、キャストもスタッフも一丸となっていて、本当に“奇跡を作っている”ような感覚でした。カメラマンさんが腕を回しながら30分以上撮影に集中している姿を見て、「自分も甘えていられない、次で決めよう」と思い直しました。全員の集中力と熱量が詰まった作品になったと思います。
今回の役は、冷静でリーダーシップのある人物。私は普段、誰かの後ろをついていく“ふわふわタイプ”なので、まったくの真逆でした。ただ、小学生の頃はもう少しリーダー気質だったので、そういった昔の自分と重なる部分もあったのかもしれません。
今回のようにオリジナル脚本でキャラクターが濃い人たちに囲まれている場合、自分は“普通”でいることが求められます。だからこそ、自然体で、ナチュラルな演技を心がけました。
■変幻自在な女優に
これまで、比較的“王道ではない”役どころを演じてきたので、今後は真っ直ぐな恋愛ものにも挑戦してみたいという気持ちがあります。10代の頃は“人を殺す役”を多くいただいていて(笑)、最近は“殺される側”や“どこか影のある人物”の役にも興味があります。
特に不倫ものは以前“する側”を経験しましたが、年齢を重ねた今、“される側”としての感情にも向き合ってみたいです。その立場だからこそ見える世界や、湧いてくる感情を深く掘り下げてみたいと思っています。
私は「どんな役を演じても顔が変わる」と言ってもらえることが多いのですが、それがすごく嬉しくて。特徴が強い顔立ちではないからこそ、メイクや表情、声の出し方ひとつで役に染まっていける。そんな「変幻自在」な女優を目指して、これからも幅広い役に挑戦していきたいです。
■大学生へのメッセージ
私は大学に通っていないので、大学生の皆さんのことを本当に尊敬しています。中学生の頃から芸能活動をしていたこともあり、学業と向き合う時間はほとんどありませんでした。だからこそ、受験を経て、大学でしっかり学んでいる皆さんは、本当に努力できる人たちだと感じています。努力って、私は才能だと思うんです。
大学生活は、自由で楽しい時間でもありますよね。ちょうどお酒が飲めるようになったり、自分でいろんな選択をできるようになったり。だからこそ、羽目を外しすぎない程度に、好きなことを思いっきり楽しんで、たくさんの経験をして、自分の人生を豊かにしてほしいです。
きっとそれぞれに目標があって、日々を頑張っていると思います。その目標がいつか実を結ぶよう、心から応援しています。
学生新聞オンライン2025年7月11日取材 津田塾大学 3年 石松果林
映画『49日の真実』
出演:浅川梨奈 田辺桃子
星野奈緒 冨手麻妙 君島光輝 高田里穂
佐野岳 高橋健介
鈴木秀人 青羽里奈 小野春花 本多正憲 河本準一
船ヶ山哲 原田龍二
監督・脚本:中前勇児
配給:エムエフピクチャーズ
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津田塾大学 3 年 石松果林 / 城西国際大学 2 年 渡部優理絵
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