ダイドードリンコ株式会社 執行役員 マーケティング部長 坂本大介
買うだけじゃない、自販機で「選ぶ楽しさ」を

ダイドードリンコ株式会社 執行役員 マーケティング部長 坂本大介(さかもと だいすけ)
■プロフィール
1997年ダイドードリンコ株式会社に入社。ルートセールスを経験後、主に、新商品の企画開発、マーケティング戦略、広告宣伝に従事。その後、グループ会社である大同薬品工業の開発部長を経験し、2023年ダイドードリンコ マーケティング部長、2025年に執行役員に就任し、現在に至る。現在の担当領域は、ブランド戦略、市場調査・分析、商品開発、広告宣伝・販促キャンペーン等。
入社してから一度も転職することなく長年マーケティングに携わってきた坂本大介さん。商品開発から始まり、今ではマーケティング戦略や広告宣伝などダイドードリンコのマーケティング全体を統括し、あの大ヒット作品、アニメ「鬼滅の刃」とのコラボ商品にも早くから動き出し、成功へと導いた。そんな坂本さんに、商品開発の工夫やダイドードリンコの強みなどを伺った。
就活をしているときに、働く上で「一人の人間として何かを残したい」という気持ちがありました。そのため、企業規模の大きさやお金が稼げるかどうかで判断せず、若いうちから挑戦出来る会社に魅力を感じていました。そして、身近なものや自分の興味のあるものを考えたときに、頭に浮かんだのが学生時代に野球をした後に飲む缶飲料のおいしさでした。あの感動が忘れられず、そんないろんな節目に思い入れがある飲料業界で多くの人の幸せに貢献出来るようになりたいと思い、当社に入社しました。
入社した当時は、メーカーとルート営業が今のように分かれていなかったので、一年目から全員ルート営業に配属され、自販機を回ってドリンク補充などもしてきました。その後は、すぐ商品開発やマーケティングに関わり、現在で29年目になります。
当社のマーケティング部では、マーケティング戦略や商品企画・開発、市場調査、広告宣伝、販売促進キャンペーンなどマーケティング全般に関わっています。これら一つ一つが部として成り立っている会社もありますが、当社では一つ一つをグループと呼び、全部まとめてマーケティング部という組織になっています。私は、そのマーケティング部の全体を見ながら統括をしています。
■商品開発で意識していること
商品開発で意識することの一つは、データからお客様のニーズを見出していくことです。消費者の動向の変化や売れ筋など様々な分析をグループで担当し、今後どんな商品を提供していくのかを考えています。しかし、データは過去の記録にすぎず、未来をどう予測するかは私たち自身が考え決めていかなければなりません。そこで戦略チームと開発チームは、データ分析と並行して常に新しい商品のアイデアを出し続け、両者をうまく融合させて商品化の可能性を探ります。
また、お客様の声も積極的に取り入れるようにしています。「こんな商品あったらどうですか」という消費者調査をネット上で行い、買ってみたいと思うかどうかなどの評価をしてもらいます。社内で期待していた商品も消費者の方々からの評価は意外と高くなかったりするなど、様々な評価を踏まえながら候補を絞り込みます。
ただし、アイデアを出す段階だけでなく、実際に商品化する段階にも慎重さが求められます。飲料は単価が低く大量生産が前提となるため、工場の設備や品質保証を確保しようとするとハードルが高くなります。どれだけ面白い商品でも、食品メーカーとして品質に対しては厳しくならざるを得ません。さらに当社は自社工場を持たないファブレス体制のため、外部の製造パートナーと連携して品質を守りつつ、新しい挑戦を実現していく必要があります。つまり「発想すること」と「それを実現すること」、この二段階を同時に乗り越えていくことが難しくもあり、重要だと考えています。
■50年続く飲料メーカーが愛される秘訣
当社では、何よりも「おいしさ」にこだわっています。メイン商品であるダイドーブレンドのコーヒー飲料シリーズは、創業当時から、香料を一切使わず、コーヒー豆から丁寧にドリップしたりエスプレッソ抽出したりして、本物のコーヒーの味を追求してきました。長年支えてくださるお客様の中には、ダイドーのコーヒーの味が好きと言ってくださる方が多くいます。そんなお客様を裏切らないためにも、味だけは誰にも負けないという思いで、日々商品づくりに向き合っています。
■他社との差別化
ダイドードリンコは売上高に占める自動販売機のシェア率が約9割と他社に比べて高く、自動販売機が主な販売の場となっています。自動販売機は私たちにとって“自社店舗”であり、その店舗をいかに魅力的な品揃えにするかが重要であると考えています。そのため、コンビニではなく自動販売機で飲料を買ってもらうために、少し変わった面白い商品を積極的に展開しています。現在では、「バスクチーズケーキ」や「旨辛ユッケジャンクッパ風スープ」などを販売しています。他にも、ルーレットつきの自動販売機を展開しており、「ダイドードリンコって、ルーレットあったよね」「買うならダイドーにしよう」とか「当たったから誰かに一本あげようかな」という風に、会話のきっかけになってもらえたらうれしいですね。目指しているのは、自販機に行けば「ここにしかない面白いものやコラボがあるかもしれない」と思ってもらえるような、ワクワクする売り場づくりです。最近では、お菓子やマスク、赤ちゃんのおしりふきなども扱いながら、もっと身近で楽しく便利な売り場として自動販売機を利用してもらえるよう取り組んでいます。
■今後挑戦していきたいこと
自動販売機を「選ぶ楽しさ」がある店舗にしていくことです。珍しい商品やコラボを通して、ダイドーの自販機に行くと何か新しい発見がある、そんなワクワクを感じてもらえる売り場が目標です。また、環境に意識の高い企業様のニーズにも応え、プラスチックごみの削減のため、アルミボトル缶や薄くて軽いスチール缶の商品を展開するなどして、資源を大切にした取り組みを進めていこうと考えています。
■大学生へのメッセージ
好きなものや興味のあることに一つでもいいので、真剣に向き合う経験をしてほしいです。真剣になれば、壁にぶつかるし悩む時が必ずあります。そんなとき、真剣に考え、突き詰めることは、全ての今後の経験につながると思います。
また、何のために働くのか、働くとはどういうことなのかを社会人になる前に一度考えてみてほしいです。例えば、ワークライフバランスという言葉がありますが、当社ではワークライフシナジーを大切にしています。一日の大半を仕事に費やすので、公私ともにバランスをとって隔てるのではなく、良い影響を及ぼしあえる関係になることを目指しており、私自身もこの考えを尊重しています。
学生新聞オンライン2025年10月28日取材 法政大学1年 渡辺碧羽

武蔵野美術大学1年 石井生成/国際基督教大学3年 渡邊和花/情報経営イノベーション専門職大学1年 襟川歩希/法政大学1年 渡辺碧羽


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