前橋市長 小川晶
一人一回の行動で変わる。行政と民間が一体となった街おこしを

前橋市長 小川晶 (おがわあきら)
■プロフィール
1982年生まれ。千葉県匝瑳市出身。
2006年に中央大学法学部を卒業し、前橋地方裁判所で司法修習。
2007年から弁護士として前橋市内の法律事務所に勤務。
2011年に群馬県議会議員に初当選し、4期務める。
2024年に前橋市長に初当選。(女性初)
「前橋に、笑顔を。」を合言葉に、市民との対話や交流を大切にしながら、市民参加の新しいまちづくりに取り組んでいる。好きな言葉は「感謝」、趣味は温泉めぐり。
「水と緑の詩のまち」として穏やかな時が流れる群馬県前橋市。近年は、子育て支援に農業施策、アニメツーリズムなど、その成長は止まるところを知らず。「官民一体のまちおこし」で躍動する小川晶市長に、市長自身の歩みと前橋市ならではの魅力を聞いた。
中学三年生のときに神戸で起きた「神戸連続児童殺傷事件」をきっかけに弁護士を目指すようになりました。当時、とても話題になった事件だったのですが、捕まった犯人が自分と同い年の少年だったということもあり、関心を寄せるようになりました。日本中が彼の敵になって攻め立てている中で唯一、少年の味方になっているのが付添人をしていた弁護士でした。その気づきがきっかけとなって、社会問題の近いところにいて、人に寄り添うことができる弁護士を志すようになりました。大学卒業後、司法修習の配属先が前橋地方裁判所に決まり、前橋にやってきました。司法制度改革の影響により就職氷河期に見舞われましたが、群馬の弁護士会は地元出身者以外を受け入れていたこともあり、この地で法曹の道を歩み始めることができました。活動していくうちに、男女差別や教育格差などの制度を変えるためには、政治の力が必要だと感じるようになりました。県に対して、もっとソーシャルワーカーを増やしてもらいたいとか、給付型の奨学金の制度を作ってもらいたいというのを、弁護士会から要望することもありましたが、なかなか社会は変わりません。そんな中、たまたま2011年の県議選の候補者を、当時の民主党が探しているという情報を頂いて、政界にチャレンジしようと思いました。県議を経て、現在は前橋市長として街づくりに取り組んでいます。前橋市は住みやすいという面ではポテンシャルも高くて、飛び抜けていると感じています。市民の皆さんに「一緒に街を作っていこう」「市政に参加したい」と思ってもらえるような、市民参加のまちづくりを目指しています。
■前橋市をみんなが自覚を持って作っていく
前橋市はほかの街に比べて、住みやすさという面ではポテンシャルも高くて、飛び抜けていると思います。医療や福祉など充実しているほかに、地域の支え合いの仕組みがあります。自治会が前橋市内に284団体もあって、それぞれが活発に活動しているので、身近なところで支え合う体制ができています。また、市役所の職員だけでなく市民のマインドも変える必要があります。「みんなが一緒にこの街を作っているんだよ!」という意識をもつことが、何をやるにも大事だと思ってます。子育てに関しても、自分のこどもではなくても、社会全体が応援できる街にしていきたい。子育てを、子育ての当事者だけの問題にしないで、みんなで携われるようにしていきたいです。同じことが農業でも言えます。農業政策は、農家だけが頑張ればいいと考えがちですが、それでは結局行き詰まってしまいます。農家がいなくなって困るのは、私たち全員です。なので、農家への応援として自分に何ができるかな、地元の野菜を買ってみようかな、みんなで考えることが大切です。みんなが協力することで、まち全体がよくなることをあらゆる分野で伝えています。
このように「一人一回の行動で、どれだけの価値が変わるのか」ということをSNSや動画でもお伝えしているのですが、SNSだけでなく、タウンミーティングやイベントなどリアルな行動も心掛けています。私自身が、いつでも市民の皆さんと話ができる身近な存在でありたいと思っています。そのため、市民の皆さんから様々なお話を直接伺うことと、今後の展望や課題の解決策を一緒に考えていくことを大切にしています。まちづくりを他人ごとにせず、みんなが自分ごととして意識を持って、一緒に前橋市を作っていく、その意識改革に向けた取り組みをしていきたいです。
■アニメ『前橋ウィッチーズ』と地域の共生
『前橋ウィッチーズ』は若い子だけではなくて、私と同世代の女性ファンが多いので幅広く受け入れられていると思います。アニメの内容は、ヤングケアラーやルッキズムなど現代の社会問題に切り込んだものになっています。前橋市としても電車やバスのラッピング、前橋の売りである、「いちご」を使ったコラボキャンペーンなどを実施しています。おかげさまで、たくさんのファンの方が県外からきてくれています。また、行政だけでなく民間も含めて様々な方がウィッチーズで前橋を盛り上げようという取り組みをしてくれています。最近では、前橋市内にあるSDRSという自動販売機などを作っている製造業の会社が、「推し活トレーラー」というウィッチーズのグッズが買えるトレーラーハウスも設置してくれました。市役所から5分ぐらいの楽歩堂前橋公園にあるので、ぜひ寄って行ってください。これがあれば、どこに行ってもウィッチーズのグッズが買うことができます。ほかにも、群馬の名物である「旅がらす」とのコラボ商品も誕生しました。5月25日に発売されたばかりで良いお土産ができたなと思っています。このように、みんなが楽しみながらアニメで街を盛り上げています。官民連携で、行政だけが頑張るのではなく、民間と一緒にプロモーションをしていくのも前橋の特徴だと思います。行政だけが前のめりになるのではなくて、みんなで地域を育てていく感覚こそが大事なのだと思います。
■大学生へメッセージ
大学生活を振り返ると、本当に貴重な時間だったと感じます。何にでも挑戦できる、可能性に満ちた時期です。社会に出ると、時間や仕事の制約があるため、学生時代ほど自由に行動することは難しくなります。
だからこそ、学生のうちにしかできないことや、今だからこそ挑戦できることを大切にしてほしいと思います。会いたい人に会いに行く、行ってみたい場所へ足を運ぶ、やったことのないことに挑戦する。限られた時間を大切にしながら、さまざまな経験を積んでもらいたいですね。
学生新聞オンライン2026年6月3日取材 法政大学3年 高原朋希

情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/法政大学4年 島田尚和/法政大学3年 高原朋希


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