テリー伊藤 コラムVol.32 世界一のせっかち男
私は大の“せっかち”である。スターバックスに行ってもゆっくり落ち着いてお茶を楽しめない。10分で出てくる。高級レストランに行っても、メニューをろくに見ずに注文することもしばしば。ウエイターもあきれ顔。更に、注文した料理が早く来ないかと、つい調理場の方を見てしまう。料理長が心を込めて作った美味しい料理を食べるのがこれまた早すぎる。子供の頃から母親に「よく噛んで味わって食べなさい。」と再三注意された。大人になってもまったく治っていないのだ。むしろ速さは増している。一緒に行った人は二度と私と食事には行きたくないはず。
“せっかち”はこれだけでは無い。スーパーマーケットの買い物も早い。いつもと同じ食品を素早く買ってしまう。お店の滞在時間がとにかく短い。駐車場に車を停めるためにかかる時間の方が長い。一見良いように思えるが、ショウケースにある目新しい野菜、果物、お惣菜、お菓子などが目に入らず、いつもワンパターンのもばかり選択。玉子、トマト、レタス、きゃべつ、玉ねぎ、大根、ホウレンソウ、人参。お魚は鮭、イワシ、サンマ、鯵、時たまタイ、カジキマグロ、ししゃも。作る料理はいつも一緒。肉を買っても料理は生姜焼き、すき焼き、カレー、牛ステーキ。これが1年のローテーションなのだ。新しい出会いがない。
“せっかち”人生はスポーツクラブでも。まず脱ぐ速度は絶対スーパーマンより速く、トレーニング後はシャワーで身体を洗い、浴槽には入らず、サウナ室でもゆったりすることなく5分で退室。仲間は休憩室で今日の疲れを癒しながら知り合いと談笑しているのに、私はサラッと髪を乾かして即出てくる。受付けでかけられる言葉は「もうお帰りですか。」が定番。スポーツクラブでも私の“せっかち”ぶりは評判になってしまった。
大好きな洋服屋さんでもこの癖は直らない。店内を一周回って目ぼしいものがあるとすぐ購入、おかげで何着も同じ洋服が我が家のクローゼットに鎮座する。そう言えばひとつだけ、のんびりしているものがある。車の運転です。これがむちゃくちゃ安全運転なのだ。首都高、制限速度60km、第三京浜制限速度80kmは何故かちゃんと守る。横断歩道でも歩行者が見えた段階で必ず一旦停止。深夜の空いた道路でも安全運転。余りのゆったり運転のため後ろのからクラクションを鳴らされる事も。私自身このゆったり感を日常に持ち込めたたら良いと思いながら今日も寝床に。毎日が慌ただし過ぎるので、寝つきが悪いのなんのって。
テリー伊藤(演出家)
1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ」
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry
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