NO YOUTH NO JAPAN 代表 能條 桃子 

「どうせ無駄」よりも「ちょっとやってみるか」が面白い

NO YOUTH NO JAPAN 代表 能條 桃子 (のうじょう ももこ)

■プロフィール
1998年生まれ。慶應義塾大学院経済学研究科修士卒。2019年、若者の投票率が80%を超えるデンマークに留学し、若い世代の政治参加を促進するNO YOUTH NO JAPANを設立。Instagramで選挙や政治、社会の発信活動をはじめ、若者が声を届け声が響く社会を目指して、アドボカシー活動、自治体・企業・シンクタンクとの協働を展開中。

2019年のデンマーク留学中に若者の政治に対する意欲と向上心に感化され、2019年にNO YOUTH NO JAPANを設立した能條桃子さん。若者たちの声を世間に届け、その声が響く社会となるよう日々奮闘する。そんな能條さんに、ご自身の経歴や学生へのメッセージを伺った。

■スキー、インターン、選挙と共に過ごした大学時代

大学では1年からスキーサークルに入り、季節関係なくずっと滑っていました。でも、サークルの参加費が年間100万円ほどかかるのが大変で、ずっとこのサークルを続けていくのは難しいと判断し、スキーは程々に。大学2年生の春からは、ベンチャー企業でインターンを始めました。5人程度の小さな会社だったのでいろいろな経験をすることができました。当時の経験は、今のビジネスの基礎や活動のベースになっています。大学2年生の秋には、インターンと同時平行で選挙の手伝いをしました。その中で印象的だったのは、若者ではなく高齢者の政治参加率が高いこと。高齢者の方がビラを受け取ってくれたり、イベントを開いたら高齢者ばかり来てくれたり。次第に、若い人が政治に参加するようにならないと変わらないなと思うようになり、日本の政治について問題意識を持つようになりました。

■大きく意識が変わったデンマーク留学

意識が変わった1番の理由は、デンマークへの留学です。留学先としてデンマークを選んだのは、この国の若い世代の投票率が非常に高いからこそ。その中で、フォルケホイスコーレ(国民高等学校)に行きました。その学校は、入学試験も成績表もないし、資格が取れるわけでもありません。でも、デンマークでは、大学に行く人であっても、高校卒業した後、大学に行くまで大体2年ほど空けるのが一般的です。その間に、フォルケホイスコーレに行って、今後の人生についてじっくり決めてから進学する人も少なくありません。こうしたデンマークでの留学の経験が、自身の考え方の基礎になりました。

■まず、若者に求めることは「投票に行くこと」

私と同世代の人に強くお願いしたいのは、投票に行くということ。現在の自分の生活や今の日本が素晴らしくて、日本は問題のない国だと思っている人はいないと思います。だからこそ、「自分が動いたら変わるかも」と思う人が増えたらいいなと思いながら活動しています。どんなに偉い人に投票に行けと言われても、あまり心に響かない。だからこそ、私たち同年代が同じ目線で話して影響力を広げるために、わかりやすい情報を提供するべく、NO YOUTH NO JAPANを作りました。
この団体は、若い世代の政治参加を促進する団体で、メディアチーム・アドボカシーチーム・シンクタンクチームに分かれて活動しています。インスタグラムやノートの運営、被選挙権年齢の引き下げを実現するための取り組み、地方自治体から受託した活動、政治の意識調査や政策定例などを行っています。
最初のきっかけは、インスタグラムです。このアカウント作成当初は、2週間限定のつもりでした。でも、開設してから2週間でフォロワーが1万5000人になったことが続ける最初のモチベーションになり、現在も続けています。当初は、わずか5名程度でスタートしましたが、現在は参加者が増えて、60人くらいにまで拡大しています。割合は、大学生と会社員が半分ずつ程です。インスタグラムを見て入ってくれる人がほとんどですが、社会問題を通じて政治に関心を持ち、団体に入る人もいます。

■活動での大変だったエピソード

若い女性が前に立って発信することへの反発は、少なからずあります。以前、友人と署名活動をした時も、私のXの投稿に批判の声がたくさん書かれていましたね。同時に応援してくださる声もたくさんあったので続けられましたが、声を上げる人を叩きたいというカルチャーが日本には根強いなと感じました。私たちは政治参加を促進するために活動していますが、決して政治オタクを増やしたいわけではありません。生活している中でおかしいと思うことは政治で変えられること、「どうせ無駄」ではなく、「何かやってみるか」って思う人が増えるようなことをしたいなと思っているだけですから。

■NO YOUTH NO JAPANの今後の展望

短期的な目標は、被選挙権年齢の引き下げを実現することです。デンマークで同い年の子が選挙に出ているのを見た時、政治をより近いものに感じるようになりました。自分が実際に立候補しなかったとしても、同年代でそういう人がいるということを知るだけで政治へのハードルが低く感じられるんですね。
また、長期的な目標は、NO YOUTH NO JAPANの世代交代を実現させることです。今は共同代表を担っているのですが、このままずっと続くように世代交代ができる団体にしなきゃいけないと思っています。団体を残すことが最終的な目標ではないのですが、そういう団体がないからこそ、若い世代の声が社会に届きづらいと感じます。私はデンマークの留学生に日本には良い政治家がいないと話をした時、「良い政治家がないってことは、良い国民がいないってことじゃない」と言われたんです。良い政治家を育てるには、政治に関わる人を増やすべきだと思います。その中で投票に行くことやアクションすることも含め、一人一つずつだけではなく、団体単位などの束の声として届くようにしたいです。

■学生へメッセージ

自分の感情や感性を大事にしてほしいです。何かをしようとしても、社会で良いとされていることへ引きずられやすいし、嫌なことを我慢するほど何が嫌だとかわからなくなっていくと思うんですよね。いきなり活動は始められなかったとしても、その時の気持ちはなんか大事にしてほしいなと思いますね。人間は機械じゃないから、働く時にパフォーマンスが高いことを求められたとして、失敗したり上手くいかなったりしても、それでいいような気がしていています。その中で声を上げる余裕がある人は何かやってみたり、ちょっとでも言ってみたり、団体に参加してみたりしてくれたらいいなと思っています。

学生新聞オンライン2024年10月18日取材 昭和女子大学 3年 竜澤亜依

東洋大学2年 越山凛乃/国際基督教大学2年 丸山実友/早稲田大学4年 西村夏/昭和女子大学3年 竜澤亜依

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