アリナミン製薬株式会社 代表取締役社長/CEO 森澤 篤
消費者の視点に寄り添い、笑顔と健康を広げるリーダーシップ

アリナミン製薬株式会社 代表取締役社長/CEO 森澤 篤(もりさわ あつし)
■プロフィール
京都大学工学部建築学科卒業。南カリフォルニア大学にて経営学修士(MBA)を取得。株式会社リクルートを経て、1994年にボストンコンサルティンググループへ入社。パートナー&マネージング・ディレクターを歴任。その後、Alix Partnersを経て、マースジャパンリミテッド社長、マースグローバルペットニュートリション チーフカスタマーオフィサーを務める。2019年より工機ホールディングス株式会社の代表取締役社長執行役員兼CEOを務め、2022年6月にアリナミン製薬株式会社 代表取締役社長COOに就任。2023年7月より現職。
「明日の元気を変えていく」というコーポレートメッセージのもと、消費者の健康と活力を支えるアリナミン製薬。その舵を取る森澤篤氏は、建築学、コンサルティング、食品、機械、医薬品と多岐にわたる業界経験を経て、社会に貢献する製品づくりに情熱を注ぐ。その豊富な経験と鋭い洞察力をもとに、消費者の「明日の元気」をどのように創造しているのか。そのリーダーシップの真髄に迫る。
■幅広いキャリアが築いたビジネス視点
高校時代からラグビーに打ち込み、大学でも関西大学Aリーグでプレーしました。当時は競技に熱中するあまり、建築学の面白さに気づいたのは随分後のことでした。その後、次第に「自ら全体を設計し、形にする」という建築の魅力に惹かれ、大学院進学を決意しました。幼少期からものづくりに興味を持ち、建築や航空工学に関心を抱いていた私にとって、建築は創造性と論理性を融合させる最適な分野でした。
リクルートに入社後は、不動産開発の仕事を担当していましたが、同社の制度を利用して南カリフォルニア大学でMBAを取得。この経験が大きな転機となり、ビジネスの構造や消費者行動に対する洞察力を養いました。MBA修了後はボストンコンサルティンググループへ転職し、論理的思考と総合的視点を駆使しながら、コンサルタントとしてのキャリアを積みました。
■消費者視点で成長を促す経営哲学
アリナミン製薬との縁は、株主からの打診がきっかけでした。特に魅力を感じたのは、医薬品としての強みを活かし、消費者視点を取り入れながらビジネスを成長させる挑戦ができる点です。これまで培ってきたマーケティング、営業戦略、製品開発の知見を活かし、市販薬市場に新たな価値を生み出せると確信しました。アリナミンは誰もが知るブランドであり、そのリーディングブランドを本格的に伸ばす挑戦はやりがいがあります。特に、「この会社が世の中に存在する意味」を問い直して、「社会にどう貢献できるのか」を考えることを重視しています。製品を通じて、人々が元気を取り戻し、生活がより豊かになることを目指しています。私も驚いたことですが、アリナミン製薬では、お客様相談室に毎日大変多くの感謝の声が寄せられています。これが、私の仕事への大きなモチベーションになっています。例えば、膝の痛みで杖が必要だった80代の方が、製品を試して3週間後には杖が不要になったと喜びの声を届けてくれました。また、首の痛みで夜も眠れなかった方が痛みから解放され、「人生が明るくなった」と話してくれることもあります。このような生の声をいただくと、私たちの製品が本当に役に立っていると実感します。
アリナミンの認知度は非常に高く、約85%の方が名前を知っていますが、実際の利用者は同程度のブランド認知度を持つ一般消費財に比べると比較的限られます。そこで現在では、試しに一度使ってもらえる機会を増やすということに注力しています。例えば、大容量の商品だけでなく、1000円程度の「トライアルサイズ」をドラッグストアの目立つ場所に配置するなど、購入しやすい環境を整えました。この結果、新規ユーザーの獲得が加速しユーザー層の大幅な拡大が実現できています。また、製品のパッケージと広告戦略もシンプルにしました。「全身のだる重疲れには赤のアリナミン」「目・肩・腰の疲れには銀のアリナミン」「疲れが痛みにまで来たら青のアリナミン」というように、視覚的に分かりやすく伝えることで、消費者に覚えてもらいやすくしています。
■社会課題を見据えた研究開発
日本人の睡眠時間は主要国の中で最も短く、特に女性の多くが睡眠の質に悩んでいます。この社会課題に向き合い、筑波大学の柳沢教授と共同研究を進め、睡眠の質を改善しつつ疲労回復をサポートする新製品の開発に取り組んでいます。これにより、アリナミンブランドの枠を超え、コンシューマーヘルスケア領域における日本のリーディングカンパニーを目指しています。
私が共に働きたいと考えているのは、「日本を元気にしたい」という熱意を持ち、果敢に挑戦できる人材です。アリナミン製薬の使命は単なる製品販売ではなく、消費者の悩みを解決し、社会に価値を提供することにあります。そのため、すべての業務において「お客様に最大の価値を提供するにはどうすべきか」という視点を持つことが不可欠です。
■大学生へのメッセージ
今の大学生は非常に真面目で、多くのことを深く考えていると感じます。「失われた数十年」と称される時代を経て、日本の成長力に疑問を抱く人もいるかもしれません。しかし、日本にはまだ大きな可能性があり、皆さんには世界を舞台に活躍できる力が備わっています。自分の可能性を信じ、挑戦を恐れずに進んでください。皆さん一人ひとりの挑戦が、未来の社会をより良いものへと導いていくと信じています。
学生新聞オンライン2024年11月18日取材 日本大学4年 鈴木準希

No comments yet.