Anthropic Japan合同会社 公共事業責任者 七尾健太郎

AIにも人にも「わからない」と言える強さを

Anthropic Japan合同会社 公共事業責任者 七尾健太郎 (ななおけんたろう)

■プロフィール
Anthropic Japan合同会社 公共事業責任者。IT・デジタル業界で約20年のキャリアを持ち、国内外のさまざまな顧客支援に従事。現在は中央省庁、地方自治体、大学、研究機関などを担当し、生成AI「Claude」の活用推進や技術支援を行う。AIの安全性や社会実装に関心を持ち、公共分野での活用拡大に取り組んでいる。

ITやデジタル業界で約20年にわたるキャリアを積み、倫理観のある最先端AIが日本に展開される初期段階に携わりたいという想いから、生成AI「Claude」などを展開するAnthropic Japanに入社した七尾健太郎さん。公共事業責任者として中央省庁や自治体、大学などの公的機関・教育機関に直接向き合う七尾さんに入社の決め手や事業内容、AIとの向き合い方などを伺いました。

私はこれまで20年ほど、ITやデジタルの分野でキャリアを積んできました。その中でさまざまなお客様と接し、海外に駐在する機会もありましたが、日本にITやデジタルの良さをそのまま適用するのは難しいと感じることが度々ありました。しかし、生成AI、特にClaudeを使ってみて感じたのは、一見アナログなやり方も受け入れてくれるということでした。例えばデジタル化では、紙ではなく、ウェブ入力が負担になる方もいるため、全員が一斉にデジタルへ移行するのは現実的ではありませんでした。生成AIなら、紙に書いてもらったものをそのまま読み取ることができます。最初からデジタルを使いこなす方にも、段階的に移行したい方にも優しい仕組みがあります。これが、生成AIに惹かれたきっかけです。そうした中で、Anthropic社と仕事をする機会があり、その縁で入社を志望しました。

■倫理観のあるAIの魅力

私が入社を決めた1番の理由は、倫理観のある最先端のAIが日本に展開される初期段階に関わってみたいと思ったことです。この会社が大切にしているのは「Claudeの憲法(Claude’s Constitution)」です。これは、Claudeにどのような価値観を持ち、どう考えて行動してほしいかを記した文書で、Claudeのトレーニングにも使われています。例えば、プライバシーの保護について。病院が「患者の情報を使って勉強をしたい」という場合、Claudeでは「個人情報を匿名化した状態で分析できるデータをつくりましょう」と提案できます。このように、プライバシーを守りながら成果も達成することを意識しているのです。細かなルールを決めて従わせるのではなく、大切にしたい価値観とその理由を示し、それをもとにClaude自身が状況に応じて判断する。こうした考え方に、大きな魅力を感じています。

■お客様をサポートする仕事

私たちは、企業や行政、個人の皆さんにClaudeを使っていただき、その利用料をいただくことで事業を成り立たせています。Claudeには「Haiku」「Sonnet」「Opus」「Fable」など複数のモデルがあり、性能や料金、回答速度に応じて選べるようになっています。会社は2021年にサンフランシスコで創業され、元OpenAIにいた7名の創業者が倫理観や安全性を大事にしたAIが必要だという想いで立ち上げました。その中で私は、公共事業責任者として、中央省庁や地方自治体、大学、塾、研究機関など公的機関、教育関係のお客様を担当し、Claudeの導入や活用の支援を行っています。
やりがいを感じるのは、行政のシステムなど皆さんの生活を支える仕組みに使っていただけた時です。公共部門のお客様は忙しく、また、プロンプトエンジニアリングが必要だった時の記憶から、生成AIは難しいものだというイメージも残っており、自分から使ってみることを躊躇する方もいらっしゃいます。そこで、体験会やワークショップを開き、日常的な言葉でClaudeに指示ができることと、ファイルの整理のような身近な作業から便利さを実感していただくようにしています。そこで、最初のハードルを超えたお客様は、次々と「こう使えばいいのではないか」というアイデアが出てくるようになります。
印象的だったのは、ある自治体で、法律改正のたびに条例に改正が必要ないかチェックしなければならず、「条ずれチェック(法改正に合わせてその参照関係にある条例の条番号などのずれを確認・修正する作業)」の確認作業に担当の方が日々多くの時間をかけているという話です。同じような課題を抱える自治体で同じことが起きているのだとすれば、1つの自治体で作った仕組みをみんなで共有することで、多くの職員の方の負担を減らせるのではないかと思います。こうした具体的な発見から一緒に学び、仕組みを作ることができることも、この仕事の面白さの1つです。

■人とAIが共存する未来へ

日本は高齢化が進み、2040年には高齢化率が約35%になるとも言われています。行政職員数の減少も見込まれる一方で、業務負担は増えていくと言われている中、人と接しなければならない業務や、人間が最終確認するべき業務は日中に人がして、事務作業は夜間にAIエージェントに任せ、翌朝人が結果を確認するだけで済む。そうした時間の役割分担ができれば、人とAIはうまく共存していけるのではないでしょうか。行政の仕事は一人一人の生活に直結しているからこそ、こうした工夫の積み重ねが社会全体を支えることになると感じています。今後は、こうしたClaudeの活用事例をお客様同士が共有し合える環境を作っていきたいです。また、公共領域を超えて、まだ治療法のない病気への創薬など、日本の社会がより幸福になっていくための取り組みの手伝いをしていきたいと考えています。

■メッセージ

大学生の皆さんに伝えたいことは3つあります。1つは自信を持ってくださいということです。SNSなどが発達してきて情報が多い時代だからこそ、悩んでいる方も多いと思います。自分が好きだと思うこと、嬉しいと感じることを大切にして学び、それを信じて突き進んでみてください。もしその中に、Claudeを使ってみたいという気持ちがあればどんどん使ってみていただけたらと思います。
もう1つは、違いを楽しんでくださいということです。国や文化、言語の違いだけではなく、人はそれぞれ違って当たり前です。その違いを楽しみながら、自分が本当は何が好きなのかを探していってもらいたいです。Claudeはきっと良い相談相手になってくれると思います。
そして最後に、わからないことを「わからない」と言える力を大切にしてください。これは、私がAIとの向き合い方としてお客様にもお伝えしていることですが、生成AIの回答がイメージに合わなかったり把握しにくかったら、正直に「この回答わからなかったです」と生成AIに伝えてみてください。「それではこういう絵と表にしてみたのですが、いかがでしょう?動画にしましょうか?」などと提案がきて、生成AIの周辺技術が自然と使われていきます。このように、「わからない」と伝えられる人こそ、結果的に生成AIを使いこなしていきます。それは人間関係も同じで、「わからない」と言える人には自然と仲間が集まってきてくれます。生成AI活用の第一歩が思いつかない方へのおすすめの使い方は、自分のスケジュールをスクリーンショットでもいいので読み込ませてClaudeに任せられるところを相談してみると面白いと思います。ぜひ、学生のうちから、そういった力を練習しておいていただけたらと思います。

学生新聞オンライン2026年9月18日取材 武蔵野大学4年 吉松明優奈

津田塾大学 4年 山下さくら/武蔵野大学4年 吉松明優奈/東京女子大学3年 浮田梨紗

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