生活協同組合コープみらい 代表理事理事長 熊﨑伸

組合員の声とともに、一人ひとりの大切な暮らしへ

生活協同組合コープみらい 代表理事理事長 熊﨑伸 (くまざきしん)

■プロフィール
千葉県出身。1984年船橋市民生協(旧ちばコープ、現コープみらい)入職。ちばコープ専務理事、コープみらい専務理事(コープデリ連合会専務理事を兼務)を経て、2023年から現職(同・理事長を兼務)。コープみらいは理念とビジョンをともにするコープデリグループの中核生協として、事業インフラを支えるコープデリ連合会との一体運営を推進している。

街を走るトラックに描かれた、愛らしいキャラクター「ほぺたん」でも知られる生活協同組合コープみらい。宅配や店舗事業をはじめ、暮らしに関わる幅広い事業を展開している。今回、代表理事理事長である熊﨑さんに、コープみらいの事業や強み、今後の展望、大学生へのメッセージを伺った。

高校ではサッカー部に所属し、サッカー一筋で取り組んでいました。数学が好きだったこともあって、大学では会計学研究部に入り、会計学を学んでいました。その後、会計事務所で働き始めたのですが、その事務所の先生が生活協同組合(生協)の顧問をしていたことがきっかけで、生協の存在を知りました。機会があって、実際に配送トラックに乗り、組合員さんへの配達に一日同行することになりました。そこで驚いたのが、職員と組合員さんとの距離の近さです。「こんにちは」からはじまり、お互いのことをよく知っている。何より印象に残ったのは、商品を届けたときに「ありがとう」と言ってもらえることでした。お互いに笑顔になれる仕事ができたらいいなと思い、その日の配達を終えて戻ってきたときには、「ここで働かせてください」とお願いしていました。
仕事をする上で役立ったのが、高校時代にしていたサッカー部での経験です。サッカーでは、味方がプレーしやすい位置にパスを出すことが大切ですが、それは仕事も同じだと思っています。自分の仕事の先には必ず次に仕事をする人がいる。その人が仕事をしやすいように仕上げて渡すことを、今でも大事にしています。
入職後は、最初の2~3年間、配達を担当しました。その後、経理や人事、共済、店舗の店長、商品や物流など、さまざまな仕事を経験して、今に至ります。特に印象に残っているのが共済です。みんなでお金を出し合い、誰かに何かがあったときに支え合う共同救済の仕組みで、「お互いに助け合う」という生協の原点を強く感じました。

■390万人もの組合員が支えるコープみらい

コープみらいは、2013年に東京都、千葉県、埼玉県にあった3つ生協が合併して誕生しました。現在は約390万人の組合員がいます。
生協は、事業者としての一面と消費者団体としての一面の両方を持っていて、それが最大の強みだと思っています。組合員さんは、商品やサービスについて、ちょっとしたことでも声を届けてくれるのですが、その声が次の改善につながっていきます。組合員同士のつながりを生かせることも、生協ならではの強みです。
現在、コープみらいの事業の中心は宅配事業で、事業高の約7割を占めています。もう一つの柱が店舗事業で、東京都、千葉県、埼玉県の3都県に124店舗を展開しています。このほかにも、福祉事業、サービス事業、共済事業など、幅広い事業を行っています。福祉事業では、訪問介護をはじめ、デイサービスやサービス付き高齢者向け住宅などを展開しています。また、サービス事業では、チケットの取り扱いのほか、戸建て住宅の建築やリフォームといったハウジング事業、葬儀など、暮らしに関わるさまざまなサービスを提供しています。

■商品と人のつながりで暮らしに貢献 

私たちは、産直とコープ商品を大切にしています。産直とは、単に産地から直接商品を届けるということではなく、「産地と直接つながる」というニュアンスの方が近いです。生産者と組合員さんが交流し、食べ手の思いを作り手に伝えたり、生産者の苦労や思いを組合員さんが知ったりする。その関係性が重要です。
千葉県の産直「九重栗かぼちゃ」を販売した際には、職員や組合員さんが産地を訪れ、生産者の苦労や工夫を学びました。職員自らニュースを作って魅力を組合員さん伝えたところ、1週間で約5万個が売れました。産地と一緒に商品を届けられることも、生協の特徴です。
コープ商品は4000品目を超え、全国の生協が一緒になってつくっています。中でも「コープクオリティ」シリーズは、組合員さんがモニターとして商品を評価し、モニターの8割以上が「おいしい」という基準を超えなければ発売されません。牛乳パックの開け口についても、組合員さんの声を受け、開ける側をわかりやすくする工夫をしました。組合員さんと一緒に改善していくことが、コープ商品の強みです。
また、この仕事のやりがいは、「地域を豊かにすることができる」点にもあります。1万5000人の働く仲間が汗と知恵を結集して生み出した利益は、生協のためではなく、組合員さんと地域社会の未来のためにも還元されます。地域を豊かにしているという誇りがあるからこそ、私たちは懸命に働ける。その想いが結実した時、本当の「ありがとう!」に出会えるのだと思っています。

■子どもと家族を支える仕組み

商品だけでなく、子育て支援にも力を入れています。「はじめてばこ」は生まれた赤ちゃんを地域全体で祝福したいという想いから、地域の企業と協力し、プレゼントを無料で届ける取り組みです。また、COOP共済「お誕生前申し込み」では、妊娠22週目未満に申し込むことで、生まれたあとの健康状態にかかわらず保障を受けられる仕組みが設けられました。
さらに、ひとり親家庭の高校生を対象とした返済不要の奨学金制度もあります。今年度、約1700人に年額12万円を給付しており、その原資は、3万人を超える組合員のサポーターから毎月寄せられる募金で賄われています。

■組合員の暮らしに役立つ存在に

コープみらいでは現在、「ビジョン2035」を掲げています。若手職員31人が約1年間にわたって話し合い、職員や組合員へのアンケートも行いながらつくりました。そこには、「すべての人の大切な暮らしに向き合い、それぞれの暮らしに合った生協でありたい」という思いが込められています。それぞれの人生や生き方に対して、生協が少しでも役立つ存在でありたいと考えています。
例えば、商品開発ではミールキットや電子レンジで温めるだけで食べられる作り置き惣菜など、短時間で調理できる商品がよく利用されています。今、その人が何に困っているのか、それをどのような商品やサービスがあれば解決できるのかを考え続けることが大切です。若い世代だけでなく、高齢の方からも「これなら家族のために自分でもつくれる」という声をいただくことがあります。年代や立場にかかわらず、さまざまな人の暮らしに役立つ商品を作っていくことが、私たちの目指す姿だと思います。

■大学生へのメッセージ

私は、生協の職員に、組合員さんから「ありがとう」と言っていただけることへの感謝の気持ちを持って接してほしいと、普段から話しています。
それは学生の皆さんにも同じです。たくさんの人と関わる中で、意見がぶつかることもあるかもしれませんし、一緒に喜ぶこともたくさんあると思います。その中で、出会いや人との関係に感謝する気持ちを持ちながら、積極的にさまざまな人と接してほしいと思います。

学生新聞オンライン2026年8月26日取材 東京薬科大学4年 庄司春菜

早稲田大学3年 中澤京平/東京薬科大学4年 庄司春菜/日本女子大学1年 大池絵万里/日本大学2年 原田達司/成城大学2年 小澤実桜/情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/東京家政大学3年 篠田陽菜乃

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