アン・ハサウェイ 成長するために自分を傷つける必要はない

俳優 アン・ハサウェイ(Anne Hathaway)
■プロフィール
1982年生まれ、アメリカ・ニューヨーク州出身。名門のヴァッサー大学で英文学を学んだ後、ニューヨーク大学に転籍。1999年、TVドラマ『Get Real』で俳優活動を始める。2001年、『プリティ・プリンセス』で映画初主演し、全米で1億ドルを超える大ヒットとなる。2006年、メリル・ストリープと共演した『プラダを着た悪魔』が大ヒットし、世界的な知名度を獲得。2008年、『レイチェルの結婚』でアカデミー賞主演女優賞に初ノミネート。2012年、『レ・ミゼラブル』で同賞助演女優賞を受賞。2026年、20年ぶりの続編『プラダを着た悪魔2』が大きな話題を集め、秋には『ヴェリティ/真実』が公開される。
アン・ハサウェイの最近の話題作は『プラダを着た悪魔2』(2026年5月公開)だ。2006年、メリル・ストリープと共演した『プラダを着た悪魔』が大ヒットしたが、20年ぶりの続編公開となり、大きな話題を集めた。また、次回作はこの秋日本公開のサスペンス『ヴェリティ/真実』が控え、映画好きには目が離せない。
■幼い頃から憧れていた女優の道へ
女優への憧れは、3歳の頃に芽生えました。舞台女優だった母の公演を観た帰り道、私は父に「舞台に子どもたちがいた。私もその一人でありたい」と話していたそうです。
その思いを決定的にしたのが、7〜8歳のころに観た母の出演作『レ・ミゼラブル』でした。母が演じる人物が命を落とす場面で、私は客席で声を上げて泣きました。同時に、演技や音楽、物語が人の感情を大きく揺さぶる力に衝撃を受け、「人の心を動かす側に立ちたい」と強く思うようになりました。
子役として活動したいと何度も両親に頼みましたが、認めてもらえませんでした。当時は「どうして私だけ駄目なのだろう」と納得できませんでしたが、今振り返ると、学校に通い、友人と過ごし、演技を仕事にする前に“純粋にお芝居を好きでいられる時間”を持てたことに感謝しています。
高校時代、その「好き」は少しずつ形になっていきました。学校や地域の舞台に出演する一方、演劇学校バロウ・グループに10代として初めて受け入れられ、本格的に演技を学び始めます。そこで学んだのは、セリフの言い方を決め込まず、相手の言葉を聴き、自然に反応することでした。演技とは「聴くことでもある」という発見は、今も大切な土台です。大学では英文学を中心に学び、女性学や政治学にも関心を広げました。人物が生きた時代や社会を考える習慣は、現在の役作りにもつながっています。
その後、テレビドラマ『Get Real』(1999年)への出演を経て、17歳でディズニー映画『プリティ・プリンセス』(2001年)と出会います。別の映画の撮影へ向かう途中、26時間の乗り継ぎ時間があり、「この時間に何かオーディションを受けられない?」と尋ねたことから参加した作品でした。オーディションでは緊張のあまり椅子から落ちてしまい、その姿が役柄と重なったことも決め手となり、主演に選ばれました。
作品の成功によって「プリンセス」「明るく純真な少女」というイメージが付くようになります。そこでそのイメージを超えたいと考え、『ブロークバック・マウンテン』(2005年)、『プラダを着た悪魔』(2006年)、『レイチェルの結婚』(2008年)など、イメージとは異なる作品に挑戦し、役の幅を広げました。人からどう見られるか、嫌われないかを恐れずに演じられるようになったのは、この挑戦の過程があったからです。そして『レ・ミゼラブル』(2012年)では、幼い頃に母が演じた役を、今度は私自身が演じました。学生時代から積み重ねてきた経験がこの作品へつながっているように感じ、女優を夢見るきっかけとなった作品に長い時間をかけて戻ってきたような、特別な経験でした。
■準備を重ね現場では自由に演技
役に向き合ううえで、事前の準備をとても大切にしています。脚本の一行一行に疑問を投げかけ、人物の背景を調べ、撮影前にできることはすべて行います。ただ、本番では準備した演技に固執しません。共演者の言葉やその場で生まれる感情を受け取り、その瞬間にしか生まれないものを大切にしています。
また、役を演じるときには、その人物を善悪で判断せず、一人の人間として敬意と思いやりをもって理解するように心がけています。なぜその行動に至ったのか、何を信じ、何を望んでいるのかを考え、役に寄り添い、共感する。異なる人生や価値観に触れ、人間への理解を深められるのは、この仕事の大きな魅力です。
どれほど経験を重ねても、学ぶことがなくなったとは思いたくありません。もし現場で「もう学ぶべきことは何もない」と感じる日が来たなら、それは別の仕事をするときだと思っています。キャリア初期から作品や役、監督との出会いを通してスポンジのように吸収することを意識してきました。今も成長の機会はどこにでもあると考えています。
そして何よりうれしいのは、仲間と作った作品が公開された瞬間だけで終わらず、誰かの人生の一部として残っていくことです。誰かが安らぎを求めるときに、自分の出演作がそばにいられることを、とても光栄に思っています。
■若い人へ、自分を否定せず人生を愛する
若いころの私は失敗を恐れ、成長するには自分を厳しく批判し続けなければならないと思っていました。
しかし、自己批判を努力の原動力にするやり方には限界があります。今は、向上心を持ちながらも、自分をいたわりながら成長する方法を学んでいます。他人にどう思われるか、正しくできたかにとらわれず、自分の考えや感情に素直でいられるか、自分自身が楽しめているかを大切にするようになりました。不必要な否定に時間を費やすより、自分の人生にあるものへ目を向け、感謝しながら生きていきたいと思っています。
成長するために、自分を傷つける必要はありません。どうか自分を嫌わず、自分の人生を愛してあげてください。
学生新聞2026年10月号 構成:津田塾大学4年 石松果林
INFORMATION
全ての始まりは、人気作家《ヴェリティ》による“告白”だった─ それはただの妄想か、それとも… 衝撃の真実(ヴェリティ)が待ち受ける、禁断のミステリーサスペンス誕生!

原題:Verity
監督:マイケル・ショウォルター
原作:コリーン・フーヴァー「 ヴェリティ/真実」 二見書房刊(『ふたりで終わらせる』)
出演:アン・ハサウェイ、ダコタ・ジョンソン、ジョシュ・ハートネットほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
映画『ヴェリティ/真実』 11月6日(金)、全国の映画館にて公開
https://verity-shinjitsu.jp/


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