北原照久 好きなことを仕事にしようと思うなら、人の3~4倍はやれ!
<プロフィール>
北原照久(きたはらてるひさ)
株式会社トーイズ 代表取締役。1948年東京都生まれ。 青山学院大学を卒業。世界的なおもちゃコレクターの第一人者。 37歳で横浜山手に「ブリキのおもちゃ博物館」を開館。現在、全国7ヶ所でコレクションを常設展示している。 「開運!なんでも鑑定団」 (テレビ東京系)に鑑定士として出演するほか、CM、 全国各地での講演会、トークショー等でも活躍中。 「横浜ゴールドラッシュ」、 「夢の実現 ツキの10カ条」、 「夢はかなうきっとかなう」など著作も50冊以上出版している。 2007年にはベストジーニスト賞も受賞。
おもちゃ箱のような博物館
「おもちゃ箱に迷い込んだような感覚」とでもいうのだろうか。10畳ほどの小さな空間に、全国各地から集められたおもちゃ約3000点がぎっしりと所せましと並んでいる。「ブリキのおもちゃ博物館」は、瀟酒な洋館が建ち並ぶ、横浜は山手の一角に静かに佇んでいる。オープンが1986年というから、ちょうど今の大学生たちと同年代だ。館長はブリキのおもちゃコレクションの第一人者として、世界的にその名を知られている北原照久氏。
コレクター人生のきっかけ
高校時代に勉学に目覚め、勉学への期待に胸をふくらませ青山学院大学に入学したものの、当時は学園紛争の真っ只中。勉強をしたくても授業がない日々に憤った彼は、父親の後押しもありオーストリアヘスキー留学を決意。そこでホームステイ先の一家の生活に触れ、カルチャーショックを受けたという。「なんていうか。‘生活感’がないんだよね。リビングに花瓶や家族の写真が並べてあったりひいおばあちゃんの代から大事に使っているような古い銅の鍋が、置物みたいに壁に飾ってあったり。しかも料理はそれで作ってくれるんだよ。そういう生活を見たら、“僕も将来は自分の好きなものにばっかり囲まれた生活がしたい。って思うようになったんだよね」
ホームステイ先の人々の「物を大切にする生活」に感銘を受けたという北原氏。20歳で帰国した彼は、粗大ごみ置き場に捨てられていたゼンマイの柱時計を拾う。持ち帰って油を注と、柱時計は再び時を刻み始めた。何を隠そう、この柱時計が記念すべきコレクション第1号。その日から真空管ラジオやキャラクターグッズなど、様々なものを集め始めたのがコレクター人生の始まりだった。そして25歳のときから、本格的なブリキのおもちゃ蒐集を開始。趣味で集め始めたおもちゃのコレクションは急増し、今や全国数か所に博物館を構えても入りきらないほとだ。
北原流·夢の実現法
「僕が昔持っていた夢は『おもちゃの博物館』を建てること。30代でその夢は叶えたね。夢ってね、口にすると叶うんだよ。僕が今まで口にしてきたことは全部実現している。フォードのサンダーバードや海沿いの別荘、それに憧れの人だった加山雄三さんにも会ったでしょ。まだ実現していないのは吉永小百合さんに会うことぐらいかな。17歳のときから言ってるんだよ、これ(笑)」
北原氏いわく、夢を叶えるコツは、「楽しそうに、情熱的に、かつより具体的に語ること」。そして「絶対諦めないこと」だとか。「自分の夢を真剣に100人に語ってみたら、99人には「何馬鹿なこと言ってるんだ」って言われるけど、そのうち1人くらいは『それいいね』って賛成して応援してくれる。その1人の人が、自分の夢を助けてくれるかもしれないでしょ? だから僕は1万人に話したの。1万人に話せば、味方は100人になるからね!」
そして、北原さんは「好きなことを仕事にしたいと思うなら、何事も人の2~3倍はやるべき」と続ける。「夢はすぐに叶うもんじゃないんだから。僕だって実現させるのに10年以上かかっているものだってある。でも僕は諦めないからだから夢を叶えてこれたんだよ」
まだまだ続く「夢」
写真撮影の際に「撮影用に一番思い入れのあるおもちゃを選んでください」とお願いすると、「思い入れは全部あるからなあー」と笑う。大切そうにショーケースに並べられたひとつひとつのおもちゃに、北原氏の愛情が注がれている。そして今も変わらず、人々の笑顔を生み出し続けている。おもちゃにとって、これほど幸せなことはない。そんな北原氏の今後の展望は、現在保有している何十万点にも及ぶと言われているおもちゃやポスターなどのコレクションを1箇所に集め、すべてを一覧することができるパビリオンを作ることだという。
「100年後、僕の集めたおもちゃは絶対に後世の人々にとって重要な文化遺産になると思うんだよね。だって、これまでこんなにたくさん集めている人は絶対にいないでしょ(笑)」
北原氏は取材が終わってからも、「コレいいでしょ!」と嬉しそうにコレクションのひとつひとつについて説明してくれた。今度出会うことがあれば、そのときは満面の笑みで吉永小百合さんとの写真を見せてくれるのだろう。もちろん、「コレいいでしょー!」と。
学生新聞2007年12月号より
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