松任谷由実 目の前のことを一生懸命にクリアしていく。 若い時に培った姿勢は変わらない。

<プロフィール>
松任谷由実 (まつとうやゆみ)
東京都生まれ。1972年、多摩美術大学在学中、シングル 「返事はいらない」で旧姓荒井由実としてデビュー。1976年、松任谷正隆と結婚し、松任谷由実に。
代表作に「卒業写真」 「Hello,my friend」 「春よ、 来い」 他多数。
2007年、シリーズ最終章であり最高傑作となる 「SHANGRILA I」(全国6大都市 38 公演 30万人動員) を開催。 「SHANGRILA」史上最高と賞賛された。

「ユーミンって呼んでね」という一言で、和やかなムードから始まった取材。マリンルックが可愛らしくて、パワーと表現力の豊かさを肌で感じさせてくれる。常に第一線で輝き続ける彼女の秘訣とは。

どういうルートを通っても”表現”ということでは一緒

14歳でプロとして活動を開始、7歳の時にシングル『返事はいらない』で旧姓·荒井由実としてデビュー。一方で、 当時は多摩美術大学で日本画を専攻する大学1年生だった。

「絵か音楽の道に進むだろう」。幼い頃から、そう思っていた。普通にOLになって、結婚して、主婦になって…ということが、子どもの頃から全く想像できなかったんです」。

中学生になり洋楽に本格的に目覚めると、イギリスのロックバンドであるブロコル ハルムの影響を受け「自分で曲を作ってみたい」と強く思った。当時のイギリスのロックバンドは、驚くほどアートスクール出身の人が多い。「絵の学校へ行って音楽やるのってカッコイイ!」と感じた。だが、両親は音楽をやることに反対。「クラシックをやって音大に行くのならいいけれど、訳のわからない音楽はダメだと。ただ、絵だったら、家が染色業を営んでいたこともあり、日本画での進学は許されたんです」

学業と仕事の両立は大変だった。「週に1度は、作品の公表会というのがあって、月に1度は、教授も来られての教授会というものもありました。なかなか提出できないことも多かったのですが、友達の力を借りてなんとか単位を取る事はできました。先生から見たら、自分で書いてないことはバレバレでしょうけど (笑)」。ただ、この時に教授だった日本画家の加山又造先生の言葉が、後々 “表現者”である彼女の力になっている。

「当時から巨匠であった加山先生でしたが、さすが言うことが一違うなと感じました。『荒井さんはレコードを出したみたいだけど、それも”表現”だから。次の公表会では、そのレコードを持ってきなさい』と言ってくれたんです。自分の中で、どういうルートを通っても”表現”ということでは一緒なんだと感じました」

変化した自分が、また新しいモノに出会うことで、新しい境地に行ける作品を作る際は、”意識”して書くことと “無意識”で書くこと、どちらも平行している。「ただの街歩きもすごく好きです心の中に入っているものを引き出して、目にしたものを組み合わせて形にしています」と、ユーミンらしい “表現”で答えてくれる。「なるべく言葉に置き換えようとしています。そうすると自分でも覚えておけるから」。きれいな夕日を見たら誰かと共有したい、そうするともっと美しく感じる。「そんな気持ちが一番の“書きたいというモチべーション”に繋がっているんじゃないかな」。

常に変化を求めて作品を作り続ける。「未だにしょっちゅう納得するんです。言葉とも限らず人物とも限らず、本や映画……接するもの全てがちょっとずつ自分に変化を与えてくれています。そんな変化した自分が、また新しいモノに出会うことで、新しい境地に行くことができるんです」。

その都度”抜けた”から。このエネルギーで走り続けてきた

そんな彼女の、輝き続ける秘訣とは。「今まで色んな局面がありました。訳のわからないうちに売れてブームになって、そのまま20代ですぐに結婚。必死になって曲を作ってツアーをやってという時期と、少しだけ見晴らしがよくなって、冒険してみた時期もあります。まだ誰もチャレンジしていない演出にも作品にも常に挑戦してきました」。

ありとあらゆる作品を世に出してきた。もうこれ以上のことをしなくても、誰からも文句は言われない。「ただ、作らないと腐っちゃう。 生きてはいけない人間なんです」と言う。「ここまでやってこられたのは、その都度 “抜けた”から。この“抜けた”エネルギーで走り続けてきた。毎回ハードルを倒していたら、走れなかったかもしれない。今回のアルバムでは、特に抜け感。を感じられたんです。これが一つの転機になり、これからもっとやっていけるな、そう自信になりました」。音楽、そして学生時代を通して、わかったことがある「部活でも、単位を取ることでも、目の前にあることを一生懸命クリアすることじゃないかな。その時は、将来の自分と違うところにいるように思うかもしれない。でも、そうすることで価値観は変わっても、若い時に培った姿勢は変わらないもの。社会や今の自分がどんな位置にいようと、何事も前傾姿勢を保って取り組むことが大切だと思います」。

学生新聞2009年4月号より

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