株式会社アイスタイル 代表取締役社長兼CEO 吉松 徹郎
誰よりも考え抜く追究心と行動力が新しい価値を生む
プロフィール
吉松 徹郎(よしまつ てつろう)
東京理科大学基礎工学部卒業。
アクセンチュアを経て1999年アイスタイル設立。代表取締役社長就任。同年、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」オープン。
現在は自身の設立した公益社団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団を通じた芸術・スポーツ分野への助成支援もおこなう他、経済同友会幹事なども務め、活動の幅を広げている。
化粧品業界のプラットフォーム「@cosme」を運営する株式会社アイスタイル。インターネットビジネスの不確実性が高い時代であったにも関わらず、吉松社長には「@cosme」事業の成功に絶対的確信があった。その根底には物事を考え抜く強い追究心に加え、新しい変化を厭わず、行動し続ける姿勢があった。
■学生時代当時は受験が大変だった時代なので、推薦をもらえる東京理科大学に進学しました。生物工学科だったのですが、特にその分野に興味があったわけではなく、いかに授業以外のことを充実させるかに力を入れていましたね。部活でアメフトに打ち込んだり、カラオケやピザデリバリー、家庭教師や塾の講師など色々なアルバイトをしたりして、いかに今と違う環境に行くかを意識していました。
■数多くの内定をもらいながらも就職浪人を決断
生物工学科だったので、医薬系、食品業界を中心に受けるのですが、そこで働くために勉強してきたわけでもないのに、面接ではそういう自分を演じなければいけないことに矛盾を感じていました。そんな中でも、比較的多くの内定をもらえたのですが、そこから選ぶとなると、その会社の年収や資産、評判を基準に比較するしかないんですよね。でもそういう基準は違うなと感じて、「自分はどんな人とどういう仕事をしたいのか」を決めないまま就職活動をしてしまったことを反省しました。もう一度やり直そうと、もらった内定を全て辞退して、就職浪人をすることを決意しました。
外資のコンサルティング会社は当時マイナーな業界だったんですが、自分を成長させてくれるハードな環境だと感じ、最終的にアクセンチュアに就職することにしました。会社に入って1年目は自分の仕事のできなさや、周りとの能力の差に苦戦しましたね。2、3年経って、ようやく会社で評価されるくらいにはやっていけるなと思えるようになってきた頃、ちょうどインターネットが出始めてきました。インターネットで世の中どうなるのか、それをどう会社に活用していけばいいのか、それに対する自分の答えを40代、50代といった世代に説明するんですが、なかなか伝わらなくて、それにストレスを感じるようになりました。そんな時、@cosmeのビジネスモデルを思いつき、起業に踏み切ることになりました。
■考え抜くことで確信のもてるビジネスモデルへ
Amazonの株価が最低だったような時代で、最初はEコマースの市場で利益を出すのは難しいと感じていました。でもAmazonが出版業界から着手したように、本のような定価販売ができる商品を扱えば、日本でも十分利益が取れるのではないかと考え、たまたまその時のパートナーが化粧品会社で働いていたこともあり、化粧品に注目しました。当時は、今のように口コミサイトやデータベースを活用した事業はほとんどなかったんですが、事業計画書を色々な人に見せて、指摘をもらって、改善することを繰り返すことで、確信の持てるビジネスモデルにしていきました。人からの質問は無限ではなく、必ず飽和するので、それに全て答えられるようにしていくと、「このビジネスモデルについて日本で一番考え抜いたのは私だ!」と確信が持てる瞬間が来ます。そこまでやり切ってからスタートすることが大切ですね。
■本当の競合を見極め先手を打つ今はたくさん良いサービスを提供している口コミサイトはありますが、本当のライバルはそこではないと思っています。例えば雑誌だと、その領域でどのブランドが強いかを争っている間に、ウェブやYouTubeが台頭してきてしまうように、私たちの本当の競合はEコマースをしている楽天やAmazonかもしれないと考えたりします。これからの社会がどうなっていくだろうということを考えた上でアクションをとることを意識していますね。いかに先々新しいことをやっていくかが大切で、結果としてそれがネットとリアル店舗、両方に力を入れているという現状に繋がります。
■フラットな精神と意志を持ち合わせる人と働きたい会社が大きくなって、社員数が増えていくと一種のカオス状態になってしまうんですよね。ジオラマをいろんな人の手で広げていくような感覚なので、それぞれの担当場所できちんと意志を持って動いてくれる人が大切です。自分でこうしたい、学びたい、作りたいといった強い意志や、出来上がったものに対するこだわりを持てる人ですね。それはプライドではなく、誰かのためを思った利他的なこだわりであってほしいし、そういった意味では感度があって素直であることも大切です。偏見や先入観がないフラットな精神で、いろんなものを見聞きして吸収する姿勢がある人と働きたいですね。
■今後の夢コロナですべてがリセットされたと思うんですよね。生き方、考え方が大きく変わって、みんながスタートラインに戻ったような感覚がします。今まで通りだったら、将来を見据えて今できること、考えられることは固定化されていたと思いますが、先が見えない世界だと、20年、30年後にどんなことができるか、どんな新しい一歩があるのかを考えることができるのでワクワクしています。何年後こうなっていたいという明確なビジョンがあるわけではないですが、常に考えて行動し、社会に価値を出し続けられる自分でいたいというのはありますね。
■messageチャンスのある時代になったのではないかと思います。就職で苦しんでいる人もいると思いますが、この混乱の中、一旦就職しなくてもいいという選択肢が増えたことで新しいことに挑戦できる人もいるのではないでしょうか。所属することが大事ではなくて、自分で動ける環境を作ることが大事なので、たゆまず、見聞きをして、動き続けてほしいですね。
学生新聞WEB2020年12月3日取材
国際基督教大学 4年 鈴木菜桜
国際基督教大学4年鈴木菜桜 / 中京大学4年梶間直人 / 駒澤大学4年安齋英希 / 津田塾大学3年松本麗奈 / 明治学院大学3年菅井七海
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