大塚食品株式会社代表取締役社長 白石耕一

「おいしさ+α」にこだわり続け、健康の先にある幸せ・喜びに貢献する

大塚食品株式会社代表取締役社長 白石耕一(しらいしこういち)

■プロフィール

1968年福岡県生まれ。1990年大塚製薬株式会社入社。2005年、韓国東亜大塚株式会社マーケティング担当理事(出向)。2014年、大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部広島支店支店長。2017年、同事業部製品部長。2020年3月、大塚食品株式会社代表取締役社長に就任。

世界初のレトルト食品“ボンカレー”や大豆ミートを使用した“ゼロミート”など、常に食品業界にイノベーションを起こしてきた大塚食品。健康や環境など、「おいしさ+α」を追求し続ける姿勢はすばらしく、それをさらに極めようとする白石社長の展望を伺った。

 体育会で野球ばかりしていた学生時代でした。プロを目指していたのですが、結局、そこまでの実力はなく、大学3年生のときに就職を考え始めました。受けたのはものづくり企業ばかりですが、それはアイデアをすぐに形にできると思ったからです。それと平行して当時は獣医になりたいという思いもありました。動物行動学などは図書館に行って自分で勉強しました。そこで得た学びは今でも生きています。実は、人間も動物も行動の理由はほとんど変わりません。
 獣医になりたいと思って読んだ本は今でも鮮明に覚えています。いろいろなものに興味を持って、一生懸命それに向かっていました。そうして見聞を広げることで知識も深まり、話題も多くなっていきました。興味の湧いたことを、その根拠にたどり着くまで好奇心を持って深掘りしていく。そうやって表面的ではないインプットができれば、自然とアウトプットもできるようになっていきます。

■理不尽さは前向きに、失敗は深く掘り下げる

 1990年、大塚製薬に入社しました。大塚は身の回りにたくさんの製品が存在する企業なので、街で自社製品を持っている人を見かけるとすごく嬉しいものです。製品を通じて人々が喜んでくれる。そこに関われているということにとても満足感がありました。
 入社後は営業に明け暮れていましたが、中でも今の自分の考え方に影響を与えているのは韓国への出向経験です。言葉も文化も違う中で、同じ人間同士、共に仕事をしていく。そこにはさまざまなコミュニケーションの形がありました。言葉が通じないので、表情や仕草で相手の気持ちを読み取るしかなく、苦労しました。それ以来、人と話すときには言葉以上のものを感じ取れるようになりました。それと同時に、改めて「大切なのは人だ」と強く認識することができました。組織はやはり人です。人で作られるものです。
 そうした経験を経て、大塚食品に来ました。苦労はたくさんありましたが、常にポジティブに考え、理不尽なことがあってもこれはゲームなのだと思うようにしていました。失敗したときは周りのせいにせず、自分に原因があるのだと考えて、その理由を深く掘り下げる。そうすることで失敗を成長の糧にしてきました。

■「おいしさ+α」で必要とされる製品を

 食品会社なので、おいしく作るのは当たり前です。おいしさ以外にどんな良さがあるのかが大切で、われわれはその良さをきちんとした根拠に基づいて説明できる製品づくりをしています。
 弊社製品の原材料名は裏面を見ていただければわかると思いますが、添加物は極力使っていません。また、一般的なレトルト食品では事前に処理された冷凍野菜を使うことが多いのですが、ボンカレーは違います。生の国産野菜を使い、手作業で皮をむいたり、芽取りをするなどしています。それはお母さんの手作りの味をコンセプトに製造しており、より深く健康にこだわった製品づくりをしているからです。
 さらにこだわりは健康だけではありません。たとえば、ミネラルウォーターの「クリスタルガイザー」ですが、キャップはどうしてあのような薄い形をしているのかわかりますか?薄くすることでプラスチックの使用量が激減するからです。ビンやカンに比べ、プラスチックは環境への負荷が大きい。今後はペットボトル自体も再生樹脂に変えていこうとしています。おいしいのは食品企業として当たり前です。それ以上に、どのような+αの貢献ができるのかを常に考えています。
 われわれは生活者である皆様のお役に立ちたい。この製品がないと困る、必要だと言われたいと思っています。今は日本国内がメインですが、将来はアジア、さらに世界へと活躍の場を広げていきたいです。世界の人たちの健康にこのブランドを通して応えていきたいと思っております。そして社員みんなに幸せになってほしいですね。

■人間力のある人と一緒に働きたい

 一緒に働きたいと思うのは、まずは大塚食品を好きだと思ってくれる人ですね。私自身大塚の製品が好きで、日々自分で食べたり飲んだりしていますが、改良点などはそうやって製品と接する中で見えてくるものです。だから、会社を好きなことが一番なのです。それと同時に、コミュニケーション能力があり、考え方がポジティブな方。そのような方は、誰からも魅力的だなと感じてもらえると思います。

■message

 興味のあることは、その根拠にたどり着くまで深掘りしてほしいですね。勉強だけではなく、あらゆることに好奇心を持って、後悔しないように全力で取り組んでほしいと思います。学生時代はそれができる時間も環境もあります。音楽、読書、スポーツ観戦など何でもいいのでとにかくいろいろなものに触れて、興味が出たものは深掘りする。「なんで?」という視点で考えてみて、疑問点を追求していく。そういった経験や知識が心の引き出しを増やしていって、人間力につながっていくのだと思います。

学生新聞2021年4月号 慶應義塾大学1年 宮田峻輔

共立女子大学3年北之原真奈/明治大学2年山本真人/慶應義塾大学1年宮田峻輔

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