カルビー株式会社 マーケティング本部デジタルマーケティング担当マネージャー 関口洋一
デジタルならではのコミュニケーションを探る挑戦
■プロフィール
大学卒業後、SIerにて通信やウェブシステムの設計、構築に従事。その後ナビゲーションサービスの運営会社にて、大規模なデータベースや検索エンジン、音声操作UI等の開発をリード。2017年5月にカルビー株式会社に入社。事業開発本部にてアンテナショップ等のデジタル化を推進。2019年4月よりデジタルマーケティングを担当。
ポテトチップスの国内シェア7割を誇り、スナックフードのリーディングカンパニーであるカルビー。そのカルビーのマーケティング部門に在籍している関口さんに、デジタルマーケティングの役割やお菓子業界ならではの取り組み、消費者との関係性構築についてお話を伺った。
私は前職までずっとIT業界にいました。しかしIT、特にソフトウェアやサービスは有形のモノを作ることはできません。もっと人の本質に近いところで仕事をしたいと考えて、食品業界へ転職しました。なぜカルビーを選んだか?カルビーには新しいことにチャレンジできる風土があることが大きかったですね。
新しい商品やサービスを作ったりするには、なんといってもお客様に寄り添い、お客様を知ることが大切です。当社のお客様相談室にお寄せいただく声のなかから、商品開発につながることも少なくありません。
■デジタルの仕組みで何を実現するのか
当社はスナックフードを中心とした会社です。商品は店頭で実際に手に取って購買されるものですから、お客様との最大の接点は売り場です。そして商品のパッケージが重要な要素のひとつです。デジタルで単発的に広告を出すことによって、消費者の行動変容まで結びつけるのは相当難しいと考えていますし、お客様が望んでいるとも思えません。
デジタルマーケティングというと、広告の展開や検索順位という点に注目が集まりやすいのですが、われわれはそれだけを追い求めることはしません。
広告をするための手法ではなく、お客様のことをどのように知るのか、お客様にわれわれのメッセージをどう届けることでファンになってもらうか。お客様との距離を縮めるための仕組みに、デジタルの仕組みを使えないか、という考え方です。
■お客様をより知るためにアプリやSNSを活用
当社では、2020年9月にスマホアプリを公開しました。食べ終わった商品のパッケージを特定の方法で折り、写真撮影することで、ポイントがもらえる仕組みです。そのポイントを貯めて、工場見学などの体験賞品に応募できます。環境のことを考えながらお客様と一緒につくりあげていくアプリになっています。
そして購入した商品をお客様が登録するため、どのような商品を手に取られたかもわかるようになりました。従来、小売店までに留まっていたデータが、われわれメーカーも活用できるようになったのです。これは大きな一歩です。
■お客様への提案も大切な要素
カルビーにはロングセラーブランドの「ポテトチップス」や「サッポロポテト」、「かっぱえびせん」があります。どれも皆さんがご存じの商品だと思います。ご両親がお子さんのために購入するのは「かっぱえびせん」や「サッポロポテト」が多いと聞きます。一方で学生の皆さんがコンビニで手に取るのは何でしょうか。恐らくこの2つのブランドを選ぶ方は少ないのではないでしょうか。
子どものころから食べ慣れて親しんだスナックであるにも関わらず、いつの日か遠のいてしまう。でもまたライフステージが変わると戻ってきていただける。とても面白いブランドだと思います。
喫食タイミングや場所、シーンによって選ばれるお菓子は変わります。そのシーンとわれわれが提案する商品のイメージがうまくマッチして、お客様の記憶に残っているときに購買につながります。われわれがお客様を理解せずしてその提案ができるとは思えませんし、その理解のためにSNSも有用です。無理にブームを起こそうとしたりせず、また作り手の押し付けにならないようなコミュニケーションが理想です。
何よりもお客様に楽しんでいただきたいですし、運営するわれわれも楽しみたい。バランスが大事ですね。
■Message
社会では、ときに自分の希望とは異なるタスクに出会うこともあります。そのような場面でも、きちんと取り組むと、やりたい仕事に対峙した際に活用できる発想力を養うことができます。本当にやりたい仕事が出てきたときに活かせるよう、実力をためておく姿勢を大事にしてください。
また、大学生活ならではの経験や知識を蓄えましょう。何より考えること、気づくことが大切です。
学生新聞別冊2021年4月号 駒澤大学4年 安齋英希
この記事へのコメントはありません。