パナソニック株式会社 コンシューマーマーケティングジャパン本部 デジタル戦略担当 木田実

DX化で進化するお客様との接点

パナソニック株式会社 コンシューマーマーケティングジャパン本部 デジタル戦略担当 木田実(きだみのる)

■プロフィール

1992年新卒で松下電器産業株式会社(現 パナソニック株式会社)入社。
北海道地区営業、ネットワーク事業の企画開発部門を経て、2008年より国内家電商品のWEBマスターとして、デジタル顧客接点の改革に取り組む。
現在はB2C商品の国内向けデジタルマーケティング企画など組織内横断的な仕組みづくりを担当。消費生活アドバイザー。

日本を代表する企業、パナソニックにおいて、デジタル技術やデータを活用し、商品やサービスにとどまらず、自社の事業構造の変革までを視野に入れ、市場における優位性を追求する部署で活躍する木田さんに、各種メディアを通じた価値の創造について伺った。

私が担当しているのは主にBtoC向けの家電商品のウェブサイトです。「宣伝」は創業以来、当社で重要な位置付けとされています。パナソニックの創業者、松下幸之助はこういう言葉を残しました。「伝わらなければ存在しないのと同じ」。ある商品で世の中が便利になるならば、それを広く早くお伝えすることは社会に対する義務だということです。私たちの仕事の基本です。
当社の商品サイトは規模が大きく、各サイトの企画担当者に制作会社の方を加えると数百人が関わっています。この数百人に同じ価値観でサイト作りをしてもらうために新しいシステムを導入し、テンプレート方式を取り入れました。どのサイトを訪問しても基本的に同じ操作感、体験価値が得られます。例えばサポート情報のボタンは全ての商品サイトで同じ位置に置き、トラブルでお困りのお客様がパッと目につくように配慮しています。またこうした「型」の統一が、データの適切な発見、生成へとつながります。
お客様のサイト上の行動分析は、現在はページ単位で行いますが、次第にページ内の要素単位に分解するなど、細分化し活用しています。

■デジタルとパーソナライズ化の重要性
現在のお客様の各メディアの接触状況ですが、テレビの比重が下がる一方、スマートフォンの利用時間の伸びが著しく、メディア接触時間は増加しています。しかし投下できる宣伝コストには限界があるため、企画ごとの重要度を判断し、投資を適切に配分、設計していく必要があります。デジタルコミュニケーションが中核ですが、全部デジタルにするのではなく、リアル接点とセットで設計することも大切です。今は、以前のような大量のマス広告からシフトし、いかにお客様一人一人に「私だけの情報だ」と思っていただけるかが重要になりました。こうしたパーソナライズ化を含め、コミュニケーションはデジタルトランスフォーメーションを一番必要としている分野と言えるでしょう。

■組織の質を高め、お客様に最大の価値を提供
大量のデータと最新のシステムだけでは良い企画は生まれません。重要なことは「仮説」です。今日の気温が20度として、それが暖かいか寒いかを語るとき前日や平年など他の日と比較しますよね。気温の数字自体には暖かいとか寒いということを示す意味はないからです。同様に、データの数字に意味を持たせるためには何かとの比較が必要です。過去の事実や限られたデータから推定される比較対象が「仮説」です。「仮説」は思い付きでなく論理的に導き出す必要があります。担当者がデータをもとにした仮説構築のスキルを上げられるよう、デジタルマーケティングやデータ分析などの研修を行い、組織のDNAにしていくような取り組みを行っています。既にあるものは活かし発展させながら、新しいものも取り入れていくのは大変です。ゼロから構築する方が楽な部分もあるかもしれません。「パナソニックのウェブサイトが突然なくなってくれたら、理想的に作り直すのに」と思うことがありますね(笑)。今あるものを継続しながら新しいものに切り替えていく。その上で常にお客様に価値ある情報をお伝えし続けています。

■創業者による経営の極意「雨が降れば傘をさす」
当たり前のことを当たり前にやるのが経営の基本ということを、当社の創業者は「雨が降れば傘をさす」と表現しました。デジタルの世界では技術の進化に沿って否応なしにやるべきことが増えます︒それに向き合って対応し続ける。常に最新化されるデータからお客様を知ろうとし続ける。まさにその営みは『雨が降れば傘をさす』の繰り返しです。デジタル技術の進化に対応し、環境に合わせて変化し続けることが私たちにとってのデジタルトランスフォーメーションかもしれません。

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「本物を見る、実物に触れる」ということを大切にして欲しいですね︒身につけるものや文房具、時計など︑少し無理をしてでも良いものにすると自分の目も養われるし、振る舞いも変化します。また、ネットだけに頼らず、イベントや展示会、あるいは話題の現場に行って自分の五感で確かめることも大切ですね。そういう経験の蓄積が社会に出たときに自分の「柱」ともいえる判断基準になります。
(津田塾大学2年 宮田紋子)

駒澤大学4 年 如意太一/明治大学2 年 山本真人/共立女子大学3 年 北之原真奈/津田塾大学2 年 宮田紋子/武蔵大学4 年 飯岡樹生

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