和田庵 コロナ禍で苦しむ人々に希望を届けたい

俳優 和田庵 (わだいおり)

■プロフィール

2005年生まれ、東京都出身。
8歳から芸能活動をスタートさせ、映画「ミックス。」で俳優デビュー。
フジテレビ「隣の家族は青く見える」やHBOアジア「フォークロア:TATAMI」に出演し、注目を集める。
その後、語学力と人間力を高めるべくカナダへと留学、2020年夏に帰国。
趣味はスケートボード、俳優業の傍らスケートボードの技術も日々、邁進中。

次世代の気鋭の俳優として注目を集めるのが、15歳の和田庵。カナダへの留学後、約1年半ぶりの仕事として、石井裕也監督、尾野真千子主演の映画『茜色に焼かれる』のメインキャストに抜擢された。そんな彼の幼少期から作品への向き合い方、役者という仕事についてどう考えているのかなどを伺った。

■生き物が好きすぎて、うどんすきのエビを持ち帰って育てた幼少期

 小さい頃は、とにかく生き物が好きな子でした。うどんすきのお店が新宿にあって、家族とよくうどんを食べに行っていました。そして、小学生の頃、うどんすきの材料として、生きているクルマエビが出てきたんです。それを見て「これを家で飼いたい!」と思い、エビを皿からこっそりとって、ポケットに入れて持ち帰り、家の水槽で大切に育てていました。両親が二か月後に、僕が育てているのがクルマエビだと気がついて、「食べたい!」というのを、全力で阻止していました。(笑)そのクルマエビは、その後、半年間、僕の家の水槽の中で生きていました。
 あと、テレビを見るのも好きでしたね。『ピラメキーノ』や『天才てれびくん』などといった同世代の子たちが活躍している番組を見て、「自分もテレビに出たい」とよく言っていたそうです。その様子をみて、7歳のときに、両親が育成機関のオーディションに応募してくれました。そこから、オーディションを受けるにつれ、だんだんと「俳優という仕事」に対する自覚が芽生えていったような気がします。

■『茜色に焼かれる』の出演きっかけに、この道で生きていこうと決めた

俳優の道に進もうと決意したのは、石井裕也監督の『茜色に焼かれる』に出演してからでした。実はこの映画に出るまでにも、お芝居には関わらせていただいていたものの、自分の中では「演技をすること」に対する感覚がどこか曖昧で、作品の中の役を意識して演じられていない気がしていたんです。そこで、自分を見つめ直そうと思って、カナダへ留学しました。
 『茜色に焼かれる』への出演は、カナダ留学をしていたので、約1年半ぶりの仕事でした。久しぶりの映画のお仕事にもかかわらず、メインキャストに抜擢され、プレッシャーを感じましたね。撮影が始まった最初の1週間は、かなり精神的にもきつかったです。でも、だからこそ、今まで以上に自分の中で真剣に役と向き合うことができました。
この作品は、いろんな意味で自分にとって刺激的で、周囲の方々から自分が意識していないことを指摘してもらうことも多く、非常に学びのある現場でした。なかでも印象的だったのが、スタッフのみなさんの作品への向き合い方です。たとえば、石井監督は楽屋だと気さくで優しいお兄さん。僕の母親役だった尾野真千子さんは現場の雰囲気を引っ張ってくれる明るくて優しい方でした。でも、二人ともカメラが回った途端、人が変わったように作品に集中します。二人の現場での様子を見て、自分の未熟さを実感しました。
この作品の中で、監督、キャスト、ヘアメイクさん、衣装さんや撮影スタッフさんみんなで一つの作品を作り上げていくなかで、「あぁ、やっぱり自分はこの仕事が好きなんだな」と強く感じました。そして、このように今まで以上に作品の中の役と向き合い、やりがいを感じたことで、「この道で生きていこう」と強く思いましたね。

■正反対の役柄だけど、共通していたのは「負けず嫌い」な一面

僕が『茜色に焼かれる』で演じた田中純平は、僕とは性格もバックグラウンドもかけ離れているキャラクターでした。純平は家で読書をするのが好き。自分はスケボーが好き。インドア派とアウトドア派で、正反対。
だからこそ、彼の境遇や経験を踏まえながら、純平がどういった少年なのかを、現場に入る直前まで、1人でじっくりと考えながら、役と向き合っていました。考えてもわからない箇所があるときは、監督に直接聞くようにしていました。純平が食卓で「母さん、やっぱり僕は解せない」というシーンがあります。子が母に不満をぶつけるこのシーンで、僕は「純平は怒っているのだ」と思いました。しかし、いざ演じてみると、怒りだけでなく、「なぜわかってくれないのか」といった悲しみを含めた複雑な感情が湧いてきました。そのとき、自分と純平が重なった気がしました。また、純平がいじめられるシーンでも、「お芝居なのに、どうしてこんな気持ちになるのか」と思うほどに役に打ち込んでいました。
ただ、共通する部分もありました。たとえば、負けず嫌いな性格も似ています。自分は運動会で負けると、悔しくて泣くくらい負けず嫌いです。でも、勝っても泣きます。うれしくて(笑)。

■今後、挑戦してみたいのはアクション

 今後、俳優として挑戦してみたいのはアクションです。僕はもともと体を動かすのが好きなんです。今回僕が出演した『茜色に焼かれる』では、体を大きく動かすシーンがあったので、楽しかったのです。また、いまハマっているのは、カナダ留学中に始めたスケートボードです。あまりにもスケートボードが楽しすぎて、現在は週4日間、トレーニングを行っています。

■コロナ禍で苦しむ人々に希望を届けたい

 『茜色に焼かれる』では、コロナ禍の中でさまざまな理不尽や不幸が一組の母子に降りかかっていきます。綺麗事は決して描かれず、描かれているのはリアルな現実です。学生の皆さんの中には、コロナ禍で生きづらさを感じている方もいると思います。入学式が開催されない、学校に行けずリモート授業になっている、就職難……など、思うようにいかないことが多々あるかと思います。この映画を通して、そういった方々に少しでも頑張ろうと思ってもらえれば嬉しいですね。

学生新聞オンライン2021年4月9日取材 拓殖大学 3年 磯崎颯恵


©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ  

タイトル:茜色に焼かれる

公開日:5/21(金)より全国公開

配給:フィルムランド 朝日新聞社 スターサンズ

出演
尾野真千子 和田 庵 片山友希 / オダギリジョー 永瀬正敏   

スタッフ
監督・脚本・編集:石井裕也 

『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ:朝日新聞社 RIKIプロジェクト

製作幹事:朝日新聞社 制作プロダクション:RIKIプロジェクト 

配給:フィルムランド 朝日新聞社 スターサンズ

2021年/日本/144分/カラー/シネマスコープ/5.1ch R-15+ 

公式サイト:https://akaneiro-movie.com/


拓殖大学3年 磯崎颯恵 / 津田塾大学4年 川浪亜紀 / 日本大学4年 辻内海成

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