小川未祐 めざすのは、自らを表現するお芝居

女優 小川未祐 (おがわみゆ)

■プロフィール

中学生時代にプロダンサーとして活動し、高校2年時に女優としても活動を開始する。初作品は小川紗良監督の「最期の星」(主演)。その後深田晃司監督の「よこがお」山本政志監督の「脳天パラダイス」などでの存在感のある演技で話題になった。デビュー作から月日がたち、再び小川紗良監督の初長編映画「海辺の金魚」で主演に抜擢される。

中学生のころからダンサーとして活躍していたものの、高校2年生の時に女優に転身をした小川未祐さん。2021年6月25日公開予定の映画『海辺の金魚』では、主人公の少女・瀬戸口花役を演じる。「与えられたものだけではなく、自分自身が表現を作り出す存在になりたい」という思いからお芝居を始めた彼女の素顔と、今後の夢に迫る。

■「表現したい」との想いから、女優へ転身

小さいころから習い事はたくさんしていました。バレエにピアノ、ダンスに書道や合唱。その中でも一番好きだったダンスをもっと突き詰めたいと思い、中学2年生の時にダンススクールに通い始めました。ときには学校を早退してレッスンに通う日々は大変ではありましたが、嫌だと思ったことは一度もありませんでした。アーティストのバックダンサーをしたり、ツアーで地方を飛び回ったりと、様々な経験をしていく中で、「与えられた振り付けを踊るダンサーよりも、自分で表現を作り出せるような存在になりたい」と思い、お芝居の道に進むことを決心しました。はじめのころは、台本を覚えて演技するということに慣れていないからか、とても恥ずかしかった記憶があります。ただ、次第に、「自分で表現する」ことが演技を通じてできるようになってから、恥ずかしさは消えていきました。演技はずっと自分がやりたいと思っていたことだったせいか、「女優として生きていく」と決めたときも不安はあまりなかったですね。

■撮影中は、楽しいことより泥臭いことの方が多い

撮影の現場では監督さんやスタッフさんなど色々な人と出会い、触れ合えることも、すごく刺激的ですね。最初は作品を掴み切れていなくても、世代も性格も得意分野も違う様々な人と現場で話しているうちに、分かっていくことも多いですね。わからないことがあるときは、あれこれ考えて何も聞けずに終わるよりも、子供みたいにどんどん何でも聞いていこうと意識しています。この仕事は、「人」がいてこそ成り立っているものですしね。あと、作品を撮影している間は、楽しいことよりも、泥臭くて大変なことの方が多いと思うんです。だけど、私は身を削って、色んな人と協力して、一つの作品をつくりあげるその過程が好きですし、また、そうやって完成した作品をお客さんに届けることができたときは、本当にうれしいですね。

■児童養護施設で育つ少女を演じた主演映画『海辺の金魚』

『海辺の金魚』では児童養護施設で育ってきた18歳の女の子・花を演じています。そんな花が、施設で過ごすことのできる最後の夏に、様々なことが降りかかってくる中で今後の人生をどう生きていくのか、どんな道を進んでいくのかを選択するため、葛藤する物語です。簡単な役でも作品でもなかったので、苦しい場面はたくさんありましたが、演じていたシーンのすべてが強く印象に残っています。私と花は育ってきた環境が違うし、性格もあまり似ていないので、彼女の感情をつかむまでが大変でしたね。撮影を行った場所は、鹿児島の阿久根市という海がとてもきれいな場所で行われたのですが、その美しい海を眺めながら、「彼女はどんな服を着て、どんなアクセサリーを身に着ける子なのか」「人生の選択に直面したときに何を思うのか」を考えたり、ノートに書き出したりもしました。花と私は違う部分が多いけれども、一人の人間として、強い意志を持って生きている姿が尊敬できますね。この物語はフィクションではありますが、ひと夏をたくましく生き抜く人々が描かれた作品になったと思っています。ぜひ、スクリーンでご覧いただきたいです。

■人はいつ死ぬかわからない。だから、常に「自分が何をしたいか」を考える

最近は、歌を作って過ごすことが好きです。小さい頃から習っていたピアノに加えて、2年前からはギターも始めました。新型コロナウイルス感染症による自粛期間中は、たくさん練習しましたし、自分が思ったことを歌にして過ごしていました。誰かに見せるために作ったわけではないものの、作った歌に自作のPVをつけたりもしていますね。また、歌を作るようになってから、笛やピッコロなどの楽器にも興味が出てきました。
あと、詩を書くことも増えました。去年撮影したドラマのオーディションの時に、監督が私の作った詩を読んで、ほめてくださって……。自分が書いた詩を見せるのはすごく恥ずかしいことだったけれど、自分が何の気ない気持ちを言葉にしたものをほめていただいたのは、とても嬉しかったです。これからも、曲や詩、写真も生み出していけるといいなと思いました。
よく「今後どうなりたい?」と聞かれるんですが、そこまで具体的な目標はないんです。ただ、人はいつ死ぬのか分からない。だからこそ、「自分が何をしたいのか。どういうものを作りたいのか」を考えながら、作品をつくっていけたらいいなと思っています。

■大切なものは、形にして残したい

最近は何でもスマートフォンで完結してしまう時代ですよね。でも、なんでもデジタルだけで完結するのは、少しさみしい気がしています。この前、父からCDを借りて音楽を聴いていた時に、「私は父が昔に聴いていた音楽を聴くことができるけれど、私は好きな音楽をデジタルで聴くことが多いから、私の子供は私が昔どんな音楽を聴いていたのか分からないのかもしれない」と気が付いて。そのとき、自分のことが形に残らないなんて、とてもさみしいなって思ったんです。今の世の中は、良くも悪くもモノに溢れていて、自分自身でも本当に好きなものが何かが分からなくなってしまいがちですよね。だからこそ、自分が本当に大切にしているものは、できる限り形に残していきたいです。そして、形に残すことで、後の世代の人々に自分が大切にしていたものを受け継いでもらえたら、とてもうれしいことだなと思います。

学生新聞オンライン2021年2月12日取材 東洋大学1年 濱穂乃香


 ©2021 東映ビデオ

映画『海辺の金魚』
【公開日】 2021年6月25日公開   
【劇場】 新宿シネマカリテ シネ・リーブル梅田 鹿児島ミッテほか    
【配給】 東映ビデオ
【公式ツイッター】@UmibeKingyo 
【公式サイト】umibe-kingyo.com
【予告】https://youtu.be/_OruL3iJItU 

キャスト
小川未祐
花田琉愛 芹澤興人 福崎那由他 山田キヌヲ

ストーリー
身寄りのない子供たちが暮らす家で育った18歳の花(小川未祐)は、そこで暮らせる最後の夏を迎えていた。そこに8歳の少女・晴海(花田琉愛)が入所してくる。かつての自分を重ねた花は、晴海と過ごすうちに今までに無かった感情が芽生えてゆく。


明治学院大学3年 小嶋櫻子 / 東洋大学1年 濱穂乃香 / 津田塾大学3年 川浪亜紀、

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