学校法人明治学院理事長 山﨑雅男

多様性を受け入れ、社会の中枢を担う人材を育成する

学校法人明治学院理事長 山﨑雅男(やまざき まさお)

■プロフィール

1949年生まれ。1972年早稲田大学政治経済学部卒業後、東京電力株式会社入社。2010年東京電力株式会社取締役副社長に就任。その後、株式会社世界貿易センタービルディング取締役、労働審判員(東京地裁所属)を歴任。2017年より学校法人明治学院理事長に就任。

「キリスト教に基づく人格教育」を建学の精神とし、創設者ヘボンが生涯貫いた精神“DoforOthers(他者への貢献)”を教育理念に掲げる明治学院大学。創立以来150年以上の歴史ある大学で、次代を担う人材輩出のための教育に力を入れる山﨑理事長に話を伺った。

■どのような学生時代を過ごされましたか

 私の学生時代は、大学紛争の真只中で激動の時代でした。私はクリスチャンだったこともあり、早稲田大学入学後に課外活動としてキリスト教研究会に入り、活動しました。勉強では「日本経済史」を専攻しました。ちょうど高度経済成長期でもあり、日本がアジアにおいて急速にまた自律的に経済発展していた時代でした。そういうことからなぜ日本が明治以降アジアで唯一近代化したのかということに強い興味を抱いたのです。
 卒業後は、何か公益的な仕事に携わりたいと考え、電力会社に就職しました。長期にわたり、労務人事部門や人事育成部門で仕事を行い、その後、業務組織の再編をする仕事なども担当しました。大学は日本の経済社会を支える人材を育成する仕事なので大学の理事長の仕事は大変有意義な仕事だと思いましたね。

■大学経営について理事長として目指すところを教えてください

 大学は日本の経済社会を支える人材を養成し、その発展を推進しうる人材を送り出す役割があると思います。日本が高度経済成長期に自律的に経済発展することができたのは、経済的要因に加え、教育の要因、即ち経済社会を担う人材が備えられていたからだと思います。だからその時代は大学はじめ敎育機関はうまく機能したと言えます。しかしその後の経済的停滞を見ると教育への投資の面をはじめ人材育成面で、教育機関も、企業などの組織も問題があったのだと思われます。
 その話はさておき、大学は社会の変化を踏まえてより良い教育を進めることが求められているのですから、実際に教育・研究に携わる先生方が行いたいと考えることが実現できるように、支えていくことが大切だと考えています。従って堅実な財政運営、中長期的視点に立った諸計画の策定、それを推進しうる人材確保を大事にして経営にあたることが必要だと思います。

■大学として重きを置いていることはなんですか

 明治学院大学は、キリスト教精神を特に大切にし、「隣人と生きる世界市民の育成」を使命(ミッション)としています。その実現のため教育ビジョンを定めていますが、特にボランティアスピリッツの醸成、グローバルマインドの形成、キャリア教育の充実の三つを大切にしています。ボランティア活動と授業との連携を進める、留学制度を整え多様性の認識や視野の拡大を図る、産業界の人が参加する講義や寄付講座などを通して自らによるキャリア形成を促すなどの取り組みをしています。これらに加え、明治学院大学が長年に渡って築き上げてきた側面〜学生と先生との距離の近さ、充実した図書館、チャペルなどの歴史的建造物など〜を大切にして時代の変化に即した教育を展開していくことが重要だと思います。さらに、本学には「内なる国際化」というプロジェクトがあり、日本の中で進んでいる国際化に目を向け、外国にルーツをもつ子供たちの日本語の教育支援をしたりしています。現在、日本の学生を海外に送る国際化(外向き)の取り組みはあっても、その逆はなかなかないと思います。今の時代にこそ、多様性を受け入れていく環境をさらに整えていきたいですね。

■大学生へのメッセージをお願いします

 大学生で大事なことの一つは勉強です。自分がしたこととして確固とした一つのものを持ってほしいと思います。学生時代に身についた自分の勉強のスタイルや姿勢などの学びの方法論は社会に出てからも大きな力となります。
 もう一つは、人間力を身につけてほしい。社会は人と人の繋がりで成り立っています。サークルやその他の活動で、多くの人と話をしさまざまな体験をすることで、視野を広く持って、人間としての深みを持ってほしいと思います。

学生新聞2021年10月号 津田塾大学4年川浪亜紀

早稲田大学3年 原田紘志 / 津田塾大学4年 川浪亜紀 / 慶應義塾大学1年 在原侑希

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