書家・芸術家・大阪芸術大学教授 紫舟
書家は天職。自問自答を繰り返す日々で見つけた道
書家・芸術家・大阪芸術大学教授 紫舟(ししゅう)
■プロフィール
日本の伝統文化である「書」を絵、彫刻、メディアアートへと昇華させ、文字に内包される感情や理を引き出す。その作品は唯一無二の現代アートであり、日本の思想や文化を世界に発信している。海外では、フランス・ルーヴル美術館地下会場でのフランス国民美術協会展にて、書が絵の中に融合した作品で「金賞」受賞、書が紙や伝統から解放されて三次元となった書の彫刻では「最高位金賞」と日本人初のダブル受賞をし、「北斎は立体を平面にし、紫舟は平面の書を立体にした」と評され(2014)、世界的に注目されている。
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■書家になったきっかけは
ごく普通の大学生でした。自分が何をしたいのかが分からないままに、社会のレールに沿って就職しました。入社後、「ここは自分の居場所ではない」という気持ちが大きくなる一方でした。結局、3年間勤めた後に退社しました。
そして、生涯かけて成すべきことは何かを考えるために、内観を始めました。すべてを手放し退路を断った上で、蓋をし続けた自分の本心を見つめました。ちょうど100日目に、おなかの奥底に「書家」という道を見つけました。その瞬間、心がすっと軽くなり平安に包まれました。この感覚を信じ、書家になる覚悟を決めました。
■書道に対しての思い
私にとって書は、「楽しい」や「好き」というものではありません。「楽しい」や「好き」というのは感情です。確かに人の行動の多くは感情に左右されます。一方で、人の感情はうつろいやすいもので
す。「楽しい」や「好き」は次の瞬間には、「楽しくない」や「嫌い」に変わるかもしれません。
それらをはるかに超越したところに在るのが、私にとっての書道です。書は私の天職です。
■大学生へのメッセージを
大学時代で一番後悔していることは、同じ学力・同じ年頃の人とばかり話し、「大人と話さなかった」ことです。みなさんの目の前には、無数に拡がる道と無限の可能性があります。当時の私には、どれを選べばよいのかを判断するための「知恵と経験値」がありませんでした。でもそれらは、大人から分けてもらうことができるものなのです。もしアドバイスをもらうことができれば、小さく一度試してみる、それが良かったらもう少し大きく試す。この後が大切です。その結果や感想をその方に報告してください。そうすることで次のステップへの助言をもらうこともできるのです。これを繰り返し、人生を引き上げてもらったり、成長ができたり、未来への無数の道から、善い選択をすることもできるようになります。
最後に、夢の話をします。みなさんが目指す夢は、「困難という衣」を纏い近づいてきます。手が届かないほどの高いところにある夢のステージと、現在の自分との大きな差が困難を生みます。言い換えると、目の前にたちはだかる困難は、夢が近づいている証。困難に負けず顔を上げていればチャンスは必ず訪れると信じてみるのもいいかもしれませんね。
学生新聞2022年4月1日発刊号 明治学院大学4年 小嶋櫻子
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