株式会社Z会エデュース 代表取締役社長 高畠尚弘

コロナ禍もDX化も全てを強みに。守る伝統、進める革新!

株式会社Z会エデュース 代表取締役社長 高畠 尚弘 (たかばたけ なおひろ) 

■プロフィール

1970年石川県生まれ。1993年、早稲田大学政治経済学部を卒業して、株式会社Z会に入社。社歴のほとんどを教室事業のさまざまな業務に従事し、2015年の教室事業分社化に伴い、会社設立とともに株式会社Z会エデュース代表取締役社長に就任。株式会社栄光の役員も兼務し、グループ内のさまざまな教室事業にも関わっている。趣味はサッカー観戦(ゴール裏)と野球観戦(外野席)。

社会情勢が大きく変化した今。そんな中でもZ会が最も大切にしていることは変わらなかった。今後の教育業界はどう進むのか、DX化が生徒たちに及ぼす影響とは。バブル崩壊直後の就活期を乗り越え社会人になってから今まで、どんな時代も前向きに生きる高畠社長に教育業界の未来を聞いた。

■教育業界の選考では、ありのままに話せる自分がいた

大学生活は、「勉強より課外活動!」という日々でした。登山サークルに所属していた私は、「20日間くらい山から帰ってこない!」なんてこともありました(笑) 。教育の仕事に就いたきっかけは、塾のアルバイトにとてもやりがいを感じたからです。就職活動では幅広い業界を見ていましたが、教育業界の面接の時は志望理由をありのままに話せている自分に気付き、「やっぱり教育の仕事がしたい!」と確信しました。

■突如として現れたコロナ禍。その中でも変わらない「Z会が大切にすること」

コロナ前でも、コロナ禍でも、Z会が変わらずに一番大切にしているのは「生徒一人一人と向き合って、記述力を養成するために答案を丁寧に添削すること」です。その一方で、様々な手段が変化していきました。例えばZ会の教室でいえば、入試情報の説明会。今までは全て対面で行っていたため、参加できない生徒・保護者には紙の資料を渡すことしかできませんでしたが、今は動画配信が一般的になったので、より多くの生徒・保護者にリアルな声を届けられるようになりました。結果的に、サービス自体はすごく向上していると思います。映像授業を使って、理解が不十分な内容を復習することもできます。
しかし緊急事態宣言下で全く教室での授業が出来なかった時期は、本当にきつかったです。授業の動画配信は行っていたのですが、それをしっかり活用できていない生徒もいたので心配でした。また、安易にオンラインに頼ってしまうことも懸念点です。対面での授業にこそ価値を感じる生徒もいるので、便利だからといってオンラインの授業ばかりを増やすと生徒のやる気が起きず、学力につながらない可能性もあります。そんなこんなで、コロナ禍が始まった当時は毎日のように緊急会議を行っていました。

■二年間で見えた強みは「既存の通信インフラ」と「先生たちの順応性」

この2年で、Z会の強みだと痛感したのは、元々、オンラインのインフラを持っていたことです。現在の通信教育では、タブレットコース本科の場合、Z会受付後約3日でデジタルで添削した答案が返ってくることがスタンダードになりつつあります。こうした設備がZ会では元から整っていたことが、コロナ禍において、Z会が他社よりも一歩リードできた要因です。また更に強みだと感じたことは、Z会の教室の先生方が1、2ヶ月でスピーディーにオンライン授業に順応してくれたことです。他塾では「先生がオンラインに慣れていなくて生徒が集中できていない」という話も耳にしましたが、Z会の教室ではありがたいことにオンラインにも強い先生に恵まれ、先生方が授業を日々改善したことで、生徒の学力低下もほとんど見られませんでした。この2年は業績としてはかなり大変な期間でしたが、Z会ならではの強みを再発見した期間でもありました。

■オンライン、対面それぞれの良さを活かし、相乗効果でより質の高い教育へ

オンラインと対面のハイブリット型の授業が多くなってきたこの頃。その良さの一つは、お客さんが選択できるという点です。初期はやはりオンラインの比率が高くなりましたが、その後は対面に戻ってきた生徒もいれば、家の方が集中できるという理由でオンラインのまま続けている生徒もいました。結局は、オンライン、対面どちらも質の高いものを用意し、選んでもらうことが最適だと考えています。
そしてもう一つは、それぞれの良い面を組み合わせることで、より良いサービスが提供できるようになったことです。さらに、Z会の教室は厳選されたプロの先生が教えているため、教室自体の数が少ないのですが、オンライン授業が普及したことにより全国の生徒に授業を届けられるという利点もあります。結果的には、マーケット自体が広がったという感覚です。

■進むDX化、変わらない「向き合う添削」

オンライン化が進む中、Z会の教室でどのブランドもやめようとしなかったのが「答案の添削」です。「添削がなかったらZ会じゃない!」というのが社員共通の想いです。今後の課題は、記述に拘りつつも、それをDXでどう叶えていくかだと考えています。ただ最近は、タブレットの手書き認識機能も良いものが普及しているので、技術がどんどん追い越してくる期待感もあります。また、本質に立ち返ったとき、DX化が進みすぎると、生徒たちの表現力が乏しくなってしまうのではないかとの懸念もあります。だからこそ、書くこと、考えることに時間を取るため、他塾に先駆けてAI教材も挿入して、インプットの効率化も行っています。今は、その生徒ごとに、学習状況を分析して、「あなたはこれをやった方がいいですよ」とAIがリコメンドしてくれるシステムもあります。このように、リアルとDXをうまく場面分けして活用しています。

■「強みを言語化する」デジタルマーケティング

広告宣伝のマーケティング戦略についても、どんどんデジタル化しています。従来は折込チラシとダイレクトメールが主流でしたが、今は多くがWeb広告です。そんな中で痛感しているのは、「強みのない塾は勝ち残れない!」ということ。不特定多数に向けて発信する世界なので、ワード検索で見つけてもらえるように「強みを言語化する」ことが何より重要です。ちなみにZ会の教室では、「受験を通して人間として成長する塾」と掲げています!

■大学生へメッセージ

皆さんの大学生活は、新型コロナウイルスの影響を受けて本当に大変だと思います。しかしその一方で、すごく貴重な体験、学びもあったのではないでしょうか。制限されている中でも手探りで活動の幅を広げ、なんとか工夫して友達とやり取りしていった経験は社会に出た時必ず活きてきます。Z会の教室がオンライン指導でさらに指導の幅を広げたように、何事もあまり後ろ向きに捉えず、前向きに考えて新しい可能性を見出して、これからの社会をより良くするために、経験を活かしてほしいです。

学生新聞オンライン2022年5月13日取材 東海大学4年 大塚美咲

日本大学3年 石田耕司 / 東海大学4年 大塚美咲 / 日本大学1年 大森雨音 / 成蹊大学4年 岡田美波

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。