ソニー銀行株式会社 代表取締役社長 南啓二
「前例にとらわれない」ソニーの遺伝子を「顧客視点」で体現する
ソニー銀行株式会社 代表取締役社長 南啓二(みなみけいじ)
■プロフィール
徳島県出身。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
2008年ヤフー入社。2010年ソニー銀行入社、マーケティング部長を務めたのち、2011年スマートリンクネットワーク(現ソニーペイメントサービス)取締役。取締役執行役員常務、取締役専務執行役員を務め、2021年6月から現職。
オリコン顧客満足度®調査の「住宅ローン」ランキングで2011年~2021年と長らく一位を獲得してきたソニー銀行。今回お話を伺ったのは、その代表である南啓二社長。11年間という長きにわたって、なぜ顧客満足度1位を維持してきたのか。そこには「前例にとらわれない」というソニーの遺伝子を「顧客視点」で体現する文化があった。
■やってよかったアルバイトは、マンション工事の雑用とイベントのマネジメント
大学1、2年生の頃は学費のこともあり、アルバイトをしていました。さまざまなアルバイトを経験しましたが、特にやってよかったなと思うものが二つあります。
一つ目はマンションの工事現場の雑用係です。雑用というのは意外と難しいものです。いろいろなことについて知らないとできませんし、決まったマニュアルがないので臨機応変に動かなければなりません。ソニー銀行では住宅ローンも扱っているので、時には不動産会社の方と話し合いをする機会があります。当時はただのアルバイトだったとはいえ、建設現場の経験や知識があるので、工事に関する会話になることもあります。そう思うと、今でもあの経験は活きているなと感じますね。
二つ目は、イベントへの人材派遣のマネジメントです。私は学生を百人ほど集め、商店街のビールイベントの手配をしていました。このアルバイトでは自分が組織の一員として働くだけでなく、学生が来られなくなったと急なキャンセルが生じても欠員を出さないように調整するなど、オペレーションやマネジメントを学ぶことができました。
■大学院に行くために勉強漬けだった大学3、4年生
しかし、大学3、4年生になるとアルバイト三昧の1、2年生の頃とは打って変わって、大学院に行くためにとにかく勉強しました。毎日1限から6限までずっと勉強していましたね。今振り返ってみてもあそこまで集中して勉強する機会はなかったし、良い経験だったなと思います。その後、無事に大学院に進み、DNAの研究を研究室に篭りきりで行いました。それこそ徹夜で研究することもありましたし、一日十時間は間違いなく研究していました。一つのことをしっかりとやりきる経験を積むことができた、メリハリのある大学生活だったなと思います。
■夢だった起業を間接的に経験
大学院を卒業した後は、将来起業をしたいと考えていたのでいろいろな業界と関わる機会が多い銀行を目指し、三和銀行に就職しました。数ある銀行の中から三和銀行を選んだのは、上下関係の厳しさと仲の良さのバランスがうまく取れていて、自分の肌に合うと感じたからです。仕事の中身ももちろん大事ですが、上下の雰囲気は大事です。仕事は1人でやることではないですからね。学生の皆さんもOB・OG訪問などの際、先輩後輩の関係性をしっかり見ておくと参考になりますよ。
そうして入社した三和銀行ですが、そこでの日々はとても刺激的でした。ドラマのモデルにもなった三和銀行と東海銀行の合併を経験したり、ブラジルの銀行と業務提携をしたり、新しい会社の立ち上げにも多く携わりました。今振り返ってみると、会社規模の交渉や新しい会社の立ち上げに携わることが多かったなと感じます。
その後、ソニー銀行に移ってからは子会社のソニーペイメントサービスで、変わらず数多くの起業に携わらせていただきました。ソニーグループも出資しているタクシー配車サービスを提供しているS.RIDEの立ち上げや、ネットショップ作成サービスを手がける「BASE」の黎明期にも決済の面で携わりました。
自分自身が起業したわけではありませんが起業のお手伝いをすることで、たくさんの起業体験ができました。自分で起業をすると基本的に一社の立ち上げのみですが、企業のサラリーマンとしてならば色々なことに関与することができて楽しいです。結果的に元々やりたかった起業という夢も間接的に叶えることができましたしね。
■人の夢を大切にするソニーの文化
私がソニー銀行に来てから感じたこと、それは「前例にとらわれない」というソニーの遺伝子を「徹底的な顧客視点」により体現しているということです。「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というソニーのパーパス(存在意義)は、ソニーグループ共通の指針です。そして、ソニーグループで金融事業を担う私たちソニーフィナンシャルグループは「心豊かに暮らせる社会を目指し、人に寄り添う力とテクノロジーの力で、一人ひとりの安心と夢を支える金融グループになる」というビジョンを掲げています。ソニー銀行でもお客さまの住宅購入といったライフイベントにおける感動や思い出を金融の面でサポートすることに取り組んでいます。
これは私がソニーペイメントサービスにいたころの話です。ソニーミュージックから、ある日依頼がありました。内容は「炎天下の中2時間以上並んでグッズを買うファンの方達が辛そうだから、もっと楽にグッズを買えるシステムをソニーの技術で作りたい」というものでした。結果、私たちはコンサートグッズの事前決済サービスを新たにリリースし、ファンの方達からも好評でした。
このサービスを作っているとき、あまり儲かるかどうかは考えていませんでした。とにかく、お客様視点で世界をより良く変えたい、と考えていました。「このようにこれをやれば儲かる」ではなく、「赤字になるかもしれないけど、真剣にお客様が喜ぶものを作れば何とかなる」として、本気で思っている人がグループの中には多くいるのだと、このとき実感しました。
ソニー銀行で一緒に働いている人も同じ価値観を持っている人が多いなと感じますし、これから一緒に働くことになる仲間も同じ価値観を持っている人が良いですね。就活の面接はお互いの価値観を擦り合わせていく場だと考えています。学生のみなさんが大切にする価値観と同じ価値観を持つ企業を探すことが大切です。
■massage
学生新聞の読者の皆さんの多くは大学受験を経験したと思います。大学受験で大切なことはいかに自分の不得意なものを克服できるかでした。皆さんも参考書の間違えた問題を何度も繰り返し解いて苦手を解消したと思います。しかし、社会で必要とされる力は真逆です。自分の得意なもので突き抜けた点数を取れることが大切になってきます。是非大学生のうちに、自分の好きなものと得意なものを見つけられるように頑張ってください。
学生新聞オンライン2022年6月27日取材 法政大学3年 鈴木悠介
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