医療法人社団因幡会 理事長 林 昭利

歯の寿命を延ばせば人生も伸びる。人生に直結する仕事

医療法人社団因幡会 理事長 林 昭利(はやし あきとし)

■プロフィール

1973年鳥取県生まれ。2001年、明海大学歯学部卒業後、医療法人社団弘進会宮田歯科入社。2003年、医療法人社団裕正会汐留シティセンター歯科入社、2005年裕正会理事に。2010年医療法人社団因幡会を設立。2007年因幡会グループCEOに。厚生労働省認定研修指導医。アメリカ歯周病学会会員。国際インプラント学会指導医。

 東京、埼玉、神奈川と首都圏で8店舗歯科医を開業している因幡会理事長の林昭利先生。歯医者だけでなく開業のコンサルティングやそうめん屋まで幅広い分野で活躍。どのような想いで患者さんやお客様と関っているのか、新しいビジネスへ挑戦し続ける理由、そして仕事にかける思いについて伺った。

■人の人生に携わる仕事

 高校時代はラグビー部に所属し、大学からはアメフトに入部しました。高校と大学時代の部活はとてもハードで、この経験が今の私を構築している部分も多いと思います。この頃の練習を思い返すと、今、どんなつらいことがあっても「たいしたことないな」と思えます(笑)。意外と知られていませんが、アメフトは知力のスポーツです。頭を使えば、強いチームにも勝てる。部活を通じて、考え続けることや、頭を使い続けて道筋を生み出すことを学べました。

大学は歯学部に進んだので、自然な流れで歯医者になりましたが、今にして思えば自分にとって天職だと感じています。歯医者は一枚のレントゲンから瞬時に見極めて患者をコンサルしなければなりません。それには問題を判別する力だけでなく患者さんに対する話術や人間性が必要になり、それで信頼を得る仕事だと思います。一方で、歯医者はその人の人生を左右する仕事で、歯の寿命を延ばせば、人生の寿命を延ばすことに直結します。だからこそ人生100年時代と言われている今、120年くらいは歯の需要をもたせなければなりません。現在の日本では自分の歯の疾患に気づいていない潜在患者が多く、その患者さんたちを顕在化できれば歯の需要を伸ばし、健康寿命も伸ばせると考えています。施術した患者さんから、10年後や20年後に「あの先生で施術してもらえてよかった」といわれるのは本当にうれしいですね。

■一番大切なのは人

 因幡会は国家資格の研修医施設でもあり、大学と連携をして多くの研修医が学びに来ます。因幡会にはマンションや商業施設、オフィスなどがそろっており、研修医からきて開業するまでさまざまな経験をすることで、自分は何が向いているのかを知ることができます。自分だけなら店舗数は2~3店舗で十分なのですが、働いているドクターやスタッフのために店舗数も増やしました。

従業員を教育する上で、一番大切にしているのは「自分と自分の身内にできる治療をする」ということ。例えば歯に何か詰めるにしても、自分の家族におすすめするように患者さんにすすめるということ。自分がされたくないことはしないようにさせてます。採用時には、「どんな歯医者になりたいのか」「なにかほしいものはあるのか」を聞きます。貪欲な人の方が、成長してくれるというイメージがあるので、欲がある人を採用します。ただ、義理人情も大切なので、裏切らず恩を返そうとしてくれる人は家族にように大切にしますね。

当院の魅力はオーソドックスですが「人」です。腕・トーク力が一番大事だし、それがあれば何をしても生きていけると思います。仕事の面では疑問と結果の間に仮説をたてて検証をしていくことも大切にしています。実際にハーバード大学やニューヨーク大学などのプロジェクトに参加もしています。実際、ハーバード大学とのプロジェクトでは、歯ブラシの耐久性や清掃能力を測る研究など行っており、歯ブラシの研究や開発を行いました。

■経験を活かして新しいものを生み出す

 今までのノウハウを生かして、歯科医開業のコンサルティングも行っています。開業コンサルタントは大勢いますが、歯医者ではない人も多い。私たちの場合は、実際に開業した実績やデータがあるので、それがかなり強みになっています。経験のない歯医者がいきなり大手デベロッパーと進めようとしても、さまざまな問題や工事などがあり、問題も起こりやすいです。そのため、私たちがデベロッパーとの間に入り、歯科医にもわかりやすく説明できるため重宝されます。将来的に全国にネットワークを作ることができれば、患者さんも安心して転勤や引っ越しができると思っています。歯医者だけなく、面白いものやお客様が喜んでくれるものには参入し続けていきたいという思いもあります。

そのほか、意外なものとしては、そうめんの専門店を経営しています。そうめんは最古の日本の麺なのに、うどん屋やラーメン屋、そば屋はあっても、そうめん屋はないことに気が付きました。また、お歳暮やお中元の慣習が薄れていくと、そうめんの文化が衰退していく可能性があるからこそ、外食産業にしようと思いました。飲食は目の前でお客様が喜んでくれるのもうれしいですね。

■地元への思い

 私は鳥取県出身なのですが、鳥取旧称である因幡を法人名にしています。世界レベルの技術は鳥取では使うことができなかったのですが、鳥取の地方創生を行いたい、歯のレベルを上げたいという思いから歯の工場を誘致しました。技術も心も良い歯科技工士が集まってくれて、関東圏で受注したものを作ってもらっています。技工学校を買い取ってほしいと言われたこともありました。

■学生へのメッセージ

 今の時代はやることが無限大あり、いろいろと進路を選べることができます。ただそれが今の若者たちの進路に逆に悪影響を与えてしまっていると感じます。どこで決断するのかを決めてほしいですね。また、いろんな大人にあっていろんな世界やいろんな職種を見てください。日本は大学で進路を決めますが、海外では高校から決めています。無駄な勉強が多くなってしまいます。早く決めることができれば、大学で無駄なく学びたいことに向けて動けますよね。早めに自分で考えて、早く就職先を見て、考えることも一つの大切なことではないのかなと思います。未来を作るのは若者たちなので、覚悟を決めて頑張ってほしいです。

学生新聞オンライン2022年8月25日取材 國學院大學3年 島田大輝

國學院大學3年 島田大輝/明治大学4年 酒井躍/日本大学3年 石田耕司

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