グリー株式会社 取締役上級執行役員 前田悠太

「好き」を武器にしながら感動を世界中へ。

グリー株式会社 取締役上級執行役員 前田悠太(まえだ ゆうた)

■プロフィール

1982年、岐阜県各務原市生まれ。2006年よりベンチャーキャピタルのジャフコグループ株式会社において、主にIT/モバイルセクターのベンチャー投資、育成に従事。その後、2009年に株式会社ポケラボに入社、2011年に代表取締役社長に就任し、現職。ポケラボは2012年よりグリー株式会社の子会社となる。2013年よりグリー株式会社取締役上級執行役員を兼務し、現職。弁理士。

「インターネットを通じて、世界をより良くする。」のミッションを掲げ、2004年の創業以来、成長を続けるグリー。グリーのゲーム・アニメ事業を管掌する前田取締役上級執行役員に、これまでのご自身のキャリアやグリーの魅力、ゲームへのこだわりや強みについてお話を伺った。

学生時代は音楽とキックボクシングに夢中でした。高校時代からバンド活動に没頭し、大学進学の際に岐阜県から上京した当初は、音楽学校とのダブルスクールの状態でした。しかし、音楽の世界のシビアな現実に直面し、夢は断念。キックボクシングに専念するようになりました。どちらも現在の仕事とは直接関係はありませんが、今の仕事に活かされている部分は非常に多いです。音楽を通じてクリエイティブな心が育まれましたし、キックボクシングからは心と体のコンディションを整えるスキルが得られました。大学院に進んだ後は、弁理士の資格を取得。アルバイトでは特許明細書の下書きをしていました。卒業後は就職をしようと決めたものの、そもそも世の中の仕事を全然知らないという当たり前の事実に気づき、自分がどんな仕事が良いか選べないといけないと思いました。そこで、たくさんの会社や仕事と関わることができる仕事という理由で、ベンチャーキャピタル業界にフォーカスし、最終的にJAFCO(ジャフコグループ株式会社)に入社しました。入社後は、年間100社以上の社長にお会いし、投資先の取締役会や経営会議に参加しながら、さまざまな業種やフェーズの企業と仕事をさせていただく経験を積みました。そんな中で、私が特に「日本から世界に勝負できる」と注目して追っていたのが「再生医療・ナノテクノロジー・モバイルゲーム」の3分野です。当時、Facebookなど海外の大手SNS内でゲームが活況になってきており、近い将来、スマートフォンが発売されることも見えていました。この10年の時間軸で最も市場成長速度の速い分野として、モバイルゲームにフォーカスして投資を進めていきました。モバイルゲームの会社と会い、投資をしているうちに、立ち上げたばかりの株式会社ポケラボの創業者から誘いを受け、2009年7月より取締役CFOとして入社しました。当時、10億円の調達をして大きな勝負に出たのですが順風満帆とはいかず、約1年で経営危機となり、私が社長となりました。そして、スマートフォンの台頭に合わせてスマートフォン向けのモバイルゲームにいち早くシフトし、大きく成長することができました。2012年にはグリー株式会社と資本業務提携を結び、さらに業況を拡大。グリーの取締役を兼務しながら、ポケラボ、株式会社WFS、グリーエンターテインメント株式会社の3社でグリーグループのゲーム・アニメ事業を展開し、より大きな挑戦をしています。

■「好き」だからこそファンの気持ちがわかる

グリーでのゲーム・アニメ事業の魅力は、広い意味でのオタクな従業員が多いことです。「好き」が根底にある人はファンが喜ぶことがわかります。だから「好き」は、絵が上手いとか計算が速いのと同じように、重要な才能の一つだと思っています。好きだからこそ「自分たちが本当に面白いと感じるものを作りたい、作品を楽しんでくれる人を大切にしたい」という想いを持っています。また、コンテンツの制作は一見華やかな仕事に見えますが、実は非常に過酷です。リリースまでに3〜5年費やしても全然売れないこともあります。面白いと信じて作ったものが売れないと、自分たちが否定された気持ちになります。好きという強い気持ちがないと続けられない仕事でもあります。

■日本らしいゲームを追求する

ゲーム作りにおいて、グリーグループで意識していることの一つは、「日本らしい作品」を作ることです。私たちの考える「日本らしさ」とは、日本の文化や文脈の中で感動できるナラティブ(物語)を持ったゲームです。日本のゲームファンは世界中に大勢いますので、地域ごとのローカライズやカルチャライズは不要です。日本のゲームをそのまま楽しみたいというユーザーはたくさんいます。オタク文化が世界に広まった結果、ゲームクリエイターは急増しています。実際、中国には日本の10倍のクリエイターが既にいると言われています。しかし、競争相手は増えているとはいえ、日本風の見た目やシステムはマネできても、日本ならではの世界観や設定の深さなどは、簡単にはマネできません。ゲームにおいては、日本自体もブランドです。

■大学生へのメッセージ

大学生の皆さんにはとにかく動くことをお勧めします。これまでの人生を振り返ってみて、自分の血肉になった経験や何かの起点は、自発的な行動から生まれていると思いませんか。行動「量」にこだわることです。近年、インターネットやAIの進化によって、知識や情報の入手は容易になり、頭の良さの基準も変わってきています。知識や賢さはどんどんコモディティ(汎用品)になってきます。AIをはじめとするデジタルを有効に活用できる能力、行動からの経験を通じて問いを立てる能力こそが大事です。学生という立場と時間をフル活用して、とにかく行動してください。行動する習慣を身に付けて、自分の未来を切り拓いていってください。

学生新聞2024年4月1日発刊号 津田塾大学1年 石松果林

日本大学2年 米満光里/津田塾大学1 年 石松果林/武蔵野大学4年 西山流生

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