株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役社長 森 雄一郎

ユーザーエクスペリエンスを デザインする会社になる

株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役社長
森 雄一郎(もり ゆういちろう)

1986年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、ファッションイベントプロデュース会社を経て、不動産ベンチャー、フリマアプリ「メルカリ」の創業期に参画。2014年2月にオーダーメイドのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO」をリリース。IT×リアルを掛け合わせたサービスを提供し、現在は東京・関西・名古屋・福岡で直営店を19店舗運営中。

子どものころに手に取った一冊の雑誌からファッションの虜に。ファッションメディアの立ち上げ、ファッションイベントプロデュースのアシスタント、ITベンチャーを経て、ECサイトでオーダーメイドスーツを提供する「FABRIC TOKYO」を起業。その想いや大事にしている文化について語ってもらった。

ファッションとの出会いは一冊の雑誌から

私は岡山県の出身で、どこにでもいるゲーム好きの中学生だったのですが、ある日親からそろそろ読んでみたらとファッション雑誌を渡されたのです。開いてみたらすごく衝撃的で興味を持ちました。それがきっかけとなってどんどんファッションにのめり込み、大学生になってからは、WEBでファッションメディアを立ち上げたり、ファッション好きのコミュニティを作ったりしていました。
 映画のスターウォーズが大好きなのですが、好きになると自分で作りたくなるんですね。消費者ではなく、作り手に回りたくなる。当初は起業を目指していたわけではなく、いずれ「スターウォーズのようなもの」を作りたいなと思っていたんです。これが実現できる、面白そうな職業がないかと調べていたら、ファッションの演出家という仕事を見つけました。「これだ!」と思い、香川から東京の会社に「働かせてください!」と飛び込みでお願いしに行きました。履歴書を渡した後、毎日「どうですか?」と電話していたら、アルバイトとして雇ってもらえることになり、大学4年の秋ごろに神戸コレクションのアシスタントの仕事のオファーをいただきました。こうしてファッション業界での仕事が始まったのです。
 私は当初、アパレル業界とは「未来を示す仕事だ」と思っていました。しかし現実は違っていたのです。ファストファッションの流行とも重なり、業界は不況の真っただ中。新しい風を入れられず、旧態依然とした業界に面白さを感じられなくなり、ファッション業界が嫌いになってしまいました。そんな時にベンチャーを起業した高校からの友人に再会したのですが、彼らがとても輝いて見えて、ITベンチャーは20代でもこんなに活躍できるんだと思い、新鮮な驚きでした。ちょうどその時、不動産ベンチャーの社長直下で学べる機会があったので、思い切って2年くらいマーケティングとセールスの勉強をさせてもらうことにしました。その後に、やっぱり自分で事業をやりたいなと思い、26歳で起業したのです。

ユーザーエクスペリエンスをデザインする会社に

ライフスタイルを自由にデザインできる会社になろうとの思いを込め、2012年に「Lifestyle Design」を起業しました(後に、ブランド名に合わせFABRIC TOKYOに社名変更)。服というのは人によって自分の中での「大事さ」が違いますよね。でも、朝気に入ったコーディネートができると、良い気分で出かけられます。ファッションとは自分に自信を与えてくれて、毎日を明るくしてくれるものだと思います。私が店舗にいる社員によくかける言葉に、「FABRIC TOKYOは洋服を売っているのではない」というのがあります。ブランドの語られ方、お店での体験、仕上がった洋服を着る体験、その全てを通して私たちは「ユーザーエクスペリエンス」をデザインしている会社だと考えています。
 また、FABRIC TOKYOの特徴はそのカルチャーにあります。組織文化、組織風土がユニークでして、それぞれの役職者が「偉い」という訳ではなく、代表も「役職」であると捉えています。みんなで補い合ってチームができているのです。楕円のように重なり合って真円になっていく形です。

価値観の共通化がお客様の満足度を高める

私たちには大事にしている「3つのバリュー」があります。それは“Vision Driven”、“Always Why, Always Run”、“All For One”です。1つ目は、組織には高いビジョンが必要だと思っています。個人では達成できない目標に対して、実現性をしっかりと示すことがトップの役割でもあり、そのビジョンに基づいて個々が働くことが大事です。2つ目は物事を考える時には理由の深堀が必要だと思っています。3つ目はサービスのクオリティの担保のためにも、全員で一つの事業を作っているという意識が大事です。これらを採用時にも大事にし、3ヵ月に1回の評価面談でも徹底的に「価値観」の擦り合わせをしています。

*message*

学生へのメッセージとしては、2つあります。1つ目は、「行動が早いと学べる時間が増えるよ」ということです。学校では起業も経営もなかなか学べないですよね。過去を振り返ってみても良かったことは、26歳という若さで起業し、行動したことです。その分だけナレッジは蓄積されるし改善もできますからね。2つ目は若いころは資産運用ではなく「自己投資」が大事だということです。中でも最強の自己投資は、今やっていることに全力で取り組むことだと思います。目標を立てて取り組み、結果を見て改善する。この繰り返しの中で、成長ができると思います。頑張ってください!

学生新聞2020年4月20日号より(慶應義塾大学4年 山本アンナ)

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