株式会社焼肉坂井ホールディングス 代表取締役社長 髙橋仁志

職人がつくる本物の美味しさを、世界へ発信していく。

株式会社焼肉坂井ホールディングス 代表取締役社長 髙橋仁志 (たかはしひとし)

■プロフィール

1968年生まれ。三重県松阪市出身。日本料理屋を営む両親の下で「食」への関心を募らせながら育つ。大学卒業後は三重銀行(現三十三銀行)に3年間勤務。その後、飲食業界でのキャリアをスタート。全国チェーン・ベーカリーの代表取締役などを経て2023年6月に76ブランド、450店舗以上の飲食店を運営している焼肉坂井ホールディングス社長に就任。

主力事業である焼肉をはじめ、寿司や居酒屋、中華、イタリアン、フレンチなど多業態での飲食店舗経営を行う株式会社焼肉坂井ホールディングス。昨年6月に社長に就任した高橋氏は、「既存ブランドのリブランディングによって全国・海外展開を目標にしている」と熱く語ってくれた。そんな高橋氏のこれまでの経歴や焼肉坂井HDの強み、経営戦略について詳しく伺った。

大学時代は、とにかく「一生懸命遊ぶ」ということをモットーに過ごしていました。スキーサークルに参加し、仲間と雪山へ行くことが多かったです。また、私の実家は日本料理屋を営んでいて、経営・商売は幼少期から身近にありました。朝から晩まで職人として働き続ける父の仕事を見てきて、「なんだか大変そう」と当時は子どもながらに感じていましたね。経営・商売の大変さを知っていたからこそ、私自身は、平日にはかっこよくスーツを着て、サラリーマンとして働くことが夢でした。その後、就職活動を始めて、様々な会社を見ていく中で、人と接する営業の仕事に1番興味を持ち、最終的には地元の銀行へ就職することになりました。

■独立を決意したきっかけは、父の存在と留学だった

銀行内で担当した業務は、企業への融資、営業などで、幅広く行員としての業務に携わっていました。しかし、3年で銀行を退職し、24歳で起業。当時、日本で流行りだした宅配ピザの事業を始めました。「少し前まで銀行員だった人がいきなり飲食業?」と思われるかもしれませんが、父が飲食業を営んでいることからも、社会人になってから、段々と独立への憧れを持つようになったんですね。もう一つ起業の大きなきっかけとなったのが、大学時代のロサンゼルス留学です。留学中にとある日本人の方と仲良くなり、その方の自宅へ伺ったところ、なんとビバリーヒルズにある大豪邸でした。「この人は一体何者なんだ?」と思ってしまいましたが、実はモスバーガー創業者の櫻田厚さんだったんですね。櫻田さんとの出会いもまた、いつか自分も日本の飲食業を盛り上げる担い手になりたい、という夢を持つきっかけになりました。

■全国・海外展開に向けての経営戦略

その後は、ベーカリーチェーン(三重県発祥の「513ベーカリー(東京含む12店舗展開)」)を立ち上げたり、日本全国、そしてアメリカ・中国にも展開する高級食パン専門店「銀座に志かわ」を運営する会社を設立するなど、今に至るまで食に携わる仕事に全力でコミットしてきました。今回当社の社長に就任した経緯は、これまで成功してきたこの流れで更なる経営者としての成長、宅配ピザから始まり、数多くの業態・ジャンルの飲食ビジネスと関わってきた私にとって、「外食の総合商社」とも言える当社は挑戦し甲斐のあるものでした。当社は焼肉をはじめ、寿司、居酒屋、レストランなど多くのブランドを運営し、現在ではその数は76を抱えます。いわば「76種類の美味しさ」が当社にはございます。その多くが歴史やストーリーのあるブランドで、全国展開や海外展開を目指すには、この歴史のある業態、老舗ブランドを令和版に生まれ変わらせる必要がありました。こうした戦略一つひとつがイメージとして点で浮かび、それを線として繋げていくことで確実に成功できると考えたんです。
当社の持つ強みは様々ありますが、やはり多ブランド展開は大きなポイントです。例えば主軸の焼肉では、オーダーバイキング形式とメニュー毎にご注文をしていただく2つの形式がございます。立地では郊外型と都心型、対象者も大衆向けのカジュアルレストランとハイクラスな方への高級レストランなど、客層を細かなセグメントに分けてそれぞれのニーズに合わせてアプローチできるようにしています。そのため目的ごとにお客様が自社を選んでくれるようになり、カニバリゼーションを避けられています。他にも、DX化によるオペレーションの効率化も進めていて、配膳ロボットやタブレットを使用したテーブルオーダー、モバイルオーダーなどの導入が完了していますね。
今後、さらに注力していきたいのが、FC事業です。現在全店舗の約3分の1がフランチャイズとなっていますが、やはり効率的に店舗数、収益を増やしていくには、フランチャイズ拡大が欠かせません。学生さんにとってFC(フランチャイズ)は、聞き馴染みはあっても実態が掴みにくいと思いますが、成功すれば加盟店、そして本部となる我々にとっても短期間で店舗数拡大に広がる事業です。当社にとっては、店舗運営を行う上での人材管理・育成を加盟店に担っていただけることがメリットとして大きいです。また飲食店開業にあたって、やはり重要となるのが「店舗運営」力と「商品開発」力の2つです。特にメニュー開発はノウハウがないと難しく、この部分を本部に任せられることが加盟店にとっては最大のメリットだと感じますね。当社はこの2つの力を備えて、充実したサポートを届けることができるため、その先の全国展開・海外展開が見えてくるのです。

■1人ひとりが「クラフトマン」であること

今後の展望としては、当社が抱える多くの外食ブランドの知名度を上げて全国的なブランドへと成長させていくことです。現在、西日本エリア、東日本エリアなど、特定の地域に集中しているブランドがございますが、これらのブランドも他のエリアに出店し、全国展開に繋げていきたいと思います。お客様が焼肉、居酒屋、寿司など外食を利用される時には当社のブランドが真っ先に頭に浮かぶようになっていければと思います。「そして外食といえば『焼肉坂井ホールディングス』」と、会社の認知度も高めていければと考えています。また、外食産業にとって、最も重要な経営資源は人であることに変わりません。会社として、社員1人ひとりがクラフトマンシップ(職人気質)を持ち続け、「食」を通してお客様に幸せを提供する。「食」を通してお客様を笑顔にする。スタッフ全員がこの想いを胸に美味しい料理、心からのサービス、そして、くつろぎの空間をワールドワイドに届けていくことが私たちの夢です。

■大学生へのメッセージ

皆さんもこれまで、食事で幸せな気分を感じられたことは数知れないほど多いと思います。当社では、その幸せのために日々、仕事に励んでいます。調理を行うスタッフもいれば、接客をメインに行うスタッフ、また、新メニュー開発、ポスターなどのデザイン担当、宣伝を行う広報担当など、幸せを創り出す職種はそれぞれです。ただ、チームとしての目的は一つ、お客様の幸せのためにです。私はこんな外食業界で働いてることは天職だと思っています。大好きな仕事です。大学生である皆さまの武器は紛れもなく「無限の可能性」です。その可能性を、とことん追い続けてください。興味を持ったら、そのことにチャレンジしてみてください。様々な経験の中で「理想の自分」を見つけられると思います。そして、社会でご活躍されることを期待しています。

学生新聞オンライン2024年2月29日取材 慶應義塾大学4年 伊東美優

武蔵野大学4年   西山流生/慶應義塾大学4年   伊東美優/法政大学2年   坂井りりあ/立教大学4年 須藤覚斗

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