カートエンターテイメント 映画・舞台監督 柿崎ゆうじ
映画を通じて、時代を越えたメッセージを後世につなげていく
カートエンターテイメント 映画・舞台監督 柿崎ゆうじ (かきざき ゆうじ)
■プロフィール
1968年生まれ、山形県出身。舞台や映画、TV番組など数多くの製作総指揮を手掛ける。映画最新作『コウイン~光陰~』では国際映画祭世界4カ国6部門にて最優秀作品賞や最優秀監督賞を受賞。また、今年で8回目の公演を迎える大戦中の特攻隊員と鳥濱トメとの交流を描いた舞台『帰って来た蛍~永遠の言ノ葉~』も製作総指揮・脚本・演出を務める。
特攻隊をテーマにした舞台『帰って来た蛍~永遠の言ノ葉~』やボディーガード時代の実体験をもとに制作し、4か国の国際映画祭で6部門を受賞した映画『コウイン~光陰~』など多数の映画や舞台に携わってきた柿崎ゆうじさん。彼が作品を通して、後世に残したいメッセージとは。
■経験ゼロから制作をする側へ
実は、最初は映画俳優になりたかったんです。中学生の時にブルース・リーを見たことがきっかけで、その夢を抱くようになりました。しかし、俳優としては芽が出なかったので、夢を諦め、20歳の時に日本初のボディーガードの会社を始めたんです。ハリウッドスターやアメリカの元大統領、スポーツ選手などのスーパースターを担当したりもしていました。さらには危険な場所に行って、死と隣り合わせの現場で、命がけで仕事に打ち込んだこともありました。刺激的な日々ではありましたが、ある時、自分は何をしたいのか考えた際に「自分は作品を通して世の中に何か訴えたいんだ」と思うようになりました。そして37歳頃に、初めて舞台のプロデューサーに挑戦します。しかし、これが意外と面白くなかったんです。プロデューサーの仕事は、監督や俳優さんたちの世界とは一線を画していて、まるで蚊帳の外状態だったからです。「もっと俳優さんとバチバチ意見をすり合わせながら作品を作りたい」という想いが生まれたことから、自分で脚本を作り、監督をするようになりました。
■作品とともに後世で生き続ける
作品を作る原動力は、自分の作品を見てくださった方の反応です。一番うれしいのは「作品を見て人生が変わった」という声ですね。逆に大変なのは、お金です。映画を作るには大体数千万から億単位のお金がかかります。その膨大な資金は、だいたい制作委員会が出資者を集めて確保します。ただ、それだと出資者からの口出しが多く、作品作りが制限されることが多々あるんですよ。だから私は自分だけでお金を用意して作っています。多分これをやっているのは、日本で私だけじゃないですかね。このように、伝えたいメッセージを伝えられるやり方で、自分たちの未来や後世に何かを訴えかけていくべきだと思っています。日本を冷静に見まわしてみると、世界情勢的にも、災害を考慮しても、不安な未来が待っています。そんな時代だからこそ、自分たちの子供の代まで考えた未来に向けて、メッセージを伝えることが自分たちの役割だと考えるようになりました。また、後の人にメッセージになる作品を作っていけば、自分が永遠に生きているのと一緒なんじゃないかとも思うんです。だからこそ、これだけのお金をかけて力を尽くして映画を作る価値があると思います。
■戦時中のありのままを伝えたい
人との会話や本を読んで生まれるような、日常の中に転がっている感動から作品の発想を得ています。日々よく感動するんですが、1度聞いたら忘れないような心震える感動を映画にしたいと思いますね。6月29日から始まる舞台『帰って来た蛍~永遠の言ノ葉~』は今から16年前に作った作品です。特攻隊の存在はもともと知っていたのですが、ある本を読んだことがきっかけで、17歳くらいの若者も参加していたことや、九州だけで1036名も隊員がいたという事実に加え、これから死ぬのに笑顔で子犬を抱いている写真や家族や大事な人に遺した手紙を通じて、彼らのあふれる想いを初めて知りました。この事実があったことを、多くの現代の日本人は知らないで生活をしていると気づき、同じ世代の若者に伝えたいという想いから、作品にしています。舞台を作るには莫大なお金がかかるのですが、満席になってもほぼ3000万円は赤字が出るのが決まっているので、覚悟は必要です。それでも、やらなきゃいけないと思ってやっています。
日本中から「大阪でもやってほしい」「毎年やってほしい」といった声が沢山あるのにも関わらず、予算の問題もあってなかなか実現できないのが苦悶ですね。それでも見に来てくださった方で、当時その場にいた方が「自分がかつていた、あの時あの場所と全く同じだった」という言葉に救われました。こういう声を聴くために、芝居をやっているような気もします。見どころは、再現性の高さです。当時の日記に書かれていることも参考にしながら作品を作っているので、「実は心根の優しい人達ばかりだった」というような世間には伝わっていない細かな部分も余さずに再現しています。
高いクオリティの再現度を実現するために、稽古中から意識したのは「1人のミスは団体責任」というルールです。メンバー全員で「なんとかこの感動を伝えよう」という想いがあったからこそ、この再現度を実現することができたんだと思います。
東日本大震災の避難所を題材にした映画など、まだまだ撮りたい作品はたくさんあります。今後も「大事な根幹は変えない」をモットーに、事実をつなぐような作品を発表していきたいです。
■大学生へのメッセージ
皆さんの前途はまだまだ果てしないものだし、夢も沢山あると思います。今の時代、安全保障問題や災害の多発など、大変なことが多い時代だと思うのですが、過去を遡るとどの時代も大変な世代はあったはず。そんな大変さを乗り越えてきた人たちがいたからこそ、歴史がつながっていくと思います。皆さんもこれから困難に直面するかもしれませんが、夢をしっかり持って、乗り越える気概を持ち続けてほしいです。
学生新聞オンライン2024年5月10日取材 上智大学3年 網江ひなた
舞台 帰って来た蛍 ~永遠の言ノ葉~
期間:2024年6月29日(土)〜2024年7月7日(日)
※7月2日(火)は休演日となります
場所:俳優座劇場 https://www.haiyuzagekijou.co.jp/
出演者:伊藤つかさ・竹島由夏
半井小絵・大鶴義丹・さとう珠緒 他
脚本・演出・製作総指揮:柿崎ゆうじ
企画・製作:カートエンターテイメント
X(旧Twitter):https://twitter.com/hotarublog
木更津総合高等学校3年 原颯太 / 昭和女子大学3年 竜澤亜依 / 京都芸術大学1年 猪本玲菜 / 慶應義塾大学3年 山本彩央里 / 上智大学3年 網江ひなた
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