衆議院議員 鈴木貴子

政治は見るものではなく “使う”もの

衆議院議員 鈴木貴子(すずきたかこ)

■プロフィール

鈴木貴子(外務副大臣、自由民主党 衆議院議員)
1986年1月5日、北海道帯広市生まれ。2008年カナダ・トレント大学卒業。NHK勤務を経て、2013年衆議院議員初当選。以来当選4回、防衛大臣政務官、党副幹事長、外務副大臣などを歴任。現在は党青年局長を務める。

27歳で初当選し、政治家として、外交・安全保障から子ども・子育て政策まで幅広く手掛ける鈴木貴子衆議院議員。「その声、鈴木貴子が届けます」をモットーに、地域の声をすくいあげながら、日々、政治の世界を邁進する。そんな彼女に、これまでの軌跡や政治家としてビジョンについて伺った。

今振り返れば、高校進学に向けた受験勉強は将来を考える大きなターニングポイントでした。元々は日本の高校に通う予定でしたが、塾の先生から「あなたの回答は面白いけど、採点者に受ける回答ではない」と言われたことがショックで、それをきっかけに受験や日本の高校進学そのものを考えるようになりました。これから国際化が更に加速すると考え、「英語の習得」そして「日本を知るためにも海外に出てみよう」と決心。自ら留学斡旋センターに出向き資料をもらって…治安も良く、学費も安かったカナダに決めて、親を説得。塾を辞めて、代わりに英会話に通い始めました。
ちなみに、カナダは「人種のサラダボール」と評され、それぞれの文化、伝統、価値観などが尊重されます。そんな環境だったからこそ、時に窮屈と感じた日本の素晴らしさや可能性を改めて発見することも出来たように思います。

■「不条理」を減らしたくて、政治の道へ

海外生活の中で、日本との違いに対する違和感を抱くこともありました。たとえば、メディアにおける政治的中立性に対する考え方です。
私がカナダ留学中によく見聞きしていた北米のメディアは、例えば選挙報道でも支持政党や候補者を明らかにした上で報道します。日本ではメディアが公に支持政党や候補者を標ぼうすることはありません。
各メディアが「自分たちの立ち位置」を明確にしていれば、視聴者もメディア情報を鵜呑みにするのではなく、より自発的に比較したりするのではないでしょうか。情報の洪水とも言われる世の中で、なお一層メディアリテラシーが求められることは明らかです。日本の民主主義を守り、発展させるためにも、情報の出し手も受け手も双方が緊張感を持ちながら時にけん制、また尊重することが求められるものの、そこが未成熟だと感じました。
そんな危機感から、卒業後は日本のメディア、特に国際放送を展開をするNHKを志望しました。当初は記者を志望していましたが、面接官に「記者よりもディレクターの方が向いている」と言われたため、ディレクター職を受け直し、入局しました。取材から、魅せ方など演出も考えるディレクターは今の仕事にも通じる点です。
私の家庭は、父も政治家であったため、常に政治は身近なものでした。ただ、政治家である父に対しては、世間からの目も様々で、世の中の不条理を感じることも多かったです。社会の声や権力によって、事実を事実として伝えようとしても声がかき消されてしまう。それがいかに酷いことかを、身をもって体感しました。「何事も経験」と言われますが、経験する必要のない「不条理」があると知り、そのために声を上げたいと思い、政治の道に入りました。

■妊娠に対して「おめでとう」以外の言葉をぶつけられる日本

初当選は27歳のときです。北海道の釧路・根室管内が地元ということもあり、北方領土問題の解決および日露平和条約締結に向け、当選直後から外交・安全保障に力を注いできました。安倍政権下では防衛大臣政務官を拝命し、岸田第一次・二次内閣では外務副大臣を務めました。と、いうのも各級議会がありますが、外交と安全保障に携わることが出来るのは国政を担う、国会議員のみです。言い換えれば、国政を担う者の責務だと考えます。
私生活では30歳で結婚、31歳で第一子を授かりました。妊娠を報告した際に、多くの祝福の言葉を頂きましたが、なかには「任期中の妊娠は職務放棄だ」「キャリアを捨てたのか」との声も寄せられました。新たな命の誕生に「おめでとう」以外の言葉をぶつけられる現実に強いショックを感じました。新たな命の誕生を喜べない国はいくら経済的に先進国と言われようとも寂しいもの。それから、子育てや教育といった政策にも力を入れ始めました。
初めての妊娠、出産、育児を自ら経験したからこそ、例えば、子育てに関する気付きや意見も、目の前の育児で手一杯。自分の時間も満足にも取れない多くのお母さんたちがいます。当事者だからこそ、その時に声をあげることも難しい現実もあります。政治の世界はまだまだ「男社会」でもあります。だからこそ、当事者目線の政策や意見を代弁すべく、子ども・子育て政策にも取り組んでいます。
また、防災・減災もライフワークです。日本が抱える三大巨大地震の1つ、日本海・千島海溝沖地震が選挙区にある上、NHK勤務時代に東日本大震災を経験し被災地取材も経験しました。自然の脅威を目の当たりにし、地震をゼロにすることは出来なくとも、備えが生死を左右する重要性を痛感しました。鎮魂の想いは、事前防災、減災対策として示したいと思います。
その他にも、持続可能な一次産業、国際協調、孤独・孤立対策に取り組んでいます。

■学生へのメッセージ

学生のみなさんには、政治はぜひ見るものではなく“使う”ものだと感じてもらいたいです。
日本社会では政治の話をすることはタブーという雰囲気があると思いますが、暮らしと政治は切り離せません。学校でも「政治的中立」を理由に政治や主権者教育すら十分に行われていません。しかし、18歳で選挙権を得たとたんに「選挙(投票)に行くのは義務」と言われることに、違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。また、日本では学校が独自に定めた校則があると思います。私が通っていたカナダの学校では、生徒は校則ではなく、あくまでも“社会一般のルール”が適用されます。ゆえに、「自分は社会を構成する一員である」という意識・自覚が醸成されやすく、結果として社会活動や政治にも“当事者”として興味関心が呼び起こされるのではないか、と感じました。
ぜひ日本の学生皆さんにも、社会を良くさせるのも、停滞させるのも自分だという意識を持って、行動してほしいです。自分が主体的になると、もっとワクワクする世の中になると思うし、それが本来あるべき姿だと思います。誰か一人が欠けた時に、回らなくなるのが社会ではありません。みんなで動かし、活性化させる社会、そして政治を目指していきたいです。

学生新聞オンライン取材 2024年4月22日 慶應義塾大学3年 山本彩央里

立教大学4年 須藤覚斗 / 慶應義塾大学3年 山本彩央里 / N高等学校2年   石川輝

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