アップコン株式会社 代表取締役社長 松藤 展和

イチからウレタンを学び、無限大の可能性を切り拓く

アップコン株式会社 代表取締役社長 松藤 展和 (まつどう のぶかず)

■プロフィール
武蔵工業大学(現東京都市大学)卒業後、ニューヨークのプラット・インスティテュート大学院に入学。卒業後は、オーストラリア・シドニーの大手建築設計事務所に勤務。その後設計から施工を一貫して請け負う建築設計事務所を立ち上げる。現地でウレタンの沈下修正工法と出会い、外資系土木会社の日本法人を設立。その後、環境に影響を与えないウレタン樹脂を使用した独自の沈下修正工法アップコン工法を確立し、2003年6月アップコン有限会社を設立。翌2004年2月アップコン株式会社に組織変更。
日本で初めてウレタン樹脂を使用して沈下修正を行った第一人者。

独自の工法を用いて、地震や地盤沈下で傾いてしまった建物構造物のコンクリート床の傾きを、独自に開発した硬質発泡ウレタン樹脂を使用して短工期で修正する「アップコン工法」の施工及び、ウレタンを使った新規応用分野への開発に取り組むアップコン株式会社は、スタッフは文系と理系が半々という建築業界には珍しい構成の中、新人への教育にも力を入れている。同社代表の松藤社長に、会社の魅力や手厚い教育システムについて伺った。

小さい頃から親の転勤の関係で引っ越しが多く、部屋の家具の配置を考えるのが好きな子どもでした。その延長で建築に興味を持ち、大学では建築学科で古建築を専門に学び、自宅の基本設計は自ら行いました。

実際に様々な経験をするなかで、設計に1年、建設に2年などと長期間かかる建設に関わるよりも、短期間でスピード感のある仕事のできるインテリアデザインに魅力を感じ、大学3年生の時には大学公認のインテリアデザインの研究会を設立しました。その中で、インテリアデザインについてアカデミックに説明できるようになりたいと思うようになったんです。でも、当時日本にはインテリアを学問として学べる学校がなかったため、世界のトップの学校を調べ、ニューヨークにあるプラット・インスティテュートに通いました。語学学校と大学院を両立した時期もあり、生涯で一番勉強した2年間だったと思います。
大学時代は勉強以外では、テニス同好会に所属し、テニスコーチのアルバイトをしていましたね。

■環境に安全な材料で沈下修正を

アップコンは3社目の会社として20年前に作った会社となります。1社目はオーストラリアで建築の設計施工を一貫請負する設計事務所、2社目は外資の沈下修正(※地盤沈下によって傾いた建物を、水平に戻す作業)の会社。そして、3社目であるアップコンは、環境に安全なウレタン樹脂を使った沈下修正の技術を日本で発展させるために設立しました。
インテリアデザインの設計から、土木の分野へ転換していますが、広い意味では建設業界なので、建築の知識が役に立っています。設計事務所では100点満点の設計、施工をすることは私にとっては当たり前でした。沈下修正の事業は、修正によって新築の状態まではいかずとも80点まで回復することで、とても喜んでいただけるのでこの道に進みました。

■施工者兼研究開発者となる

アップコン工法は、地震や軟弱地盤の影響で沈下したり傾いた建物を、「硬質発泡ウレタン」という特殊なウレタン樹脂を床下に注入するとすぐに化学反応で、ウレタンが発泡・膨張する力で傾きを修正する工法です。この工法は、傾いた建物の床下から床を壊すことなく押し上げ、コンクリート床をフラットに修正します。今までの方法では、建物を壊さないと修正できなかったり、商業施設などは営業の制限があったりというマイナス面があったために、沈下修正を躊躇する方が多かったのですが、アップコン工法ならば、既存の床を壊さずに短工期で修正できるので、よりお客様の喜びを引き出すことができます。また、新工法の研究開発も同時に行っています。一般的には開発は専任で行うと思いますが、当社の技術部員は施工者であり研究開発も行うことが特長です。

■イチからの学びを手厚くサポート

アップコンでは、特許も取得しており技術のノウハウもありますが、当社の一番の自慢は、技術部の新入社員の教育システムです。ウレタンについて教えている大学は世界にも無いため、文系理系問わず、会社に入社してから初めてウレタンについて学ぶことになります。そんな中、入社後3年間は基本から学べるマニュアルをはじめ、先輩のサポートや社長との面談など手厚く面倒を見てもらえる環境を整えています。だから、誰でもイチから学ぶことが可能です。入社2、3年目の社員を責任者などに抜擢することもあるし、4年目からは先輩たちと同列で競争できます。これらの経験を通して、新入社員が即戦力へと変わっていく瞬間が見られるのは面白いですね。
社長の責任は、自分がいなくても未来永劫に成長し存続していくような、会社が回るシステム作りをすることだと考えています。

■成長戦略

経営における今後の成長戦略として3つ挙げています。1つ目は、認知度を上げるをことです。特に中京・関西地域に対しては、昨年の12月名古屋証券取引所に上場したことをフックに、新規のお客様を開拓することで全国まんべんなく売上を上げようとしています。2つ目は、新しい市場を自ら作り、独占企業となることを目標とする研究開発に力を入れています。3つ目は、提携会社のあるベトナムを軸として、将来的には東南アジアだけでなく、先進国であるアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど、グローバル展開を考えています。

■勉強して成長するサイクル 

社員に対しては、「勉強する→成長する」というサイクルを大切にしています。なぜなら、お客様と同じ目線で接するためにも、絶えず進化し、絶えず勉強する必要があると考えているからです。大学を卒業したら勉強は終わりではなく、当社は卒業後が勉強のスタートとなります。アップコンでは、入社後10年で10個の資格を取ることを目標としています。日本では、35歳の時に10個以上の資格を持っている人は100万人中2000~5000人であるという統計があるため、社員には0.5%の人間になれるようサポートしています。社会人にとって仕事をすることは当たり前ですが、自由な時間の一部を勉強に使うなどメリハリも大切にしています。

■メッセージ

学生時代は、将来の進路に迷う時期だと思います。そして、就職活動が始まったら、ぜひ悔いなくやってほしいと思います。
その中で、私からひとつアドバイスがあります。せっかく就職活動をするならば、中途半端ではなく徹底的なリサーチを心がけてみてください。仮に面接などに行く時には、その会社のことを深く調べてみてほしいのです。もちろん事前に企業の下調べをして面接に臨む就活生がほとんどだと思いますが、そのリサーチ時間は5分や長くて10分ということが多いのです。電車に乗っている時間を使って30分ほどホームページを見ると、その会社がどんな会社なのか、何を大切にしているのかが見えてくると思います。その知識は、面接の受け答えひとつにも活きてくるので、就活において他の人と差別化する武器になるはずです。

学生新聞オンライン2023年11月17日取材 上智大学短期大学部2年 大野詩織

明治大学大学院1年 酒井躍 / 上智大学短期大学部2年 大野詩織 / 武蔵野大学4年 西山流生

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