株式会社物語コーポレーション 代表取締役社長 加藤央之

「なりたい自分」を描くことが、自分の人生を豊かにするはじまり

株式会社物語コーポレーション 代表取締役社長 加藤央之(かとうひさゆき)

■プロフィール
1986年愛知県生まれ。神奈川大学卒業後、物語コーポレーションに新卒入社。 店舗勤務からお好み焼事業部事業部長、業態開発本部本部長、副社長などを経て2020年9月に代表取締役社長に就任。経営理念推進・サステナビリティおよびマーケティング領域を管掌。

焼肉きんぐや丸源ラーメン、寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵など、多くの業態で成功を収めている物語コーポレーション。国内外の店舗数は700店舗を超える。今回は、そんな物語コーポレーションの代表取締役社長である加藤央之氏に、学生時代の話や物語コーポレーションの強み、大学生へのメッセージなどをお伺いした。

私が将来について真剣に考えるようになったきっかけは、就活の面接でした。「あなたのなりたい自分はどんな自分ですか」と聞かれ、答えられなかったのです。その面接があった夜、ファミレスに行き自分のなりたい将来像について初めて真剣に考えました。何日も考えた結果、自分はダサい大人にはなりたくない、すなわち、「かっこいい大人」になりたいのだと気づくことができました。
その後、「かっこいい大人」をブレイクダウンし、ロールモデルについて考えてみると、高校時代にバイトをしていたうどん屋さんの店長に行きつきました。私が彼のことをかっこいいと思った理由は、大きく2つあります。1つ目は、彼の人間力です。誰に対してもちゃんと自分の思ったことを口に出し、実行していた彼は、自分の中に芯があり非常に活き活きとしているように見えました。2つ目は、彼のプロフェッショナル性です。彼は1人で独立してうどん屋さんを運営していたのですが、仕事に対する真摯な姿勢に惹かれました。
そんな彼が独立前に働いていた会社こそ、この物語コーポレーションなのです。就職説明会に参加して経営理念である「Smile & Sexy」を知った時、彼は独立後もこの理念に従って生きていたからかっこいいのだと感じました。最終的に、この会社でなら自分は人間力とプロフェッショナル性を磨き、芯のあるかっこいい大人になれると思い、入社を決めました。
入社当初は、実は10年くらいこの会社で学んだのちに独立しようと思っていたのですが、今は社長をやっています。理由は2つあります。1つ目は、よりプロフェッショナルなことに挑戦できるからです。当然のことですが、多店舗展開を狙わず1店舗を繁盛させるのと、100店舗の出店を見据えた最初の1店舗を繁盛させるのだと難易度が違います。1店舗だったら技術がある料理人を雇うことや、実地調査でその地域に供給が足りていない店を出店することで勝つことができるかもしれない。しかし、100店舗だとどこに出店しても差別化できるということを考えなければいけません。自分はフードビジネスのプロとしてどちらにチャレンジしたいかという観点で、独立よりも物語コーポレーションでやっていくことを選びました。2つ目は、シンプルにみんなと働くことが楽しいからです。自分にとって会社の仲間はすごく大事であり、心温まる仲間です。彼らと一緒にこれからも働きたいなと思い、独立よりも物語コーポレーションを選びました。

■理念と人財こそが強み

物語コーポレーションの強みは理念と人財です。飲食業界はすでに成熟しきっているマーケットであり、明確な差別化を生み出すことは非常に難しいです。だからこそ、小さな差別化を積み重ねていかなければなりません。例えば、接客の質や仕入れルートの改善による値段の見直しなど、些細なことでも実践し、お客さまから選ばれるお店になることが大切です。そして、このような小さな差別化を生むのは、結局人なのです。
ここで指す人の定義を表しているのが、弊社の経営理念である「Smile & Sexy」です。Sexyとは自分の考えややりたいことを、誰に対しても臆せず正々堂々と発信しようという意味が込められています。しかし、いくら積極的に発信したとしても、その人自身が感じの悪い人であれば、周りからの協力を得られずやりたいことを実現することは難しいでしょう。一方、Smileには笑顔に象徴される人間力を磨き、応援される人になろうという意味が込められています。このように自己表現の姿勢(Sexy)と応援される人間力(Smile)を両立した人を目指すという理念に共感した人財が、弊社には集まっています。
また、この理念や一人ひとりの自己実現を後押しするために、社内ではさまざまな工夫をしています。例えば、新入社員ではなく幹部候補生、中途社員ではなくキャリア社員と呼ぶことにより、少しでも発言をしやすい環境づくりを行っています。他にも、月に一回「なんでも提案実行委員会」という新メニューの提案やオペレーションの改善案、人事制度への意見など、大小問わず店舗から意見を吸い上げる制度もあります。ここで挙がった意見は、幹部陣が精査して実行可否を決め、もしやらないものが出た場合にも全て理由付きで返答を行なっています。
このように理念に共感し、自己表現する姿勢がある人財が多いからこそ、たくさんの発信から議論が生まれ、深まり、弊社は焼肉やラーメンなど業態に縛られずに、お客さまに選んでもらえるお店でいられるのだと思っています。

■今後の展望

今後の展望として、「成長戦略3本柱」を掲げています。
1つ目は、選ばれるブランドづくり(NO.1戦略)です。国内市場はすでに成熟し、今後縮小していきます。だからこそ、お客様に選ばれるお店になりシェア率を上げていければなりません。そのために、今後も小さな差別化を重ねていきます。
2つ目は、成長を加速させる新業態開発です。一般的に、フードビジネスの会社が大きくなる時というのは、1つのヒットフォーマットが生まれた時だと考えています。最初のヒットフォーマットというのは、再現性のないひらめきから生まれたものだったりすることもあるので、この成功要因を自分たちの知見としてため、他のブランドにもどんどん拡大していきたいです。新たな業態はすぐに開発することはできないので、調子のよいブランドがあるうちに新業態開発に取り組み、未来の成長エンジンを今からつくっておく必要があります。ちなみに、3年前に初出店した「焼きたてのかるび」は、未来の成長ドライバーになれると期待をしています。
3つ目は、海外事業の展開加速です。日本の人口は減っていますが、世界の人口は増え続けています。例えば、インドネシアの平均年齢は29歳で、人口も増え続けています。このように今後伸びていく市場に身を置くことが重要だと考えています。他にも、北米や東南アジアの諸国にも展開を進めていきたいと考えています

■大学生へのメッセージ

一度きりの人生、ぜひ自分らしく生きてください。1日24時間のうち、8時間が睡眠、8時間がプライベート、8時間が仕事だとした時に、多くの人はプライベートを充実させようとします。一方で、仕事はお金を稼ぐための手段であり、耐える時間だと思っている人が多いのではないでしょうか?でも、もし、その仕事すら楽しめれば人生を2倍楽しむことができます。
そのために大事なことは、何事も自分自身の意見を持つことです。自分がいいと思うものは何なのか?自分だったらどうするのか?ということを考え、勇気を持って発信してみてください。物事を自分ごと化して、目標とする結果を追い求めていく。そこから生まれる「自分らしく生きているという充実感」が、自分の人生をより豊かにし、誇りを持つことにつながるのです。

学生新聞オンライン2024年6月25日取材 法政大学4年 鈴木悠介

法政大学4年 鈴木悠介 / 慶應義塾大学3年 山本彩央里

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