ミサワホーム株式会社 ITソリューション部 部長 兼 財務経理部 担当部長 滑川智之
DX推進で変革! 日本をリードする住宅メーカーのIT戦略とは?
ミサワホーム株式会社 ITソリューション部 部長 兼 財務経理部 担当部長 滑川智之(なめりかわ ともゆき)
■プロフィール
1993年横浜国立大学経済学部卒業後、ミサワホーム株式会社入社。神奈川県を中心に新築戸建住宅の営業に従事した後、本社に異動し2003年から約20年間財務経理部門に所属。2017年財務経理部長に就任、2023年にITソリューション部に異動し部門長として自社及びグループで利用するシステムの運営とIT・デジタル戦略に取り組む。
日本の総合住宅メーカーであるミサワホーム。同社独自技術の「木質パネル」を活用した建物は高い耐震性と気密性が特長。創立時から続く極地における建物建設のサポートなど、高い技術力が必要とされる分野にも挑戦を続けている。そのような技術や働く人を支えているITソリューション部で部長を務める滑川氏に、DXの魅力や可能性について伺った。
■入社のきっかけ
学生時代から「何か形に残せる仕事がしたい」という思いがありました。就活はちょうどバブル崩壊の直前で、金融業界が全盛期だったため、金融業界に進む友人も多くいました。金融業界と比較したとき、自分の努力や仕事の成果が“建物”という目に見える形として残る仕事に面白さを感じ、住宅業界に足を踏み入れました。住宅業界の中でもミサワホームは、ジョブローテーション制を取り入れていて、様々な経験ができるというところが魅力的で、入社を決意しました。入社後は、新築住宅の営業のほか、リクルーター、監査、などの部署を経験した後、財務経理の部署で長く仕事をしました。現在は、これまでのノウハウを活かし、ITソリューション部の責任者として、全国のミサワホームグループで使うシステムの運営やDX推進などを進めています。
■スピーディーな開発で事業を支える!
ミサワホームは、戸建住宅などの新築事業、リフォームを中心とするストック事業、商業施設やマンションなどを活かしたまちづくり事業、北米と豪州で展開する海外事業、医療・介護を組み合わせたウエルネス事業という5つの柱で経営を行っています。特に強みとしてあるのは高い技術力です。南極の昭和基地を作ったり、最近はJAXAと協力し月面に居住空間をつくる研究も行っていたりと、極地における技術開発にも注力しています。限られた人数で効率的に作業できる工夫をしていることが、他にはない独自性を生み出しています。
その中でも、ITソリューション部の役割は、お客さまに対して、満足度向上のためのよりよいサービスの追求と、社内に対して、柔軟な働き方ができるようDXを推進することです。これを実現するために、ITソリューション部ではインフラ企画課、情報システム課、ソリューション課、イノベーションプロジェクトという4つの部署が協力し、様々なサービスを提供しています。
今年4月、イノベーションプロジェクトという新しい組織を立ち上げました。IT・デジタルを活用し新しいことに挑戦していくために、グループ全社員に向けてIT・デジタルの活用案を公募。そこで集まったアイデアをそれぞれの事業分野に振り分け、検討を重ねました。その中から選ばれたアイデア実現のために、ITソリューション部だけではなく、各部門から推薦のあった適任者を兼務発令し、協働してプロジェクトを進めています。また、各取組テーマの仕様や機能を決めるにあたっては、実際に現場で業務に従事している人たちの意見をもらい、よりよいサービスの提供を目指しています。
進めていく中で最も重視しているのがスピードです。昔は細かくスケジューリングしてシステム開発を進めていましたが、最近は、とにかくトライアンドエラーを繰り返しながら改善していくアジャイル開発というスタイルで開発を行い、早い段階から現場で使えるよう挑戦しています。ITはとても移り変わりが早い業界です。自分たちで作り込みすぎず、世の中のトレンドを受け入れつつ、スピーディーに提供することを心がけています。
■DXの活用で「安心」を届けたい
DXの魅力は、一般的に認識されている内容の他に感動を生み出す可能性を持っているところです。「こんなこともできるんだ」という感動を自分たちが提供できたらいいなと思いながら取り組んでいます。一方で、システム開発には多くの投資が必要です。そのため投資額以上の価値を生み出すことが私たちの使命でもあります。「一部の社員ではなく、全社員に効果を実感してもらえるものを作らなければ!」という緊張感が、いつもあります(笑)。しかも、実は直接的な事業投資を除くと会社の中で一番お金を使うのが、システム関連の維持・開発です。だからこそ、予算の使い道が本当に効果的であるか、経営会議で数字を報告するようにしています。
今回のイノベーションプロジェクトも、今後どのような数字が出てくるのか緊張感もあり楽しみでもあります。
既に世間一般に普及しているDXの取り組みの一例として、在宅勤務があります。コロナ以降WEB会議やクラウドサービスの活用が進み在宅勤務が可能となった上に、就業時間にフレックス制が導入され、働き方改革により、子育て世代にとっては、これまでなかったほど子どもと接する時間が増えたよい取り組みだと思います。
DXと呼べるほどのレベルではありませんが、当社独自の取組の一例としては、自然災害に備えたハザードマップの作成ツールにも工夫を加えました。これまでは、いくつもある土地のデータを一つ一つ、プレゼン資料に落とし込んで準備していたので作成するのはとても大変でしたが、最近は住所入力だけで表示されるように変えたことで多くの土地情報を記載することができるようになり、お客さまには、より効率的に土地の比較検討を行っていただくことが可能になりました。住宅は人生の中でもとても大きな買い物だからこそ、お客さまに安心して土地を選び、住まいを購入いただけるように日々努力しています。
■変化に適応していく
当社は新築事業から始まり、今では様々な分野に事業を拡げてきました。今後も事業の構造は変化を続けていくものと考えています。この変化に伴って、システムも適応し続けていかなければなりません。世の中のテクノロジーの発展に置いていかれないように、常に最新の情報をキャッチし、どう我々のビジネスに組み込んでいけるかを考えていきます。
■大学生へのメッセージ
社会人になると、使える時間が非常に限られてきますので、たくさん時間を使える学生時代は日頃から自分について振り返る時間を持つと良いと思います。その日々の振り返りがきっと就職活動の成果にもつながってくるはずです。時間を使って、自分がどういうことがしたいかをしっかり考えてみてください。皆さんが自分の行きたい方向に進めるよう、応援しています。
学生新聞オンライン2024年7月9日取材 立教大学4年 緒方成菜
国際基督教大学2年 丸山実友/国際基督教大学2年 渡邊和花/立教大学4年 緒方成菜
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