三井住友海上火災保険株式会社 常務執行役員 津田卓也

未知のリスクにも対応できる、時代に合わせた保険をめざして

三井住友海上火災保険株式会社 常務執行役員 津田卓也(つだ たくや)

■プロフィール
89年早稲田大学理工学部卒業、同年住友海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)入社。
新種保険部長、商品・サービス企画部長などを経て、22年4月から現職。

自動車保険や火災保険などの損害保険事業に加えて、異常気象やサイバー攻撃に対するリスクソリューション事業まで、時代に求められる安心と安全を提供し続ける三井住友海上。今回は常務執行役員の津田卓也氏に、新たなリスクに対する取組や「DX×保険」サービスなどについてお伺いした。

■「最適化」することを学んだ大学生活

大学時代は、「経済学×数学×コンピューター」を掛け合わせた学問を専攻しており、その技術を用いて物事を「最適化」する研究をしていました。具体例としては、当時、手作業で行っていた電車のダイヤグラム計算と調整をコンピューターを用いて「最適化」する、といった感じですね。他にも統計や確率を用いて、効率の良い商品配置を考えたりもしていました。この経験から、数学やコンピューターの技術を用いれば、どの業界でも物事を「最適化」することができると考えるようになりました。
大学卒業後は、様々な業界と関わり、自身の見聞を広げながら、物事を「最適化」していく仕事がしたいと考えていました。その中で、金融機関での仕事に興味を持ち、大学の先輩の勧めもあって、当社への入社を決めました。
入社当時は、営業として新規の顧客獲得を中心に行っていました。製造業の方々と出会う機会が多く、ファイナンスに関する相談を数多く受けるようになりました。このとき、先方の技術に強く関心を持てたのは、大学の講義で学んだ知識のおかげですね。その後は、サイバー攻撃など新たなリスクに対応する保険商品の開発に携わりました。過去の統計データがない中、何がフェイクなのか見極め、正しい情報を集めることが、新たな保険商品を開発する上で大切だったと思います。

■データ流出防止にはトレーニングが最適

データマネジメント部としての仕事は、大きく分けて二つあります。一つ目は、サイバー攻撃を受けた際に自社の情報を守ることです。サイバー攻撃を防ぐ方法として、外部システムとのやり取りにフィルタリングをかけるファイアウォールの強化も行っています。しかし、それ以上に力を入れているのは、自社の社員に対するトレーニングです。代表的なサイバー攻撃の中には、怪しいリンクやウイルスが添付されたメールが送られてくる、フィッシングメール詐欺があります。メールを開いただけで、システムが乗っ取られたり、データが流出したりするおそれがあります。これらのメールを開かないように、日常の業務の中でトレーニングを行っています。
実際に詐欺メールに似せた訓練メールを社員に送付し、開封率や人数を調査することもあります。もしメールを開けてしまった場合は、個別にフィードバックをしたり、講座を受けてもらったりなど、念入りに対策を行っています。このトレーニングを繰り返し行ったところ、訓練メールの開封率は1%を下回るようになりました。しかし、データを守るうえでは0%が最低基準ですので、メールを開けてしまいやすい新入社員等を中心にトレーニングを継続しています。
二つ目は、誤って情報を流出させないことです。データ流出の原因で多いのは、メールの誤送信や書類の誤送付です。こういった事例にもトレーニングは有効であり、根本的な技術面や確認作業といった方法で対策を行っています。

■「何か起きた時」だけでなく「起きる前に」と「復旧する時にも」

これは、商品・サービス企画部時代の仕事ですが、当社では「DX valueシリーズ」という保険も取り扱っています。今までの保険は事故が起きたら保険金のお支払いをするのみに留まっていました。しかし、「DX valueシリーズ」では、事故が起きないようにする予防の段階や、事故が起きてからの復旧作業にかかる段階でもサービスを提供開始しています。
例えば、サイバー攻撃に対する保険を例にしましょう。この場合、予防の段階では、ウイルスを侵入させないために監視システムが導入できます。復旧の段階では、仮にウイルスに侵入されて、システムが破壊された場合にかかるデータ復旧費用やシステム復元費用なども補償します。このようにBeforeとAfterの両方をカバーできる商品を、自動車保険などでもシリーズとして展開しています。

■既存からの変化とバランスを取りつつ、未知のリスクと要望に向き合う

変化が常に起こる社会ですので、今までにない未知のリスクはもっと増えてくると思います。自動運転など技術の変化もあれば、為替やパンデミックといった経済環境の変化もあります。こういった社会の変化が、当社の保険商品にどう影響するか、常に考え続けていく必要があります。
損害保険会社は、サービス提供するシステムを24時間機能させ続ける必要がありますので、サイバー攻撃やシステム障害などでサービスが使えなくなることは許されません。そういった事態を未然に防ぐためにも、新しい技術を取り入れながらシステム基盤を「最適化」していくことが重要です。ただし、新しい技術を取り入れることで起こりうるリスクも考慮しなければなりません。既存の技術と新しい技術とのバランスを取りながら、時代やお客様に求められるサービスを提供し続けていきたいと考えています。

■学生へのメッセージ

キャリア形成には、学生自身が「自ら選ぶ」姿勢が非常に大切です。会社の知名度や待遇で仕事を選ぶと、理想と現実にはギャップが生じてしまいます。会社と学生はフラットな関係にあるので、学生の皆さんが会社を「自ら選ぶ」という感覚を強く持ちながら、キャリア選択を積極的に行ってみてほしいです。

学生新聞オンライン2024年8月28日 武蔵野大学4年 西山流生

東洋大学2年 越山凜乃/津田塾大学2年 石松果林/武蔵野大学4年 西山流生

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