株式会社キッズスター 代表取締役 平田全広

『ポジティブな疑似体験を通して、子どもと社会の距離を縮めたい』

株式会社キッズスター 代表取締役 平田全広(ひらたまさひろ)

広告制作会社に3年従事後、バックパッカーとして海外を旅し、(株)サイバーエージェント⼊社。アメブロ事業⽴ち上げに従事し、メディアマネージャーを務めた後、(株)アイフリークモバイルに入社し、コンテンツ事業部⾨執⾏役員就任。⼦どもが⽣まれたことをきっかけに⼦ども向け事業を⽴ち上げ、 2014年より(株)キッズスターの代表取締役を務める。

ゲームを通して、実在する企業の体験が出来る知育アプリ『ごっこランド』は、子どもたちが社会の仕組みを学べる上、新しい企業のファン作りにも貢献している。そんなサービスを提供する株式会社キッズスターの代表取締役平田全広さんに、『ごっこランド』の構想までや魅力、今後の展望についてまで伺った。

■様々なことを考える時間になった2年間の旅

旅をするのが好きで、学生の頃はインドなどアジア諸国を周りました。大学卒業後も3年間広告会社で働いた後、バックパッカーとして海外放浪の旅を2年くらい経験しました。サッカーとプロレスがずっと好きだったので、本場を見に行こうとヨーロッパや南米、中米など32か国を巡りました。時間がたっぷりあったので、色々なことを考えながら、自分自身の考え方が形成することができた有意義な時間だったと思います。特に、たくさんの国をまわる際は、事前にその国のことを調べて行くのではなく、現地で聞いて宿を取ったりしていたので、思い立ったら、臨機応変に行動するという考えが身につきました。また、この経験があったからこそ、多少の事ではビビらなくなったと思います。

■新しい出会いがくれた起業という新しい選択肢

帰国後はサイバーエージェントに入社し、藤田社長をはじめ、インターネット業界で同じ年代の人たちが新しい事業を立ち上げているのを目の当たりにしました。これまでベンチャーや起業という選択肢は考えていませんでしたが、サイバーエージェントの中で上昇志向の強いギラギラした人達が、自分達の責任で事業を運営している姿を見て、「自分もできるかもしれない、やってみたいな」と思うようになりました。サイバーエージェントで働いた8年間はしんどい部分もあったけれど、楽しい部分もあり、これと同じくらい熱量を持ってできることがしたいと考えていました。その後、子どもが生まれ、育てていく中で、絵本などに触れる機会が増えていきました。絵本は自分達が幼かった時と変化がないと感じ、もう少し現代に合わせて、なおかつ自分のインターネットの経験も生かせるような事業が出来ないかなというところから、キッズスターが始まっていきました。

企業がもつ思いをゲーム体験を通して伝える『ごっこランド』

『ごっこランド』は実在する企業やブランドの仕事や取組みを、ゲームで体験できる社会体験アプリです。企業の広告だと歯磨き粉を“売る”ことが中心になるけれども、例えば、ライオン株式会社さんは“虫歯を無くすこと“を目標として歯磨き粉を提供しています。虫歯を無くすには歯磨き粉で歯を磨くだけじゃ足りないので、定期的に歯医者も一緒にセットで行くことが大切です。そのことを伝えるために、歯を磨いた後でも汚れは残っていること、歯医者でのクリーニングやフッ素塗布をすることもゲーム化して表現しています。現在80社もの企業が出店しており、体験の種類の豊富さは他と比べても一番です。各企業が目指すビジョンを子どもたちに理解してもらうために、かみ砕いて、どうゲーム化していくのかを考えるのは骨が折れる部分でもあり、やりがいでもあります。

ゲームでの体験をリアルな体験に繋げてほしい

ゲームをつくる上で大切にしているのが「子どもテスト」という開発工程です。
事業開始当初から続けていて、ゲームをリリースする前に子どもたちにプレイしていただき、反応を見て、ブラッシュアップしています。子育て中の社員も多いため、親目線と子ども目線のゲーム作りにこだわっています。
そしてもう1つ大切にしていることがあります。それは、ポジティブな疑似体験が能動的な行動を生むということです。子どもが幼いころは親御さんがすすめた物をやることが多いと思いますが、子どもが自ら「やってみたい!行ってみたい!」から行うリアルな体験は、学びの深さが変わります。実際私たちは『ごっこランドEXPO』というリアル体験イベントも、大型ショッピングモールなどで開催しているのですが、1開催あたり約2000名に参加いただいています。ゲーム内で「私も出来るかも」という成功体験を積み重ね、リアルなアクションに結び付けて欲しいと考えています。

■子どもたちにとって社会をもっと身近に

『ごっこランド』は企業との接点作りやファンを増やす動きを、子どもたちを通して行っています。例えば、街を普通に歩いているだけでは気にならなかった看板などに対して、子どもが突然「あれ知ってる!この店ってこんなものがあるんだよ!」と親御さんに話しかけてくるといったご感想をいただくことがあります。楽しく遊びながらも様々な知識を自然に得ることが出来ます。学校はどうしても社会と切り離されている部分があるので、ゲームを通じて、子どもと社会の距離を近づけていきたいと思っています。

 『ごっこランド』には、約20万件ものレビューをいただいています。当初からお父さんお母さんの口コミをベースとして広がり、現在では700万ダウンロードを突破。どのゲームも月に20万回近く遊ばれています。現在は、子どもたち本人からのレビューが一番多いです。レビューには、ゲームに入れて欲しい企業名がリクエストされることもあるので、実際の子どもたちの声を聞いて営業に行くこともします。我々にとってレビューが全てと言っても過言ではありません。

■『ごっこランド』を世界中のもっと多くの子どもたちに

 2023年8月からは、海外版である『Gokko World』をベトナムで配信し始め、日本版より早いペースで累計120万ダウンロードを突破しています。『ごっこランド』のゲームは、3歳の子どもから遊べるゲームなので、流れる音声の言葉が理解できれば海外でも変わらずプレイしていただけると確信を持てました。ベトナムをしっかり成功させ、次はインドネシアに広げていこうと考えています。2024年の日本の子どもの出生数は約70万人ですが、インドネシアは約400万人もいます。現在、経済発展もしている中、『ごっこランド』の意味合いが増し、活用する企業さんも増えていくはずです。まず、日本で築いた1位をアジアで獲りにいきたいと思っています。

■大学生へのメッセージ

自分自身、はじめから起業家を目指していたわけではなく、広告会社で働いたり、バックパッカーになったり、その時にあった自分のやりたい事を突き進んできました。大学生の段階で「これをやる!」と一本に決めなくても、なにか始めてみて、思い切ってそこにどっぷりはまって夢中になって、また違うものが見たくなったら次に行けば良いと思います。給与の高さや有名だからという点だけに引っ張られ過ぎず、好きや得意を生かせ、自分が成長できる環境を一番に考えて、将来を選んで欲しいなと思います。そうした選択の積み重ねが、今後の人生で、本当にしんどい時、乗り越えられるパワーになるはずです。

学生新聞オンライン2024年11月14日取材 東洋大学2年 越山凛乃

東洋大学2年 越山凛乃/大妻中野高等学校3年 加藤眞優花/国立音楽大学4年 岡部満里阿/城西国際大学1年 渡部優理絵

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