太陽ホールディングス株式会社 代表取締役社長 佐藤英志
自ら考えて動く、自律した社員が集まる会社に

太陽ホールディングス株式会社 代表取締役社長 佐藤英志 (さとうえいじ)
■プロフィール
’69年、東京都出身。’92年、大学卒業後、監査法人トーマツへ入所。’99年、株式会社エスネットワークス設立。 その後、株式会社有線ブロードネットワークス(現株式会社USEN)常務取締役、株式会社ギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ株式会社)取締役副社長等を経て、’11年、太陽インキ製造株式会社(現太陽ホールディングス株式会社)代表取締役社長に就任。
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私たちが日常で使う電子機器に欠かせないのが、ソルダーレジストという電子基板に塗布する絶縁インキ。このソルダーレジスト製造において世界トップシェアを誇るのが、太陽ホールディングス株式会社である。常にスピード感をもって先を見据える代表取締役社長の佐藤英志さんに、会社の魅力や展望、大事にしているマインドなどを伺った。
■学生時代から大事にしている、人の話を聞くこと
学生時代に公認会計士の試験に合格し、卒業後は監査法人トーマツに入社しました。会計士を目指したきっかけは、中学生の時に体育の先生から言われた「お前は会計士になれ」という一言でした。大学1年生の時に一度はあきらめたものの、大学3年生で就職を考えた時「何かやらなきゃ」と思い、再び会計士の勉強を始めました。先生からの一言がなければ会計士になっていないですね。
アルバイト先はラーメン屋で、気づけば従業員が20~30人にいる店を任されるくらいの立場になっていました。父親よりも年上の人にも指示を出さねばならない上、様々な事情や個性を持った人達がいたので、大事にしていたのはとにかく人の話を聞くことです。実際、聞く姿勢を持つようになってからは、周囲から色んなことを教わることが出来ました。この姿勢は、今も心掛けています。
自分がいまの会社の社長に就任してからも、特に重視しているのがコミュニケーションです。その環境づくりとして、まずは社員食堂を作ることから始めました。きっかけは、11年前に元々あった食堂をリニューアルした時。そのときの社員のうれしそうな顔を見た瞬間に「これだ!」と思いました。現在、より一層食事と空間にこだわった立派な食堂を作った結果、いまでは社内のコミュニケーションの場の中心になっています。
■自分で考えて動くスタイルへのシフト
私が監査法人トーマツに入社し、初めて名刺交換をしたのが太陽ホールディングスの社長でした。その後、独立した時に、社長に声を掛けていただき、グループ会社の会計顧問に就きました。
社長に就任して力を入れたのは、「人に代わって仕事をしてもらうこと」です。当時はオーナー企業だったので、社員たちは言われた通りに一生懸命やるというスタイルが一般的でした。そこで、私が新たに目指したのは、自走する組織です。上からの指示を極力出さないように意識し、指示はなくても社員が自分で考えて動く。そんな自律したスタイルに変えていこうと、経営理念を変えたり、ユニフォームを無くしたりと注力しました。これはすべての社員に自律した意識を持ってもらうためです。結果、自律型社員が増えた事で、社内も会話が増え、明るくなった印象があります。
■世界トップシェアを誇る理由は、これまでの実績とスピード感
太陽ホールディングスは、プロジェクターやパソコンなどあらゆる電子機器に使用されるソルダーレジストの販売・製造などを行っています。一般基板用で世界の約5割、半導体パッケージ基板用では約8割のシェアを占めており、世界シェアトップクラスを誇っています。これだけのシェアを誇り、他社が真似できないのは、私達がいち早く参入し幅広い特許を取ったからです。特許が他社の参入障壁になり、太陽ホールディングスはこれまで多くの実績を作ってきました。車や半導体の世界では実績が重視されるので、実績がないと参入することが難しいのです。
実は私たちが高いシェアを誇るようになったのは、スマホが登場してからです。初期のスマホに採用されていた基板に、弊社のソルダーレジストが使われていました。以来、スマホ向けではスタンダードな材料となっています。
仕事の中で大切にしているのは、言われたときにすぐ材料が出せるという、スピード感です。我々のバリューであるスピード感を実現させるため、マーケティングチームが世の中のニーズを察知し、お客様が「ほしい」と口に出す前に「次はこういうのが必要なんじゃないか」と技術メンバーに伝え、用意しておくことが必要になります。お客様が「ほしい」と口にした時には、すでに出せる状態でないと遅いのです。常にお客様の先を読んで、用意をしていく意識が大事だと感じます。
■恐怖心を背景に参入した医薬品事業
業績については、2000年からずっと右肩上がりに見えるのですが、4年に1回ぐらいガタっと業績が落ちることがありました。業績が落ちた時とは、「もう復活しないのでは」と思うぐらい怖い状況です。元に戻ったとしても、「また同じことが起こるのでは」と会社にとって強烈な不安感が生まれます。
その不安を抜け出したいという思いで、安定的に需要がある医薬品事業に参入しました。一見、電子基板や半導体とは関係ない業界に見えるのですが、そこには矛盾はありません。太陽ホールディングスは、エレクトロニクス製品を作っているというより、化学を強みにしている会社です。車やスマホを作るよりも、同じ化学という土台に乗っているケミカル(化学)が関わる医薬品事業を行う方が、関連性や信用性は高いと考えました。事実、医療・医薬品業界に参入してから、業績も安定しています。
現在は、受託生産での薬の製造を伸ばしていこうと考えています。医薬品業界での一定のシェアを目指し、自分たちの技術がないと作れない薬を世の中に提供したいと思います。これまでにエレクトロニクス製品で培ってきた技術力を、存分に生かした挑戦ができればと思っています。
■原動力は楽しむこと
一緒に働きたいのは、自律していて、事業を通して何か世の中に訴えることを楽しめる人です。私自身も、自分が楽しむことを大事にしています。新しく工場を作ったり、新しい事業に挑戦したり、自分が楽しみながら事業を行うからこそ、いち早くスピード感を持って取り組める。だから、結果に繋がっています。仕事は楽しいか、楽しくないか。その軸を持って仕事を選ぶ視点も、ぜひ忘れないでくださいね。
■大学生へのメッセージ
いつの時代も型にはまりたがる傾向がありますが、それを一歩外してみる習慣をつけてみてください。大学生だけど、株の勉強をする、趣味の資格を取ってみるなど、あえて人とは違うことをやってみる試みは非常に大事です。就職人気ランキングがありますが、数年後にはその企業がどうなっているか分かりません。皆さんは、いま現在人気がある会社に入りたいかもしれませんが、もっと長期的な視点で物事をみて欲しいなと思います。私自身も、「他人は興味を持たないが、これからもっと伸びるだろう」と信じてやってきたことが、現在の結果に結びついていますから。ぜひ、「他人と違う試み」や「他人と違う関心」を大事にしてみてくださいね。
学生新聞オンライン2025年1月22日取材 東洋大学2年 越山凛乃

城西国際大学1年 渡部優理絵/東洋大学2年 越山凛乃/東京大学4年 吉田昂史
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