東京都知事 小池百合子
経験やひらめき、私の”好き”を大切に、主体的に挑戦する

東京都知事 小池百合子(こいけゆりこ)
■プロフィール
1952年兵庫県芦屋市生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビキャスターを経て、1992年参議院議員当選。1993年から衆議院議員に。環境大臣、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当)、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣、自民党総務会長などを歴任し、2016年東京都知事に就任。現在3期目を務める。
■学生時代について
私は昔から海外の大学へ進学したいと決めていました。父の本棚にあった中東についての本を目にしたことをきっかけに、エジプトのカイロ大学に留学。英語の他に将来プラスになると思い、アラビア語を選びました。私は「世界の全ての国を周る」夢を抱いていて、留学中も帰国後も、工夫して挑戦しました。訪れた国で必ず1泊するというルールを設け、モロッコやリビアなど、アラブ、アフリカから始めて、1カ国ずつ地図を塗りつぶしていきました。ソビエト連邦が崩壊した際に、夢は断念しましたが、今でも気持ちは変わりません。現場主義ですね。
■子育て支援や女性が活躍できる環境づくりとは
さまざまな調査では、結婚したら子どもは2〜3人欲しいとの答えが多いのですが、実際は子どもは1人で精一杯というのが現状です。出会いから結婚、妊娠・出産、子育て、教育まで、切れ目なく環境を整え、ニーズに沿った選択肢を増やすことで、次の世代を担う人材を育てたいと考えています。また、女性は学校で勉強ができたとしても、社会に出ると重要な仕事を任されない傾向がいまだにあります。性別による固定的な役割分担意識は解消しなければなりません。意思決定の場に女性を増やすためにもこれは重要です。東京都では、あらゆる場面で女性が持てる力を発揮できるよう、”Women in Action” を掲げ、その頭文字WA、つまり女性活躍の「輪」を拡げる取り組みを行っています。都の最大の財産は人です。性別や年齢に関係なく、誰もがやりがいを感じる、共感が生まれる都政にしていきたいですね。
■学生へのメッセージを
東京都ではスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo」を開催しています。最先端の技術やアイデアで世界共通の都市課題の解決を目指します。2年前にゼロから始めた取り組みですが、早くもアジア最大級に育ちました。次世代を生きる若者の皆さんも、できることから積極的に挑戦し、主体的に生きていってほしい。ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏も、初めはガレージや小さな場所からスタートしています。若いときに皆さんが得る経験やひらめきをチャレンジの糧にして、将来の時代の牽引役になってくれることを期待しています。
現代社会は情報が溢れ、世の中の動きも激しい。だからこそ、自分の好きなことが最後の選択として残ります。人生は長い。“自分が好きなことは何か”を立ち止まって考えてみるのもよいと思いますよ。
学生新聞2025年4月号 国立音楽大学4年 岡部満里阿
<中高生新聞 スペシャルインタビュー>
2016年に東京都初の女性知事となり、今期3期目を務める小池百合子知事。知事は「東京大改革」を掲げ、子育て支援策や若者・女性など誰もが活躍できる環境づくり、経済の活性化などに取り組み、「世界で一番の都市・東京」の実現を目指して都政を運営している。このように大車輪で活躍中の知事に、重点政策について伺った。
人こそが最大の財産。誰もがやりがいの持てる社会の実現を!
父の本棚にあった中東についての本を目にしたことをきっかけに、エジプトのカイロ大学に留学しました。私は留学時代はもちろん、帰国後も「世界のすべての国をまわる」夢を抱いてたくさん旅をしました。特に体力がある若いうちは行きづらいところをまわろうと思い、アラブ諸国やアフリカを中心に旅をしました。中東戦争が始まって旅がしにくくなるまでリビア・アルジェリア・モロッコなどの北アフリカ、レバノン・シリア・ヨルダンなどの中東を訪れました。これらの旅を通して学んだことは、現場に行ってみないと分からないことがあまりにも多い。今やテレビやインターネットで知識をつけ、行った気分に浸ることはできます。しかし、その国の人々の生活や考え、においなどは、実際に訪れてみないと分からないと痛感しました。
たとえば、当時飢餓が問題になっていたエチオピアに行ったときは、現地のTVでは痩せる体操を放送しており非常に驚きました。同じ国でも支配部族の首都と敵対勢力の地方では全く事情が異なるのです。
その後、39歳のときに参議院選に出馬し、議員になるまでに約60カ国は訪問しました。
本当はもっと速いペースでまわろうと思っていたのですが、キャスターとして毎日の生放送があったことと、1991年のソビエト連邦崩壊で多数の国家が次々と独立し、ゴールが遠のいたため、断念しました。今でも知らない場所に足を運んでみたいという気持ちは変わりません。政治家になった後も現場主義を大切にしています。
■人という財産を育てる支援
昔も今も、結婚や子育てを望む人の理想は変わりません。さまざまな調査で子どもは2~3人欲しいとの回答が多い一方、出産・子育てのリスクや負担を懸念し、子どもは1人が精一杯と考える人も増えてきています。
現代では共働きが主流となっていますから、男性も女性も育児をしやすい環境を社会全体で整えることが大切です。
都では、皆さんの立場やニーズを第一に考え、出会い・結婚、妊娠・出産、子育てといったライフステージを通じたシームレスな支援に力を入れています。
これまで、卵子凍結への支援、0歳から18歳のお子さんに月額5000円を支給する018サポート、第2子以降の保育料無償化など、国をも先導するさまざまな支援を次次に打ち出してきました。
教育に必要な負担を減らすため、都内の全区市町村での学校給食費の無償化や、高校等授業料の実質無償化にも取り組んでいます。
今年9月からは保育料等の無償化を第1子まで拡大するほか、10月には無痛分娩を希望する方への費用助成を始めます。また、妊娠時や出産後などに合計22万円相当の経済的支援を行っており、今年度からこれを5万円分増額します。
人こそが東京の最大の財産です。暮らしやすく、学びやすく、子育てしやすい。一人ひとりの自己実現を全力で応援していきます。共感が生まれる都政にしていきたいですね。
■次世代のイノベーターを育てる
いまや時価総額ランキング常連のGAFAMを立ち上げたビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏も、最初はガレージからスタートしたと聞きます。日本でも、松下幸之助氏のパナソニックや本田宗一郎氏のHONDAは、小さな町工場から事業を始めました。彼らのように若いうちから自身のひらめきや情熱に従ってチャレンジし、将来の時代を引っ張っていくような若者を育てていきたいと私は考えています。
デジタル化で学び方も変わり、学校の選択の幅も広がってきています。こうした教育環境や社会的ニーズの変化などを踏まえながら、自分らしく成長できる、自由で多様な学びをこの東京で展開していきます。
また、若い人たちにとって、アントレプレナー(事業をゼロから創り出す起業家や事業家)から直接話を聞く機会は貴重です。都は、昨年からの新たな取り組みとして、アントレプレナーシップ育成プログラム“TIB Students”を実施しており、第一線で活躍するアントレプレナーによる中学・高校での出前授業や、Tokyo Innovation Base(TIB)での講演活動を行っています。
TIBは、都が有楽町に設置した国内最大級のスタートアップ支援拠点で、一昨年のプレオープン以降、来場者は14万人を突破。多様な人々が集い、交流する結節点として機能しています。ここにはITAMAEという学生グループも活動していて、都が主催するスタートアップカンファレンス“SusHi Tech Tokyo”の学生パビリオンの企画立案・運営などを行っています。世界で活躍し、イノベーションを生み出す若者たちが、この東京からどんどん育っていってほしいですね。
■中高生へのメッセージ
自分がこれにチャレンジしてみたいという気持ちを大切に、主体性を持つことが大事だと思います。今の世の中は動きが激しく、情報も溢れています。だからこそ一度立ち止まって、自分は何が好きなのか、何を大事にしているのかを考えてみてほしいです。人生は長いです。ぜひ好きなものを見つけて、素敵な人生を歩んでください。
中高生新聞2025年4月号 法政大学4年 鈴木悠介

法政大学4年 鈴木悠介/N高等学校2年 服部将昌/国立音楽大学4年 岡部満里阿/日本大学4年 鈴木準希/東京大学4年 吉田昂史
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