陸上自衛隊 東部方面衛生隊長 1等陸佐 松田桃子

自衛隊訪問 ─ 陸上自衛隊
国民の命を支える仕事 東部方面衛生隊

陸上自衛隊 東部方面衛生隊長 1等陸佐 松田桃子(まつだ ももこ)

■プロフィール
1997年、東北大学を卒業後、幹部候補生として陸上自衛隊に入隊。第1後方支援連隊衛生隊(練馬)、防衛医科大学校学生部(所沢)、陸上幕僚監部衛生部(市ヶ谷)、衛生学校教育部(三宿)、中部方面総監部装備部(伊丹)などを経て、2022年3月より現職。

災害や非常時の最前線で、人々の命を支える衛生隊。隊員の健康管理から災害現場での患者の治療までを行う文字通り生命線だ。いざというときに活躍できるよう、普段からその対応力を磨いている。どのような思いで訓練をしているのか、仕事のやりがいとはなど、衛生隊長の松田桃子さんにお話を伺った。

■どのようなお仕事ですか

衛生隊の指揮官です。衛生隊は、患者の治療や搬送、健康管理などの医療の提供を任務としています。医師、歯科医師、看護師、救急救命士などさまざまな資格を持った自衛官で構成されています。隊長の私は隊員の指導から人事・総務までを担っていて、管理者として部隊を統括しています。また、経験値や専門技術が異なる隊員たちをより良いチームとするために、そのような場を提供することに日々工夫しています。
自衛隊は、災害派遣や国際活動をはじめあらゆる事態において求められたときに活躍できる人と部隊を育てることが仕事であり、普段からそのための訓練に注力しています。
たとえば、災害派遣を想定した訓練をするときは、移動計画を立て、救護施設を作る訓練、そこから医療施設まで患者を搬送し、患者の状態を把握する練習などを行います。そして患者が発生する第一線から治療を担う病院までの連携を日々強化させることで、非常時に備えています。

■仕事の魅力を教えてください

「必ず必要とされる」ことです。人がいるところにはその人たちの身体と心の健康を守らなければなりません。そこには必ず「衛生」の機能が必要とされます。隊長としては、隊員の成長を見られるところも大きな喜びです。防衛医大で勤務した頃、大学生だったのに今は立派な医官(医師たる幹部自衛官)となって一緒に勤務したり、たくさんの隊員が新たな資格を取ったりスキルを身に付けたりする様子を近くで見ていると、「人の命を救う者たちが育っている」という実感が得られます。現場で人を救うだけでなく、人を救える人材を育てることもまた一つの人助けだと思っています。それぞれの隊員の能力を上げて、チーム全体で人助けをする。このことに貢献できる点で、私が学生の頃に阪神淡路大震災での自衛隊の活躍を見て抱いた、「将来は現場で人の役に立つ仕事がしたい」という思いは実現できているなと感じています。

■大切にしていることは何ですか

まず、チームワークです。衛生隊は人と関わる仕事なので、医療技術だけでなく人に対する関心や配慮などが必要です。施設や器具が充実している病院とは違って、衛生隊はどのような状況で対処するか分かりません。一人の優れた医者がいるだけでは患者を救えないのです。過酷な状況でも患者を診ることができるチームの連携が重要なのです。
また、常に学ぶ姿勢も大事にしています。自衛隊には「立場が人を育てる」という考え方があります。「仕事ができるからこの役職に就く」のではなく、「この役職に就くから成長する」と考えるのです。私も数々の勤務の中で理想と現実の差を埋めようとする意識を身に付けました。先輩に教えられた「部隊は隊長を写す鏡だ」という言葉から、部隊のミスは隊長に至らない点があるからなのだと学びました。
うまくいっていないときは必ず原因があると考えて、理想を求めるだけではなく、現場と現実を大切にするようになりました。辛い訓練や現場もありますが、部隊のチームプレーに貢献しようと努める小さなやりがいと、たくさんの患者を救うという大きな目標のために、学び続けることを大切にしています。

■学生へのメッセージ

今しかできないことをやってほしいです。学生時代の経験は何がいつ役立つか分からないので、やらないより挑戦する方が良いです。そして今苦手なことや嫌いなことはいつしか変わっていくので、こだわりを持ち過ぎないこと。
私も学生の頃は自衛官になるとは考えてもみなかったのですが28年間も続いています。何事にも挑戦しやすい学生の時代に、たくさん経験を積んで友達を大切にしてください。

学生新聞2025年4月号 上智大学3年 吉川みなみ

上智大学3年 白坂日葵/上智大学3年 吉川みなみ/東洋大学2年 越山凛乃/大妻中野高等学校3年 加藤眞優花/N高等学校2年 服部将昌

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